劇場公開日 2024年8月9日

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「よかった! でも、もっとヒリヒリさせてほしかった!」ブルーピリオド おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5よかった! でも、もっとヒリヒリさせてほしかった!

2024年8月10日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

原作未読ながら、TVアニメで観たことがあり、その世界観に引き込まれた「ブルーピリオド」の実写化作品。予告からもその熱量は伝わり、期待を高めて公開初日に鑑賞してきました。

ストーリーは、勉強も人付き合いもそつなくこなすものの、そこに虚しさしか感じていなかった高校生・矢口八虎が、美術の授業で絵を描いたことをきっかけに美術の世界に魅せられ、国内最難関と言われる東京藝術大学合格を目指して絵に打ち込む姿を描くというもの。

空気を読み、親の期待に応え、周囲に合わせ、これといったこだわりも本気になれるものもなかった八虎が、初めて本気になれるものに出会い、がむしゃらに突き進む姿が熱いです。人生をかけられるほど好きになれるものと出会えた喜び、その道を極める厳しさに立ち向かう仲間との絆、自分の本気を理解してくれる友がいる心強さ、夢を応援して支えてくれる家族がいる幸せなど、青春応援歌としてのメッセージがダイレクトに伝わってきます。中でも、悪友とタルトを食べるシーンや母に自分の本気を伝えるシーンは心にじんわりと沁みてきます。

一方で、絵画制作を通して八虎自身の成長譚として描いている点も見逃せません。絵を描くことで自分ととことん向き合い、自分を少しずつ理解し、ありのままの自分を認め、そこから力強く一歩を踏み出していく八虎に清々しいものを感じ、心から応援したくなります。絵画を観る目も美術的センスのかけらもない自分でも、美術の道に足を踏み入れた者が味わう、無上の幸せや底なしの苦しさの一端を感じることができたように思います。

ただ、八虎の味わったものはもっとずっとヒリヒリするようなものだったと思うのですが、それがもっともっとスクリーンから伝わってくるとよかったです。例えば、エンドロールで流れる数々の作品は八虎の努力の足跡だと思うのですが、本編中にもう少し組み込んでもよかったのではないかと思います。また、龍二が“好き”を貫く難しさも、恵まれた環境をもつ八虎との対比で、もっと八虎の心に鋭く切り込み、変容に強く絡むとよかったのではないかと思います。映画の尺では難しいでしょうが、テレビドラマで1クールかけてじっくり描いてくれたら、もっと素敵な作品になるような気がします。そうすれば、美術部や予備校の仲間との絡みをもっと描くことができ、八虎を中心とした青春群像劇としてさらに重厚な作品になったと思います。とはいえ、メッセージがしっかり伝わる素敵な作品に仕上がっているので、興味のある方はぜひ劇場でご覧ください。

主演は眞栄田郷敦くんで、ちょっと高校生には見えないですが、直向きに絵に打ち込む八虎を好演しています。脇を固めるのは、高橋文哉くん、板垣李光人くん、桜田ひよりさん、石田ひかりさん、江口のりこさん、薬師丸ひろ子さんら。中でも、高橋文哉くんのユカちゃんはとてもかわいくてよく似合っていたし、体当たりの演技もとてもよかったです。

おじゃる
Mさんのコメント
2024年8月23日

ただ、個人的には、最初の青いビルの絵が一番好きだったりしました。

M
Mさんのコメント
2024年8月23日

作品を本編中にもっと組み込んでもよかった、という意見に賛成です。
映画では努力の跡が見えませんでしたから。

M
トミーさんのコメント
2024年8月17日

共感ありがとうございます。
高校生に見えないゴードンくん、チラ見した原作とは違ってましたがイマっぽい感じが出ていたと思いました。
高橋文哉くんも頑張ってたと思いますね。

トミー
おじゃるさんのコメント
2024年8月14日

alpha23dさん、共感&コメントありがとうございます。
レビューを上げておられないようなので、こちらに返信いたします。
劇中からエンドロールまで、どの作品も魅力がありましたよね。さらに作中の人物の語りのおかげで、見る目のない自分でも、作品のよさとともに美術の奥深さを感じることができ、興味深かったです。

おじゃる
alpha23dさんのコメント
2024年8月14日

すごく共感しました。そうですね、劇中に登場した絵画をもう少し映して欲しかったです。それだけ魅力的な作品群で説得力がありました。

alpha23d