憐れみの3章のレビュー・感想・評価
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ランティモス監督が久々のオリジナル脚本で、相変わらずヘンテコな不条理コメディなのが嬉しい
ヘンテコで不気味な異色作を撮り続けているヨルゴス・ランティモス、と「女王陛下のお気に入り」のレビューで書いたけれど、原作物の「女王陛下のお気に入り」「哀れなるものたち」がヴェネチアやオスカーの主要賞をいくつも獲ったあとにオリジナル脚本で臨んだこの「憐れみの3章」でも、ぶれずにヘンテコさをさらにパワーアップさせた映画を見せてくれるのが嬉しい。
ジェシー・プレモンスは過去の出演作ではあまり注目していなかったが、「憐れみの3章」での情けない感じは見事にはまっている。彼がマット・デイモンとフィリップ・シーモア・ホフマンに似ているのはこれまで大勢に指摘されていたようだが、今作で似具合がさらに増したのではないか。ホフマンが存命だったら3人で家族役(歳の離れた兄弟か、歳の近い親子)をやってほしかったが、実現せずに残念。彼が警察官を演じた第2話、同僚とその妻と3人で家飲みをしてから鑑賞する“ホームビデオ”で、一瞬唖然としたあと、品がないと自覚しつつ爆笑してしまった。
出演陣はいずれも素晴らしいが、3話で死者の蘇生を試みるアナ役、エキセントリックなムードを漂わせる美女ハンター・シェイファーが特に印象に残った。今年8月に米公開されたホラー映画「Cuckoo」で主演したようで、日本でも早く鑑賞できるようになるといいなと願う。
相変わらずの "キモさ" と "不穏さ" が ✖3で表現される異色...
相変わらずの "キモさ" と "不穏さ" が ✖3で表現される異色サスペンス。
作り方が上手くて、観てて「何の行動だ?」と思った後に「さっきの行動」の意味や動機がきれいに繋がって行く。理解したつもりで「なるほど!」と繋がるのだが、しかし大元の行動原理が解らない。
そんな3本のオムニバスで、3本の話に直接繋がりは無い。だけど同じ俳優達がそれぞれに別の人物として登場する。しかし繋がりが無い様に感じるがR.M.Fと言う人物だけは同じで、3本のタイトルは「R.M.F.の死」「R.M.Fは飛ぶ」「R.M.F.サンドウィッチを食べる」なのでキーマンなのである。
結局監督の言いたい事は私には解らない。
原題『Kinds of Kindness』は「優しさ(思いやり)の種類」といった意味だろうか。ヨルゴス・ランティモスの考える "優しさ" は理解出来ない。
ランティモス監督作は俳優達の演技が静かで淡々としてる作品と、俳優達が表現豊かに演じる作品とに別れると勝手に思っているが『憐れみの3章』は俳優達が演技するタイプの『ロブスター』的な雰囲気が感じられる。
冒頭に流れる1980年代のEurythmicsの♪Sweet Dreams(Are Made of This)の歌詞に意味が有りそう。
いろんな憐れさ
日常の狂気と暴力性
エマ・ストーンが主役だと思って観に行ったら完全にジェシー・プレモンスの映画でした。びっくりしました。正直言って何を描いてたのか、何を描きたかったのか、僕にはさっぱりわかりませんでした。
大人の寓話ではあるけれど、あまりの意地の悪さにやっぱりこの監督のテイストは僕には向いてないなと確信しました。
でもエマ・ストーンはカッコよかったし、何にでも出てるウィレム・デフォーの相変わらずの怪演ぶりは面白かったし、やっぱりなによりジェシー・プレモンスの圧倒的なキャラクター変化には終始感動させられました。役者の魅力を限界まで引き出しているという意味ではやっぱりすごい監督なんだと思います。
ロブスター、籠の中の乙女が好きな人は気に入るのでは
ヨルゴス・ランティモス監督の映画は奇妙な世界に閉じ込められた人を題材にしてるイメージが強い
今回は三つの話で1と3章は元々は囚われていた奇妙な世界に心酔してしまった人々を描いていた
