「タイトルなし(ネタバレ)」美しい夏 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
1938年、第二次大戦が近づくイタリア・トリノ。
洋裁店の有能なお針子ジーニア(イーレ・ヴィアネッロ)は、ある日、絵画モデルの美しい女性アメーリア(ディーヴァ・カッセル)と出逢う。
兄とともに田舎から出てきたジーニアは、自由奔放で美しいアメーリアに惹かれるが、同時に、自堕落ともいえる大人たちの世界にも惹かれるのだった・・・
といった物語。
『燃える女の肖像』のような同性愛的雰囲気を内包しているが、ジーニアが惹かれているのは大人の世界、それも自堕落な世界の方が強い。
真面目で有能なお針子だったが、自制が効かず自堕落になっていく。
アメーリアへの憧れから、彼女の世界に近づきたいと思っての行動。
その意味では、「青春の蹉跌」、躓きの物語。
ジーニアの変化し続ける心情が興味深い。
同性愛的傾向は、どちらかといえば、アメーリアがジーニアに寄せる想いの方が強いように映画では見てとれる。
そのあたりも興味深い。
主役のジーニア、20歳前ぐらいの設定かと思ったが、解説などを読むと16歳とのこと。
そうか、より大人の世界に憧れる年齢だなぁ、と得心。
第二次大戦前に時代が設定されているのは、たぶん映画終盤、人生に一度躓いたジーニアがやり直すことと、イタリアが大戦後にやり直したことの二重の意味があるのだろうと思う。
終盤、アメーリアが自業自得とは言え不幸を背負う羽目になる展開は、少々ありきたりな感じがする。
が、周囲の男性陣が彼女に対して、それまでと異なり素っ気ない態度をとるあたりも描写されており、そこいらあたりも興味深かったです。
タイトルは『美しい夏』ですが、冬を越える時期まで描かれています。