「歴史を語る事」シサム La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
歴史を語る事
江戸時代に、蝦夷地のアイヌとの交易を独占していた松前藩の藩士が、和人(シサム)こそがアイヌの非道な収奪者である事に気付いて行く物語です。和人とアイヌの物語というと今年は『ゴールデンカムイ』の年ですが、本作はあれほどの振り切ったエンタメ性はありませんが、その分、問題の本質により真正面から向き合った物語でした。
松前藩とアイヌはやがて武力衝突にまで発展するのですが、このお話の大きな特徴は、この男が「藩士の筋を通してアイヌを成敗すべきか」「アイヌの側に立ち、藩に弓を引くのか」を煩悶する点です。観る者は、「あなたならどうした?」の問いに自然に導かれます。そして、彼の下した決断というのが、「歴史を語る」という事の本質に迫るものでした。
尚、これは仕方のない事なのですが、アイヌの人々の面立ちがやはり和人のものだったのですが、そんな中、サヘル・ローズさんの配役が妙なリアリティを生んでいました。政治家すら「日本は単一民族」などと言ってのけるこの国に暮らす以上、琉球民族についてもアイヌ民族も在日コリアンの人々もシサム(それとて殆どは渡来人)の人間が学ぶべき事は沢山あります。
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