2章は単純に解釈できない 笑
どの話も次に何が起こるんだって予測できなかったし、いろいろと考えることが多くて長さは感じなかった
珍しく邦題が原題よりマッチ
同じ俳優で3つの物語
もう一つの「ボーはおそれている」
長尺、難解、ブラックコメディ、R指定。
なんだか「ボーはおそれている」を彷彿とさせる映画だった。
選択肢を奪われながらも自分の人生を取り戻そうとする男、海難事故から生還した妻を恐れる警察官、ある能力を備えた特別な人物を探す女を巡る三つのストーリーで構成される。
まさに怪作中の怪作。
個人的に好きなのは、「R.M.F.は飛ぶ」の例のビデオ鑑賞会。
なんだよ思い出のビデオくらい見せてあげろよ、旅行で観光地を楽しむ映像でも映ってるのかなー、あーでも奥さんを思い出してしまうから諌めているのかなーと、思いきやからの、あの地獄のビデオ鑑賞会。
でも、どこか苦笑してしまうという、やはりランティモス監督の露悪性は健在だ。
それにしても「哀れなるものたち」と同年に公開というのも驚きではある。
ランティモスな夢を見た
予告でも使われていたユーリズミックスの名曲"Sweet Dreams (Are Made of This)"は本編冒頭でも流れるわけで、それは本作が何より夢(について)の話であることを示している。で、実際に観てみると、コレほどピッタリな曲も無いなと思うくらい歌詞が言い得て妙な胃もたれ必至のランティモス全部乗せ。飼われて、疑って、捜して。夢と妊娠、魚より肉バーガー。ファックはいつでも絡んでくる?言ってしまえば過激なベストアルバムあるいはコンピレーションみたいな作品。
では、それが誰の(見る)夢かと言えば、この社会・世界に【生きづらさ】を感じて【自分の居場所を探す】者にとっての夢だ。だからこそ観ていて感じるこの監督特有の窮屈さ・息苦しさ。こんな厄介な本作をクリスマス当日に配信開始するという確信犯っぷり!まさしく一見脈絡なくもそれぞれに毒っ気満載に浮かび上がる作品のテーマにも則る・沿っているだろうか。別に非リア充や独り者に限らず、世間が浮かれるタイミングにそれを素直に楽しめないでいる全ての人に向けたプレゼントだ(という意味では自分が創作に向ける原動力とも奇しくも重なる)。
奇妙にヘンテコ、そして時折ものすごく痛そう。厭世的というか人間嫌いというかとにかくクレイジー。シュールでどこかおかしい緊張感と歪さはじめヨルゴス・ランティモスによる彼らしい不条理に満ちたイカれたブラックユーモアに彩られた作家主義(ゆっくりと引いたり寄ったり魚眼レンズ気味に湾曲する広角レンズ使ったり)、監督らしさ全開のユニークな作風の中で、毎章痩せては髪の毛も短くなっていくジェシー・プレモンスなど豪華アンサンブルキャストが魅せる。3章目のエマ・ストーン、ウィレム・デフォー然り。
【1章】
痩せたか?
子供、事故、そして構ってほしいがための"振り"で本当に自分を傷つけてしまう必死さが愚かしいのだけど他人事じゃない怖さもある。得たもののためにどこまでてきるか、手放したくない必死さに常軌を逸した願いも聞き入れてしまうのか
【2章】
誰だ?聞こえないぞ
着信音、チョコとラム、そして生還した妻の様子がどこかおかしいと感じる夫。陰謀論・疑念が身を滅ぼすのか…。飢えて気づいた、食わず嫌いせず食べられるものは食べられる時に有り難く食べておけ。
【3章】
喉が渇いた
水、モーテル、そして教祖の涙で清めた聖なる水しか飲めない水分カルト教団の救世主をめぐる人探し。『哀れなる者たち』のぎこちない動きから抑えられぬ本能のまま身体が躍動するようにダンスを覚えていくダンスシーンも圧巻だったが、本作でもまたエマ・ストーンが素晴らしくアイコニックなダンスシーンを見せてくれる!
喜びの踊り〜第3章より
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