劇場公開日 2024年5月31日

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「 ハラハラさせるアクション、笑いを誘うドタバタカンフーシーン、ホロリとさせる人情シーンなどなど、これまでのジャッキー映画の魅力をギュと詰め込んだ本作にとても好感が持てました。」ライド・オン 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 ハラハラさせるアクション、笑いを誘うドタバタカンフーシーン、ホロリとさせる人情シーンなどなど、これまでのジャッキー映画の魅力をギュと詰め込んだ本作にとても好感が持てました。

2024年6月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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 初主演作「タイガー・プロジェクト ドラゴンへの道序章」から50年を経て、2024年で70歳を迎えるジャッキー・チェンの主演作。一線を退いたベテランスタントマンがあることをきっかけにふたたび危険なスタントに挑む姿を描いたアクション作品。

 本作は、2023年公開の中国映画。ジャッキー・チェン主演のアクション映画で、初主演の「タイガー・プロジェクト ドラゴンへの道序章」から50周年の記念作品でもあります。キャッチコピーは、「これが人生の集大成! アクションのち、涙。」
 本作では主人公であるルオのこれまでの仕事として、ジャッキーが自ら危険なスタントを行ってきた過去の代表的な映画からの映像がNGシーンを含め多数使用されているほか、彼の過去の出演作を彷彿させる衣装や小道具などが登場しています。

●ストーリー
 かつて香港映画界伝説のスタントマンと言われたルオ・ジーロン(ジャッキー・チェン)。ケガをきっかけに第一線を退き、現在は借金取りに追われながら中国の撮影所に住み込み、愛馬・赤兎(「チートゥ」)とエキストラなどの地味な仕事をこなす日々を送っていました。
 ある日、チートゥの元持ち主であった友人ワン(レイ・ロイ)の債務トラブルが原因で、チートゥが借金の肩の一部として連れ去られる危機に。困ったルオは疎遠になっていた一人娘のシャオバオ(リウ・ハオツン)を頼る事にする。法学部の学生であるシャオバオは、恋人の新米弁護士ナイホァ(グオ・チーリン)を紹介。だがシャオバオは、スタントに入れ込むあまり母と離婚した父を受け入れられずにいたのです。
 そんなルオに、愛馬との共演というスタントマンのオファーが舞い込んできます。年齢的にも危険をともなう撮影でしたが、ルオはチートゥを守るため、危険なスタントシーンに挑戦していくこととなります。
 その結果、昔ながらの体を張った危険なスタントに固執する父の姿に反発したシャオバオと溝ができてしまうのです。
 そんななかチートゥに惚れ込んだ大企業の総裁で馬好きのホー(ユー・ロングァン)が、チートゥを買い取りたいと申し出ますがルオは請け合いません。結局は裁判で負け、チートゥをホーに譲る事になったルオ。
 シャオバオは、仕事に命がけで挑むことで家族に愛を伝えようとする不器用な父の為に愛馬を返して欲しいとホーに懇願しますが…

●解説
 スタントマンと馬。この組み合わせであれば、老いたりといえど、往年のアクションを期待するのも無理からぬこと。実際、映画の撮影現場での乗馬アクションなど、見せ場が用意されていました。
 でもジャツキー・チェンも今年70歳。「トランクモンキー/酔拳」などで軽快に拳法を披露し、「プロジェクトA」 「ポリス・ストーリー/香港国際警察」といった作品で無敵のアクションを演じたのは20~30歳代でした。あれから半世紀近く。
 さすがに「プロジェクトA」の時計台からの落下や「ポリス・ストーリー」のカーチェイスのような、決死のアクションはないものの、年齢を考えれば、やはりすごい。これはCGかな、と意地悪な目で見てしまうのは、時代の流れと言うしかありません。
 なお、吹替え版では、吹き替えは、2023年に引退していたジャッキー・チェン専属声優の石丸博也が本作のためだけの限定復帰し担当しています。

●感想
 主演はベテランスタントマンを演じるジャッキー・チェンということになっていますが、見た感想からいうともうこれは相棒の愛馬チートウが主役といっていいくらい、このお馬さん名優でした。裁判に負けてチートウを馬好きのホーに引き渡すシーンでは、チートウがルオと別れたくない感情を爆発させて大暴れします。けれどもルオの「帰れ、もうおまえは嫌いだ!」との一括を受けて引き換えるところは、本当に悲しそうで涙を誘われました。他にもチートウの演技が冴える名シーンが随所に出てきます。
 演技を越えてジャッキーとチートウ役のお馬さんとが深い友情と信頼でつながっているように見て取りました。だからこそ劇中劇の危険なスタントシーンにも、あうんの呼吸で撮影できたのだと思います。
 還暦を越えたしまった自分としては、アクションそのものよりも、老スタントマンの衿持と哀感に引かれました。CGを拒絶し生身のアクションに固執する仕事人間の気持ちも、娘相手に父親を気取ってみたい心情も分かります。公開中の「帰ってきた あぶない刑事」を見た時の感慨を、この映画でも抱いたのです。
 劇中終盤にルオの若い頃のスタントシーンをシャオバオが見て、涙を流すシーンが出てきます。登場するシーンはどれもジャッキーの若い頃の危険なスタントシーンばかりでした。それらを見せつけられてシャオバオのように涙が出てきました。一つのシーンにいのちをかけてまで突進していくのは、役者バカといってしまえばそれまでですが、それでも危険を承知で、役に殉じていく映画愛には、やはり心を打たれる感動があるのです。
 ハラハラさせるアクション、笑いを誘うドタバタカンフーシーン、ホロリとさせる人情シーンなどなど、これまでのジャッキー映画の魅力をギュと詰め込んだ本作にとても好感が持てました。

流山の小地蔵