「狐につままれたような気分を存分に楽しめる」憐れみの3章 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
狐につままれたような気分を存分に楽しめる
話が難解で訳の分からない分、「この先、一体どうなるのだろう?」と、グイグイと引き込まれる。
3つのエピソードで、同じ俳優が、違う役柄の人物を演じているのだが、各エピソードのタイトルにもなっている「RMF」という役に限って、同じ俳優が演じているのは、何か意味があるのだろうか?
仮に、彼が同一人物だとすると、3つのエピソードは、救難航空機のパイロットが、殺されて、蘇るという一つの物語として繋がるのだが、だからといって、「なるほど、そういうことか!」と納得することはできない。
簡単に言ってしまえば、1つ目のエピソードは、ある男に人生を支配された男が、それに抗おうとする話だし、2つ目のエピソードは、海難事故から生還した妻を、別人だと疑う男の話だし、3つ目のエピソードは、カルト教団の信者が、死者を蘇らせる能力を持つ教祖を探す話ということになるだろう。
いつまでたっても何の話なのかが把握できなかったのは3つ目のエピソードだったが、何の話なのかが分かった後でも、何を言いたいのかが理解できなかったのは、2つ目のエピソードだった。
1つ目と3つ目のエピソードは、何とか現状を打開しようと苦闘する主人公が、結局挫折してしまうところに共通点があると思われるが、2つ目のエピソードについては、終盤、夫と妻の主観が入れ替わり、それぞれが話す内容も食い違い、どちらの主張が正しいのかが分からないまま、遂には本当の妻らしき人物が現れて、まさに狐につままれたような気分になる。
どうせ、各エピソードの裏に隠された寓意を読み解こうとしても無駄なのだろうし、そもそも、そんな寓意は、始めからないのかもしれない。
ここは、敢えて、各エピソードの不条理さや、不合理さや、意味不明さを受け入れて、それを楽しめばよいのだろうし、実際、存分に楽しむことができた。
ありがとうございます。
この監督の「狐につままれたような面白さ」は、病みつきになりますね。
「哀れなるものたち」では、話が理解できてしまった分、本作の「訳の分からなさ」は嬉しい限りです。