「サユリが理不尽でただの快楽殺人鬼。家族も帰ってこないし後味悪い」サユリ 真中合歓さんの映画レビュー(感想・評価)
サユリが理不尽でただの快楽殺人鬼。家族も帰ってこないし後味悪い
酷い駄作だった(笑)
正統派ホラーを思わせるポスターに思わず今年の和ホラーはこれだ!と観に行きました。客入りも良く一軒家で巻き起こる惨劇は呪怨を想起させ、そこに少年少女を主役に添えた本作は人々の脳の片隅で間違いないと思わせる材料の揃った作品でしたが。。。。
(色んな意味で)酷すぎる。
前半は訳あり物件に越してきた一家を謎の怨霊が襲う正統派ホラーとなっていて、ここまでは予想通り。しかし後半で展開が激変し、生き残った主人公の男の子とおばあちゃんが人間的な活力を持ってして怨霊と闘う!!という全く新しいストーリーに!!
確かにこれは東西含めて今までに無かった作風で、新しいと言えばそうなのだが(笑)、はっきり言って滑稽だった。
そもそも本作のメイン幽霊のサユリは結構チート的な力を持っていて、自分の世界に相手を引きずり込んでそのまま物理的に殺傷したり、まだ生きている人間を乗っ取ったりなどナンデモアリ状態。
そしてサユリによって殺された家族は当然生き返ることも無くそのまま主人公の男の子とおばあちゃん以外はみんな死んだままで本作は終わる。これが後味悪すぎるのだ。
サユリ自身は結構エグい過去があってそれは分かるのだが、その原因となった家族は普通に生きていて別の家で生活していたりする。サユリは飽く迄もあの家からは出られない設定で、その家に越してきた全く無関係で無実な人間を殺しまくるただの快楽殺人鬼なのだ。
主人公一家にも似たような事情だったりその傾向や兆候があるのならまだしも、全くもって普通の幸せな越してきたばかりの一家なのだから、ただただ不快でやり切れない気持ちが残るだけの作風となっている。
それも含めて1000歩譲って今までに無い作風で新鮮でしょ?ってのを受け入れたとしても、あれだけ「生きてる人間の力をアピールするんじゃ!!」って息巻いてたおばあちゃんが最終的にやる事と言えばサユリの家族を拉致してそのまま尋問も無く描写も込みでのグロい拷問っていうウォーキング・デッドでも見なかったようなエグい展開なのよ(笑)。
全体的に意外性や目新しさに振り切ったような作風で一貫性や爽快感も無く、モヤモヤとした何かが残ったまま結局家族も死んだままだしサユリも良い感じで成仏したけどお前のやった事許されねえからなって感じで、去年のミンナのウタに比べると後味が悪すぎるまま終わる。それも作品自体は良い感じで終わってるつもりでいるから余計にだ。
そもそも密室ホラーからの幽霊と闘うんじゃああ!!ってテイスト自体は悪く無いのだがそのバランスが悪い。家族の過半数が死んでからじゃなくて、精々おじいちゃんかお父さんが死んだくらいで家族も結託してみんなで闘うストーリーにした方がよっぽど生を感じてついでにコメディチックにも出来ただろうし、今までに無い幽霊と真正面からガチで闘うっていう中々に面白い夏のホラーになっていたと思う。
それがもう弟もお姉ちゃんもお母さんも惨殺されてからおばあちゃんが急に元気出されたところで・・・・(笑)なんかもう消化試合感が最初から半端ないのよね。
それにサユリもチート過ぎて世界線を移動させるようなワープ技を使ってくるようなレベルだからもう闘うとかそういう次元か?って印象。結局最後は力技で倒されるしせっかく家族も連れてきてあげたのにお礼も反省も無く最後までモヤモヤ。あとサユリの家族を拷問するシーンが不快でグロすぎる。
なんと言うか、邦画の無駄にグロい点や奇をてらう点の全部悪いところが出ちゃってるけど今年の夏の和ホラーがこれぐらいしか無いから観客が集中しちゃった・・・・という感じでなんとも言えない。
せっかく学園青春要素も少しだけあるので、どうせなら親達がみんな出払って子供組だけで闘うとか、そういう方向性の方がよっぽど面白かったと思う。おばあちゃんの覚醒っていう意外性に全振りした結果・・という感じ。
それらを踏まえても普通に面白さとか怖さも微妙だったので、僕は駄目でした。家族生存バージョンを制作して今からでも歴史を修正するべきかと。