劇場公開日 2024年10月25日

「少し辛口ですが『がんばっていきまっしょい』(1998年🇯🇵)を公開時に観て作品的にも傑作だと思っている立場なので、アニメ版のキャラ設定などに疑問がある」がんばっていきまっしょい ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0少し辛口ですが『がんばっていきまっしょい』(1998年🇯🇵)を公開時に観て作品的にも傑作だと思っている立場なので、アニメ版のキャラ設定などに疑問がある

2024年10月30日
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鑑賞方法:映画館

原作は未読(買ったのに紛失😓)でテレビドラマ版も2話ほど拝見しているが、磯村一路監督の実写版『がんばっていきまっしょい』(1998年🇯🇵)を公開時に観て作品的にも傑作だと思っている立場なので若干辛口になるが、良かった点としては、上映時間95分の中で、コンパクトに構成された物語で、爽やか青春映画としての出来自体はテンプレ的だが悪くなく、3DCGキャラクターも思った以上に可愛い(動きは正直ぎこちなく部分はあるけど仕方ない)
特にヒメは制作陣が気に入っているのか?彼女の仕草や演出もやたらにチャーミングになっているのが分かる。(ヒメが悦子の一番の理解者で女房または正妻役なのも大きいかも)

宣伝にも盛んに登場する主演の声優陣もキチンとした声の演技をしており、特に悦子ネエ役の雨宮天さんは、デビュー時のお嬢様役から近年の当たり役になった駄女神から一転して思春期のモヤモヤを抱えた役を上手く表現している。
近年ジブリなどアニメでプロの声優を使わないのは、誇張されてない自然な演技を求めていると言われるが、多くの声優さんは台詞や物語の解説を、ながら見されるテレビでも伝わる様な発音と滑舌をしているケースが多いと思う。多く声優さんは、ディレクションによって演技を変化できるのだが、メインとなるアニメ作品は、ファン層の願望なのか演出の問題なのか高い音域とテンションの芝居が多いと思う。
ダッコ役の長谷川育美さんは、遅まきながらTVアニメ「ぼざろ」のキタちゃんで知った口だが、ラジオなどのオフ地声は低くて驚いた(話しが横道にそれるな)

気になる部分は、予告編の段階で、ボート部のメインの女性五人が分かり易いくらいに、いわゆる美少女キャラ化されていて違和感があったのだが、本編をみてもバックグラウンドの設定も地元の金持ちのお嬢様(田舎のラブホみたいな豪邸や台詞回しも時代かかっている)に、二人とも変更や改変されていて正直疑問に思う。(アニメ版で映画と同じにしろとは思わないがちょっとやり過ぎ)
あと悦子ネエの実家が実写とは違う写真館になっているのをもう少し活かせなかったのか?例えば彼女の過去を冒頭から映像で描写しているが、自宅写真館にある写真で分からせるとかの工夫も欲しいと思う。(古くはヒッチコックがやっていた手法)

ボート部自体も実写だと1970年代で、男子部はあって女子部がない設定だったのが、本作だと廃部になりかけており男子部員ソロでいて、解説と説明役として絡み以外に役割がなく、最近の青春アニメ(漫画ラノベ原作映画も)に見られるテンプレみたいな、夏祭りや花火イベントや三角関係を醸成するのは、ハーレムアニメ(又はギャルゲー)の視点違いのようでオヤ?と思う。
この辺の設定変更の意図があまり感じられず、今回の脚本に参加している大和慶一郎氏の過去作のタイトルと内容を吟味すると、テンプレ設定の発生は想像が出来そう。(視聴していた作品もあるが飛び抜けた出来はない印象で、人気作品の五等分の花嫁も自分はラブコメ好きだが余り刺さらない)

映像についても、公開前に懸念されていた3DCGキャラクターも思った以上に気にならないの声が多数で、最後のスタッフクレジットを見ていると、監督脚本の櫻木優平氏がCGから音響までかなりの面で、関わっており自主映画か?!と思えるくらいのに関わっていて、恐らく本編を一人でギリギリまで手を入れていたのだろうと予想している。
その甲斐あり予告より良くなったいるの声をSNSで聞き鑑賞したが、悪くはないけどカットによっては違和感を感じる。
同時期にNetflixオリジナルの『機動戦士ガンダム復讐のレクイエム』も視聴したが、同じフルCG作品だが予算規模が違うので単純な比較は出来ないが、こちらの多少動きなどに違和感があるが、あと一歩で実写に肩を並べる出来。

本作の画面や背景も明るくキラキラしているが、アニメに求める映像としての深みには欠けた印象で、競技場面もアニメやCG化によってカメラワークは、自由自在なのだが、映画としての構図やショットやカットが、水面や舞台描写も含め、やや凡庸で映画的なエモーション(エモではない)が弱くて思ったより盛り上がりに欠ける(カメラ的に不自由な実写版は出来ているに!)
想像ですが、CGの自由度に引っ張られて基本的な映像演出までいってない印象。

この辺は古臭いと言われる事もあるが、古今東西の名作や監督など作品や研究書を参考にしてショットやカットに拘って傑作や良作を撮っているアメリカや日本の実力派の若手監督との差を感じる。
例えば集団アクションの逸品を数多くあるロバート・アルドリッチ作品や日本だと工藤栄一や黒澤明の『七人の侍』などが何故凄い作品がある。

アニメやCG映像が好きなの結構ですが、良く言われる事ですが、近年は優れた映像を学ぶのにネットでの視聴や関連書籍も充実していてアクセスしやすいのと、大御所のアニメ監督も温故知新で過去の優れた映像作品からインスパイアを受けている。

二度の競技大会での前後の描写も脚本的には対比として抑えられているが、会場に向かう車内での二度の描写も自分が見た限りキャラの姿配置や関係性に変化が乏しくて繰り返すのにあまり意味のない場面になっているなどが目に付き残念。

それと近年多くある聖地巡礼の観光資源としての映像作品やご当地映画なのに最後に主題歌が、現代の女衒として近年批判されている秋元某作詞やその傘下のアイドルグループで、コレまたテンプレ判子みたいな曲で非常に蛇足!
本来なら地元にゆかりあるミュージシャンや曲を取り上げるべきだろう。
京アニ時代の山田尚子監督は『リズと青い鳥』で自分で良いと思った京都の地元のミュージシャンを起用していたぞ。

作品としては水準を保っていて、普通に見れば全体的には悪くないのだからこそ監督脚本の櫻木優平氏には、次作も含めて『がんばっていきまっしょい』と期待してます。

余談
そういえば実写版で、ダッコ役を好演していま真野きりなさんは、何故?突然に引退したのかな?

ミラーズ