「金子さんにとって、どこから青色ですかねえ。私たちはこういうグラデーションの中で生きているんです。」港に灯がともる 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
金子さんにとって、どこから青色ですかねえ。私たちはこういうグラデーションの中で生きているんです。
重い。しんどい。、、、、映画の中のセリフじゃなくて、観ているこっちの気分もそうだった。一生懸命な人ほど鬱になってしまうと抜け出せない。自分の生きてきた街の、自分の知らない震災の重圧。在日であることの疎外感と無力感。いろんなことに押しつぶされそうになった時、医師が夕焼けの写真を指しながら尋ねる「どこから青色?」の問いかけ。昨今、多様性という言葉で片づけられる生き方や嗜好にやや嫌気がさしているのだが、この問いかけには、ハッとした。この夕方から夜の変わろうとしている空のグラデーションはまさに、世の中に生きている多様な社会の姿そのものと思えた。どこからが境かあいまいで、人によって色の判断はそれぞれで、むしろそれで世の中はいいのだと思えた。灯がどう感じたかどうかは知らないが、少なくとも、この問いかけが彼女の心を軽くしてくれたのだと思う。
そして何より、山中崇演じる青山の存在感だ。彼が出てきてから、言葉ひとつひとつの重みが格段に違って聞こえてきた。何も知る前から、この人、相当苦労を乗り越えてきていると思えた。ただ、やや暗いキャラから、まだその途中なのだろうと感じていたが、まさしくその通りだった。たまらなく彼に寄り添ってあげたくなった。
そして、灯も一歩一歩、自分のできることから始める。ウクライナの家族を見て、おばあちゃんに思いをはせたり、父親との対話を乗り越えようとしたり。灯の人生は、まだまだこれからだよ、でもそれでいいんだよ、と応援したくなる感情が残った。
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