がんばっていきまっしょいのレビュー・感想・評価
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「がんばれなかった」大人のあなたに
未成年の頃何かに打ち込んでいて、大人になった今でもそれを誇れる人ってどのくらいいるんだろう、って考えたことはありませんか? 野球を例に考えると最大限にがんばっても大谷翔平みたいなスターになれる人ってそんなにいないですよね。自分は大した努力をしないで勉強でも運動でも「そこそこ」人並な少年時代を歩んできたので、いつの間にか周りの人に抜かれて置いていかれたことで、主人公の悦ネエの気持ちが痛いほどわかりました。
自分は原作の小説も1998年に公開された田中麗奈主演の映画も経験しているので、令和のアニメ版になった本作を楽しみにしていました。内容は原作の良さを崩すことなく弱虫に思われがちな女子高校生の青春群像劇を、現代の風景や社会情勢を織り込みつつ綺麗な映像と音楽で表現していてとても好感が持てました。90分という上映時間も数字だけ見ると短く感じますが、見どころが沢山詰め込まれていて心の満腹感が得られました。ラストシーンの、新入生が入部したことと、県の大会で2位になったので四国の大会に出られるというところで、原作とは違うスピンオフの続編があっても良いのではと期待させる部分もありました。
ただ一点残念に思ったところは、キャラがモーションキャプチャーで「ぬるぬる」動いていたところです。ボート競技が主題なのでCGを使った水の表現はとても綺麗なのですが、キャラは多少デフォルメしても普通に動かして欲しかったです。最近特に興行収益の良かったアニメを例にすると、「すずめの戸締り」とか「シン・エヴァンゲリオン」のキャラがぬるぬる動いていたら違和感を感じるよね、ということです。
大人も楽しめる秀作
実写版を見たり、原作の小説を読んだり、作中に登場する選手ともボート競技を通じて知り合いであるものとしてのコメントであり、純粋に作品としての映画の評価ができていないかも知れませんがそういうものとしてお読みになってください。
当然ですが原作が一番実話に近いわけですが、実写版では今は廃部となってしまったボート部を回想する場面から始まる訳ですがアニメ版では回想するという設定ではありません。実写版では主人公たちの通う高校が県下でも有数の進学校であるあたりや恋愛沙汰をからませないあたりは原作にも忠実で好感が持てました。
また、主人公の悦ネエの揺れ動く気持ちや1人1人のボート部員やライバル校の部員までキャラクター設定が丁寧で上手く描き分けられていて実写版では怪我で休むことになる悦ネエはアニメ版では気持ちがしんどくなって休むことになるあたりの話の持って行き方も違和感がありませんでした。
愛媛の海はお好み焼きや喫茶店なども美しく描かれており2時間近くがあっという間でもっと見ていたいなと感じました。合宿の場面や、みんなでする花火、3年生の春最後の大会に向かう気持ちなども共感できました。学生時代の部活動は優勝する1校以外はみんなどこかで負けていくわけですがどういう負け方をして終わって行くかが大事でそういう意味ではよく戦ったわけだし、実写版では負けてばかりだったのが、少なくともビリでなかったり、県代表まであと一歩だったりといい場面がたくさんあったのも良かったです。アニメということで若い人のために作られたものかと思っていましたが、大人が見てもいい作品だと感じました。
ここからはボート経験者としてのコメントになりますが、1つめは学校内でのクラス対抗ボートレース大会では舵つき4人漕ぎスカルではなくてナックルといってより重くて安定性の高いボートを使うことが主流で救命胴衣などつけてレースをする形になります。未経験者だけで4人漕ぎスカルは漕げないと思います。
2つめは悦ネエたち4人が初めてボートを漕いだときの感想が「進まネエ。」ということでしたが競走用ボートは公園の池のボートとは全然スピードが違うので「凄い、速いねえ。」という感想が自然でしょう。
3つめはボートの練習としては実際に漕いでみる乗艇練習よりも筋トレや走り込みが大切で、黙々と体力作りをすることが次の春のレース結果に反映されます。そのあたりやせっかくレース場面もたくさんあるのだから最後の大会の場面では優勝校と僅差で優勝を争う場面などボート選手に相談すれば詳しく教えてもらえますのでスクリーン上で表現して頂くと良かったなと感じました。
この映画を通じて一人でも多くの人がボート競技(ローイング)に興味を持つことを願っています。ちなみに僕は「いちご白書」を見てボート部に入ろうと思いました。
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