美しい夏のレビュー・感想・評価
全9件を表示
16歳の少女の成長物語
❶相性:中。
★16歳の少女の成長物語。
➋時代:1938年から1年弱。
★1938年当時のイタリアは、1922年にムッソリーニと共に政権を握ったファシスト党が、一党独裁制で領土拡大政策を進めていた時代。前年(1935年)の第二次エチオピア戦争では征服した領土をイタリア領東アフリカとしている。エチオピア側の総死者は28万人近くになる。1938年にはユダヤ人を排除する人種法が制定されている。翌1939年にはアルバニアへ侵攻して帝国内に組み込み、その5ヵ月には第二次世界大戦中が勃発する。(出典:Wikipedia)。
❸舞台:トリノ。
★ローマの西北500kmに位置するトリノは、ミラノに次ぐイタリア第2の工業都市。フィアットなどを中心とする自動車工業の拠点。
❹主な登場人物
①ジーニア/Ginia(イーレ・ヴィアネッロ、23歳):主人公。16歳の洋裁店のお針子。
②アメーリア/Amelia(ディーヴァ・カッセル、18歳):19歳の自由な女、絵画のモデル。
③セヴェリーノ/Severino(ニコラ・マウパ):ジーニアの兄。作家志望の大学生。学費が払えず夜間の仕事で生活費を稼ぐ。
④ロドリゲス/Rodrigues(エイドリアン・ドゥビッテ):アメーリアをモデルにする若い画家。色男。
⑤グィード/Guido(アレッサンドロ・ピアヴァーニ):ジーニアをモデルにする若い画家。ジーニアの初体験の相手。
⑥ローザ/Rosa(コジマ・チェントゥリオーニ):ジーニアの親友。
⑦ピーノ/Pino(マッテオ・アカルディ):ローザの恋人。
⑧フェルッチョ/Ferruccio(フェデリコ・カリストリ):アメーリアの友人。
⑨マッシモ/Massimo(ガブリエル・グラハム・ガスコ):セヴェリーノの友人、弾き語る青年。
⑩ティナ/Tina(チアラ・ツゥレッタ):マッシモの恋人。
⑪ピットーレ/Pittore(サルヴァトーレ・ジト):アメーリアをモデルにする高齢の画家。
⑫ジェンマ夫人/Signora Gemma(アンナ・ベラート):洋裁店の店長。
❺考察
①舞台は1938年のトリノ。大きな湖や森のある豊かな自然、バロック様式や現代的な建築、市電が走る整った市街地。
②兄と一緒に田舎から引っ越してきた16歳のジーニアは、大きな洋裁店でお針子として働いている。新人だが、重要な仕事を任されている。
③質素な生活だが、休日には兄や職場の同僚と大きな湖のある森にピクニックに出かけて青春を謳歌している。
★現時点から見ても、豪華ではないが、自由で優雅な生活に思える。
★昭和13年当時の日本に比べると随分恵まれているように見える。
④ジーニアは、ピクニックでアメーリアと親しくなる。3つ年上のアメーリアはモデルをしていて、画家の前ではヌードも厭わない。
⑤ジーニアは、アメーリアに惹かれるが、アメーリアもジーニアに強い興味を持つ。
⑥ジーニアは、アメーリアの仲間のボヘミアンたちと出会い、魅了され、画家のグィードと初体験をして、大人の世界に入っていく。
⑦仕事に支障をだすようになったジーニアが解雇される。
⑧アメーリアが梅毒に感染する。
⑨ジーニアは、アメーリアと同じようにヌードモデルになるが、自分が望んでいるのとは違うことに気付く。
⑩ジーニアは、洋裁店の店主に手紙を書き、洗濯女からという条件で再雇用してもらう。
⑪友人たちとピクニックに出かけたジーニアは、病気から回復したアメーリアに出会う。2人はお互いが必要なことに気付く。
⑫ラジオからは戦争礼賛のニュースが流れ、街中では愛国演説が聞こえ、兵士たちが行進してく・・・
❻まとめ
①田舎から都会に出てきた16歳の少女ジーニアの成長物語。
②ジーニアとアメーリアの気持ちは理解したが、それ以上のことは消化不良に終わった。
文芸ラノベ映画
田舎から出てきた女の子が都会での未知の世界を体験し、再び元の世界へと戻ってくるオーソドックスな青春映画のプロットだけど、美しくもどこか冷たいトリノの歴史的建造物の街並みの中で憧憬と愛が判然としないまま未知の世界を巡っていく描写が丁寧でイタリアの伝統的な文芸映画みたいな空気があったし、メインの百合的関係性に加えて妹ジャンルまでフューチャーしたラノベ要素(どちらの要素も原作では大きく扱われてはいないらしい)もあって、楽しめた。百合ジャンル的には主人公のイーレ・ヴィアネッロと、主人公が憧れるディーヴァ・カッセルは、配役が逆の方が良かったんじゃないかとも思ったけど。それとラストがけっこう唐突で、これは最初、夢オチ的なシークエンスで蛇足かなと思ったけど、ファシズムの影やジェンダーの縛りに耐え続けるだけで終わらせない、負けっぱなしじゃねえぞという作り手のメッセージとして受け取った方がしっくりくるし、今の時代にこの作品をやる意味があると思えてきたので、やっぱりあって良かった。そう考えると映画もより魅力的に感じた。
