劇場公開日 2025年1月17日

「現在も横たわり、向き合っている人たちがいる」港に灯がともる chikuhouさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5現在も横たわり、向き合っている人たちがいる

2025年1月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

関西で暮らしてきた者にとってはこの日は特別な思いがあるし、大阪・神戸のミニシアターの中には毎年特集を組んで、関連作品を上映したりもしています  作り手のこの歴史を忘れないという思いと、その史実を知らない世代にまで震災の影を落としていること、こういう声を出せない人々の存在が伝わってきました
30年前私は仕事で生活困難となった被災者の方を大阪府内の仮設住宅に転居移送する担当となり、長田区に通いました  区内の歴史のある公設市場(本作にも出てきたような)が全焼したり、また長田区役所には多数の方が避難をされていて、断水によって排泄物が貯められている光景をみましたが、住民同士何十年もかけて作った絆が一瞬にして失われました
「キューポラのある街」で描かれていたような歴史が50年以上経って、世代が変わっても横たわっている現実  当事者がこの街で助け合って築き上げてきたコミュニテイが、今ウクライナや他民族の方が加わり形を変えて築かれようとしている姿は救いでありました
高齢者にとっては地域に築いてきた絆を失い、仕事や家族を失った方の中には、アルコール依存や精神疾患を病んで、今も苦しさの渦中にいる方は多いでしょう
 精神科クリニックの場面もありましたが、孤立を防ぎ、自分で問題解決する力を持って生きていくことは、歴史の仕業とはいえ本人は苦しいことです
 ぎくしゃくとした父親との関係、姉は切捨てたけど、妹の冨田さんの思いは、親目線でみて熱くなりました  (1月26日 イオンシネマりんくう泉南 にて鑑賞)

chikuhou