「タイトルなし」シサム こしえんさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし
思っていたより良い映画だった。
寛一郎が頑張っている。
これまで、三世俳優がそのコネで出演作に恵まれているだけだろう、そんな風に思っていた。まあ、コネで出演したって全く構わないのだが、彼はその出演チャンスを血肉とし、着実に成長している。
侍役にしては、やや線が細いようにも見えたが、役柄に合っていた。体型を役柄に合わせるのも立派なテクニックである。
ここにきて、華麗なる俳優遺伝子が覚醒しつつあるのかもしれない。
歴史的に、結果としてアイヌ民族は虐げられた。その事実は変えようがない。
けれど、なぜそうなってしまったのか、どうすれば良かったのかを現代の私たちは顧みることができる。それは今、起きているあらゆる争いを考えることにつながる。
このままのレビューだと、何だか説教臭い映画ようになってしまう。
そうではない。
主人公の感情に寄り添う丁寧なストーリーである。説教臭いな、と辟易することはないだろう。
それに『タイムスクープハンター』の監督とカメラマンのコンビである。あの番組は臨場感が売りだった。この映画もまた然りである。
北海道の雄大な自然で繰り広げられる迫力ある戦闘シーンは劇場のスクリーンで観ることに意味がある。
一生懸命作ったであろうセットや研究を重ねたであろう衣装、メイクにスタッフたちの苦心が窺える。
全く馴染みのないアイヌ語のセリフを覚えた俳優たちにも拍手喝采である。
決して大作ではないが、それでなくとも時代劇は作れるのだ。そういう意味でも映像業界に可能性を感じることの出来る作品であった。
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