アドレッセンスの心の揺れを繊細に描いた美しい作品
1938年トリノ お針子として働く16歳のジーニアの青春の日々を綴っていきます。
場面ごとに絵作りにこだわり、余韻を持たせたシーンチェンジを工夫しています。
ただ、物語的には起伏に乏しく、突き抜けたところが私にはあまり感じられませんでした。
ムッソリーニのアジ演説や黒シャツは出てきましたが、時代の空気感はさらりとしか語られません。
3歳上のモデル アメーリアとのシスターフッドは魅力的ですが、もう一歩踏み込みがほしいところ。ジーニア役のイーレ・ヴィアネッロは声が低く、演技力がありすぎるため、彼女の方が年上のように見えてしまいます。
誠実さのない男たちに引きずられ、ジーニアは遅刻を繰り返したり、納期を守れなかったり、その結果職を失ってしまうくだりは、あまり同情する気にはなりませんでした。まあ若さゆえの惑いで仕方がないのですが。復職を認めてくれたボスやいざという時助言してくれる兄など、心優しい大人が側にいてくれて本当によかったです。
湖畔でのピクニックや時代を反映した小洒落たファッションなど映像的にはとても楽しめますし、シスターフッドな場面に流れる歌も心地よいです。
1938年の夏に、果たして奇跡は起きたのだろうか
2025.8.7 字幕 アップリンク京都
2023年のイタリア映画(110分、R18+)
原作はチェーザレ・パペーゼの小説『La bella estate』
大人の世界に憧れる16歳の少女を描いた青春映画
監督はラウラ・ルケッティ
脚本はラウラ・ルケッティ&グレタ・シチターノ&マリオ・イアンヌッツィエッロ
原題は『La bella estate』、英題は『The Beautiful Summer』で「美しい夏」という意味
物語の舞台は、1938年のイタリアのトリノ
お針子として洋裁店で働いているジーニア(イーレ・ヤラ・ビアネッロ)は、兄セヴェリーノ(ニコラ・マウパ)と一緒に親元を離れて暮らしていた
兄は大学を休学して働いていたが、生活は困窮し、勉学への意欲は失われつつあった
ジーニアには親友のローザ(コシマ・チェントゥリオーニ)と仲が良く、彼女の恋人ピーノ(マッテオ・アカルディ)たちと一緒に遊んだりもしていた
ある日のこと、セヴェリーノの友人フェルチェコ(フェデリコ・カリストり)たちと遊んでいると、そこに彼の友人のアメーリア(ディーヴァ・カッセル)がやってきた
湖を半裸で泳いでくる奔放さに惹かれたジーニアだったが、その日は会話を交わすこともなかった
物語は、街角のカフェにて再会する二人を描き、アメーリアの生活に近づいていくジーニアを追っていく
アメーリアは絵画のモデルをしていて、その仕事ぶりを見たいと思うものの怖くて見ることができない
だが、彼女の住む世界に憧れを抱くジーニアは、徐々に大人の世界へと足を踏み入れてしまうのである
映画は、情緒不安定なジーニアが描かれ、仕事で認められる中で道を外してしまう様子が描かれていく
快楽に酔っているとか、男を知りたいという単純なものではなく、自分の価値がどのようなものか知りたい、という欲求があった
彼女が仕事をおざなりにしてしまうのは、ある意味洋装店で中途半端に認められてしまったからであり、それがアイデンティティを揺るがしているとも言える
原作にはないエピソードらしいのだが、この洋装店の仮初の成功を描くことで、ジーニアの承認欲求の質が見えてくるようになっていた
物語はさほど起伏がなく、アメーリアが梅毒に罹ってしまうエピソードがあるくらいで、そこでアメーリアが女性の相手をしてきたことがわかる
これがレズビアンだからなのか、単にお金のために女性を相手にしてきたのかはわからない
だが、その行為を後悔しているように思えるので、アメーリアとしては心から望んだものではないのだと思う
彼女は、そう言った行為を恥じている部分があり、その世界にジーニアを連れ出してしまうことに抵抗もあったのだろう
結局のところ、ジーニアはアメーリアの知る大人の世界に憧れを抱き、アメーリアは自分が捨ててしまった無垢な世界への後悔の念を持っていた
