「ジャッキー自身を振り返るような素敵な作品」ライド・オン おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャッキー自身を振り返るような素敵な作品
予告はあまり目にしませんでしたが、大好きなジャッキー・チェン主演作ということで、公開初日に鑑賞してきました。主人公のルオがジャッキー自身と重なる、素敵な作品でした。
ストーリーは、かつてはスタントマンとして一世を風靡し、今は愛馬チートゥと日銭を稼ぐ生活を送るルオ・ジーロンが、債務トラブルからチートゥを奪われそうになり、疎遠になっていた法学部の娘のシャオバオを頼るが力になってもらえず困っていたところに、チートゥとともに映画出演への依頼が持ち込まれ、これをきっかけに次々と危険なスタントに挑戦していくことになるというもの。
ジャッキー・チェンも今年で70歳になるということで、正直言ってそれほどアクションに期待せず、ハードル下げ気味で臨んだのですが、いい意味で裏切ってくれました。さすが我らがジャッキー!全盛期同様とはいきませんが、それでもキレのあるアクションと愛くるしい笑顔は、今でも健在です。70代といえば、先週の「あぶ刑事」の舘ひろしさんと柴田恭平さんの活躍も記憶に新しいところですが、本家アクション俳優のジャッキーはやはり別次元です。複数人を相手に、街中や家の中で手近にあるものを巧みに利用した、アクロバティックでコミカルなアクションは、往年のジャッキーを思わせる見事なものです。
ストーリーも、スタントに懸けるプロの意地と矜恃、我が子同然に育てた馬との絆、疎遠だった娘への愛と、ともすればちょっと欲張りすぎな内容を盛り込みつつ、そのどれもに熱いシーンを用意してまとめ上げています。中でも、ジャッキー主演の作品のオマージュを散りばめながら、ルオの若かりし頃のスタントの体で名シーンの数々を見せる演出には、懐かしさで胸が熱くなります。また、終盤で現代のCG処理撮映に異を唱えるルオは、長年にわたってアクションの最前線で後進を引っ張り続けたジャッキー自身と重なります。彼のアクション俳優としての信念を強く感じるとともに、改めて過去の名作の数々を観たくなります。
ただ、内容はやはりちょっと盛り込みすぎで、娘との和解と衝突の繰り返しはちょっと唐突に感じるシーンが多くて、二人の感情の変化に共感しにくいものがあります。とくに娘が急に父へ歩み寄りを見せたのはよくわかりませんでしたが、心のどこかではずっと求め続けていたのだろうと勝手に脳内補完しました。ラストは予想の範囲内で意外性はありませんが、温かい気持ちになり、後味はよかったです。
日本語以外は全くわかりませんが、俳優自身の声を聴きたくて、海外作品はいつも字幕版を選びます。しかし、鑑賞後に知ったのですが、本作は石丸博也さんが限定復帰して吹き替えを担当したそうです。今回は字幕版で鑑賞したのですが、吹替版も観てみたくなりました。
主演はジャッキー・チェンで、彼の持ち味を生かすルオ役を好演しています。脇を固めるのは、リウ・ハオツン、グオ・チーリンら。