「アドレッセンスの心の揺れを繊細に描いた美しい作品」美しい夏 sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
アドレッセンスの心の揺れを繊細に描いた美しい作品
1938年トリノ お針子として働く16歳のジーニアの青春の日々を綴っていきます。
場面ごとに絵作りにこだわり、余韻を持たせたシーンチェンジを工夫しています。
ただ、物語的には起伏に乏しく、突き抜けたところが私にはあまり感じられませんでした。
ムッソリーニのアジ演説や黒シャツは出てきましたが、時代の空気感はさらりとしか語られません。
3歳上のモデル アメーリアとのシスターフッドは魅力的ですが、もう一歩踏み込みがほしいところ。ジーニア役のイーレ・ヴィアネッロは声が低く、演技力がありすぎるため、彼女の方が年上のように見えてしまいます。
誠実さのない男たちに引きずられ、ジーニアは遅刻を繰り返したり、納期を守れなかったり、その結果職を失ってしまうくだりは、あまり同情する気にはなりませんでした。まあ若さゆえの惑いで仕方がないのですが。復職を認めてくれたボスやいざという時助言してくれる兄など、心優しい大人が側にいてくれて本当によかったです。
湖畔でのピクニックや時代を反映した小洒落たファッションなど映像的にはとても楽しめますし、シスターフッドな場面に流れる歌も心地よいです。
あのドイツ語の歌が頭から離れません!いい歌で、歌ってるスイス人(母語はドイツ語、スイス・イタリア語、フランス語等だそうです)は別にこの映画のためにその曲を作った訳でなくて、監督が多分誰もわからない言語の歌がいいと思って使うことにしたみたいなんですね。スイス人のそのシンガーソングライターは、その曲名をタイトルにした小説(ドイツ語)を今年になって出版したそうです
お邪魔します。
映像的にもまさに「美しい」作品だと思いました。
登場人物達が本当のどん底に落ちなかったり、御指摘の通り決して深くは踏み込まなかったりの「寸止め」みたいな余白の残し方が心地良く感じました。