その感情は相容れないものだったが、アメーリアが梅毒に罹ったことでジーニアの本気が伝わり、それがラストシーンの抱擁へと繋がったのではないだろうか
いずれにせよ、憧れの種類が違う二人の邂逅が描かれ、それぞれが相手が欲しいものを持っているという状況になっていた
いわゆる「得たいジーニア」と「取り戻したいアメーリア」がせめぎ合う流れになっていて、アメーリアはジーニアにそのままでいてほしいと考えていた
そのために一線を越えることを拒んでいたのだが、それを凌駕するほどにジーニアの愛は強かった
だが、その愛に打ち負けそうな時に梅毒が見つかり、アメーリアの揺れる心は掻き乱されてしまう
病気は二人を隔てるものの、運命は彼女たちに味方をしてくれたように見える
美しい夏は変わらぬまま続き、二人はどこかへ行ってしまうのだが、見方によってはジーニアの妄想のように思えてしまう
さすがにそこまで穿った構成にはしていないと思うものの、1938年はまだペニシリンによる梅毒の治療が確立されていなかった時代だった
なので、優先的に医師にかかれたとしても治療できたかはわからないので、愛の強さが見せた幻という説は否定できないのかな、と思った
タイトルなし(ネタバレ)
1938年、第二次大戦が近づくイタリア・トリノ。
洋裁店の有能なお針子ジーニア(イーレ・ヴィアネッロ)は、ある日、絵画モデルの美しい女性アメーリア(ディーヴァ・カッセル)と出逢う。
兄とともに田舎から出てきたジーニアは、自由奔放で美しいアメーリアに惹かれるが、同時に、自堕落ともいえる大人たちの世界にも惹かれるのだった・・・
といった物語。
『燃える女の肖像』のような同性愛的雰囲気を内包しているが、ジーニアが惹かれているのは大人の世界、それも自堕落な世界の方が強い。
真面目で有能なお針子だったが、自制が効かず自堕落になっていく。
アメーリアへの憧れから、彼女の世界に近づきたいと思っての行動。
その意味では、「青春の蹉跌」、躓きの物語。
ジーニアの変化し続ける心情が興味深い。
同性愛的傾向は、どちらかといえば、アメーリアがジーニアに寄せる想いの方が強いように映画では見てとれる。
そのあたりも興味深い。
主役のジーニア、20歳前ぐらいの設定かと思ったが、解説などを読むと16歳とのこと。
そうか、より大人の世界に憧れる年齢だなぁ、と得心。
第二次大戦前に時代が設定されているのは、たぶん映画終盤、人生に一度躓いたジーニアがやり直すことと、イタリアが大戦後にやり直したことの二重の意味があるのだろうと思う。
終盤、アメーリアが自業自得とは言え不幸を背負う羽目になる展開は、少々ありきたりな感じがする。
が、周囲の男性陣が彼女に対して、それまでと異なり素っ気ない態度をとるあたりも描写されており、そこいらあたりも興味深かったです。
タイトルは『美しい夏』ですが、冬を越える時期まで描かれています。
兄妹映画
百合的指向の作品と思いきや、キッチリ兄と妹の関係性、そして職業映画としてもガッチリ描かれている内容である
逆に、濃厚さを期待していた部分もあるので、それに対しては"肩透かし"かなと(苦笑
でも、キチンと裸になるところも映されていて、ヨーロッパ映画の矜持を感じられる作品である
あれだけ街中に裸婦像の彫刻がある日本なのに、なんで邦画は脱がないんだと歯ぎしりしきりであるw
アメーリア役の女優の演技はよかったが、映画としては退屈
戦争を数年後に控えるイタリアで、田舎からでてきて兄とともに生活するしっかりものの妹、ジーニアは、都会的で美しく大人の画家たちと渡り合うヌードモデルのアメーリアにあこがれるうちに、すべてを不意にしてしまうという話。
しかしこのジーニアの行動がどうもチグハグというか分裂病としか思えない動きでまったく感情移入できない…。原作小説は未読ですが、映画comの書評を読み限りでは映画と原作はだいぶ違うようですね。
原作ではジーニアと男性画家との恋愛が軸だそうですが、映画ではアメーリアの生き方にあこがれるあまり好きでもない男性画家に体まで差し出してしまう…というような描写ですし、この男性画家との濡れ場がムダに長い。そのぶんこの画家が滑稽に見えはするのですが、それ以上にジーニアの選択が若い少女によくある審美眼の失敗、過ちとして処理されるのはどうにも面白くない。
アメーリアへの思いは恋愛感情と都会で自由奔放に過ごす生活への憧れがないまぜになっているのでしょうが、そのせいでどっちつかずのままメリハリや起伏に欠けた中盤となっていてこれもいまいち。
