「タイムスクープハンターじゃねーよ」シサム ジョンスペさんの映画レビュー(感想・評価)
タイムスクープハンターじゃねーよ
ゴールデンカムイ人気でアイヌ文化への関心が高まってるのか、蝦夷地を舞台にした江戸時代物。映画.comの本作記事にあった、現代の暴力につながる不寛容やヘイトによる分断を訴えたいという制作側の意図はわからなくはないが、それをアイヌと和人の歴史でやるなど的外れである。
鑑賞前は、船戸与一の蝦夷地別件のような凄絶な物語?と期待したが、和人によるアイヌの蹂躙はやんわりとしか描かず、アイヌ思いのいい和人もいたんですって話になんの意味があるのか。事実を基にしたフィクションといっても劇中どの部分が事実なのかはわからないため、見方によっては加害の歴史をうやむやにする歴史修正主義とすら思えてくる。
映画としてもなにかとツラい。時代物をやるには予算なさすぎで全画面からチープさしか伝わってこない。戦だ!と言いつつ現れるのは10人ほどのしょぼい部隊で、海岸線に何十隻もの藩の船がずらり…みたいな画はなし。北海道の広大さも一切感じられず、ひたすら森の中を動き回ってばかりで、テレビの監督らしく肝心なことは全部セリフで言わせてしまうし…。役者はがんばってアイヌ語をしゃべるけど、それがアイヌ文化に寄り添うってことなの?
さんざん言ったけど、和人でもアイヌでもないカエル顔の古川琴音と、ホラー味すら感じた富田靖子はよかったな(遠い目)。
史実に基づいているのでそうなるんですよ。当時はまだ商場知行制で、アイヌが過剰に搾取されていた場所請負制にはなっていません。アイヌと和人が対等な交易相手だった時代です。この戦いの後に、悪名名高い場所請負制が導入されます。この戦いでどのくらいの船が向かったか、何人が死んだかもちゃんと津軽一統志に書いてあるので、船団を並べるなんて嘘は描けないんです。
共感&コメントありがとうございます。
ジャーナリスト気取りって大共感! 1頁の記載が少ないのも? けなしたくないですが、この手のジャンルは映画的にどうか?というのが多いですよね。