終盤のアメーリアが抱える秘密の吐露とその演技のシーン、これは素晴らしかったです。しかしジーニアがすべてを失うその過程があまりにお粗末すぎてつらすぎますね
女性同士の連帯、ジーニアとアメーリアの疑似恋愛をメインにするのであれば、もっとスッキリとした話にしてほしかったなあ…終盤、ジーニアの兄が語るセリフがあまりに観客のツッコミにシンクロしすぎて「ほんとそれな」と納得してしまいました
Tette
試写会にて鑑賞。
原作は未読、日本の小説は結構読むんですが外国の小説って中々手に取る機会が無いんだよなーと思いつつ、鑑賞後のトークショーで翻訳する際に人によって解釈が少しずつ差異があるというのは面白いなと思い、原作本も手に取ってみました。
こういう時外国語の勉強とかしとけば現地で発売されたのも読めて2度楽しめるのになーと思いつつ。
ストーリーとストーリーの間の行間がかなり多いので、そこがどうしても気になってしまったり、考えるな感じろと言わんばかりの抽象的なシーンが多かったのでちょいモヤモヤする作品になっていました。
歳の差恋愛、綱渡りな恋路、この時代としては珍しいと思われる同性での恋愛というところもベタベタではなく美しく描かれていたのが印象的でした。
ティーンネイジャーだからこそカラフルな世界に飛び込んでいく姿勢はキラキラしていましたし、自分にもそんな時があったのかなと思ったりもしたり。
主人公が恋に愛に葛藤してしまったがために仕事を遅刻してしまいクビになるのはそりゃそうだろという感じしか出ず、それを許してくれたオーナー優しすぎんか?ともなって、こんなやつぁ速攻クビで出禁で良いんですよともなりました。
演者の方々がこれはこれは皆様美しく、主演のイーネ・ヴィアネッロさんがめちゃめちゃスクリーン映えする方で目を奪われっぱなしでした。
悪どい立ち振る舞いであっても上品に感じる不思議がありましたし、ちょっと目線がエッチにはなってしまいますがヌード姿が抜群に美しかったです。
衣装や装飾なんかもレトロ感がありながらもオシャレな感じになっており、あそこの家具をひとつまみいただけないものだろうか?と思うくらい素敵でした。
トリノのロケーションも抜群に美しく、こういう場所に遊びに行ってみたいという気持ちになりましたし、現地民として暮らしてみたいとも思いました。
目指せワールドワイド聖地巡礼。
トークショーで色々と原作者のパヴェーゼのあれやこれやが明かされ、原作とはかなり異なる解釈をされている事や、女性的視点が映画ではより強化されており、パヴェーゼは女性を描くのが苦手というのも面白いところで、これは原作と見比べてみたいなと思いました。
普段触れることのないジャンルなのでこういう機会があったのは良かったですし、ハマるハマらないはあれど新たな世界を開くきっかけになったので良かったかなと思います。
色んな会場で試写会行けるの楽しいですね😆
鑑賞日 7/15
鑑賞時間 19:00〜20:51
鑑賞方法 試写会にて
本当の自分を見つけて描かれたい
こないだMOVIEWALKERさんの試写会に招待して頂きました😁
ありがとうございます🙂
洋裁店で働くジーニアと、絵のモデルをして生計を立てるアメーリアの交流を描いたストーリー。
ジーニアにはイーレ・ヴィアネッロ🙂
働いてる時は大人びて見えますが、年相応な部分もまだあります。
16歳という年齢は本当に多感な時期で、背伸びしたくもあり、完全に大人になりたいかというとそうでもない。
そんな揺れる感情を、しっかり表現してました😀
アメーリアにはディーヴァ・カッセル🙂
あのモニカ・ベルッチとヴァンサン・カッセルの娘さん😳
これはイヤでも注目を浴びますね。
一目見て思ったのは、非常にスラッとした女優さんです🤔
絵のモデルとして生活し、自立した女性なのですが、どこかまだ大人になりきれてない部分が残されている。
そんな脆さをうちに秘めた女性を、魅力的に演じていましたよ👍
終盤のジーニアと兄の会話も秀逸で、誰もが一度は経験したことのある痛みを思い出させるような響きが。
ティーンエイジャーを題材にした映画として、見逃せない1本です😀
上映後のトークショーでは、ワダさんとワタナベさんのお二人が登壇。
(漢字がわかりません)
原作が小説なので、イタリア文学の話を聞かせてもらいましたが、私にはちと難しかったです😅
一般公開は、8月1日からですね🫡
全9件を表示