港に灯がともるのレビュー・感想・評価
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震災映画とは取られないほうがよい
阪神・淡路大震災30年ということで鑑賞してきたが、主人公の灯は震災の記憶もなく、むしろ震災の話をする父親を鬱陶しくすら思っている。在日韓国人という設定もあるが、在日であることそのものよりも、それら(在日や震災)に起因する機能不全こそがテーマではないかなと思った(後半にはコロナ禍の話も出てくる)。辛い境遇に巻き込まれる灯やその他登場人物が、人間関係のベクトルの取り方に悩みつつも、少しずつ前に進む作品であり、淡い希望を持てるところは良かったが、自分の置かれた境遇に苦しむ前半の灯はちょっと過剰(なかなかこういう人もいないだろ)とは思った
too much かな
個人的に期待している俳優の富田望生さんが主演なので観に行きました。
阪神淡路大震災のメモリアル的な内容なのかと想像していたら、主人公の出自や家族との関係などで悩み多く心病みつつも立ち直ろうとひたむきに頑張る、という感じの物語でした。
震災は背景にあるけれど、心を病む主な原因は家族関係で、繊細な主人公を富田望生さんはひたむきに演じていた気がします。
丁寧に描かれた映画でしたが、このテーマで二時間はちょっと長い。
せめてもう15分短ければ、観る側に余韻やよりそう気持ちが生まれたかもしれないけど、これでもか、これでもか、という感じがして、私にtoo muchでした。
灯(あかり)の心の叫びに心が震えました
主人公 灯(あかり)を演じた富田望生の演技に心が震えました。
ここまで感情が溢れるような演技というのは
正直あまり記憶にないくらい圧倒されましたし、
主人公が置かれた複雑な状況も相まって、心打たれる作品でした。
灯が悩み苦しみながらも、年を重ねるごとに、
また、いろいろな人と関わることで、視野・視座が広がっていき、
父親が言っていることをよく理解できなかったのが、解像度が上がっていくところに
見応えがありました。
安達監督は長回しを結構されるのですかね。
本作ではすごく印象的でした。
父親の部屋のトイレで自分の気持ちが落ち着いてやっと出てくる灯。すごくリアルでした。
ラスト近くでの父親との電話のシーンも、灯の成長を感じられて心にぶっ刺さりました。
国籍関係なく間違いなく親子だと思いました。
父役の甲本雅裕、母役の麻生祐未、姉役の伊藤万理華、弟役の青木柚、
みなさん素晴らしかったです。
心の傷は容易く治るものではないことがよくわかる
自分の記憶にしっかりと刻みつけておきたい作品
阪神淡路震災からちょうど30年目に当たる日に鑑賞。
2020年にNHKで放映された『心の傷を癒すということ』等の演出を手がけた安達もじり監督・脚本の作品。
舞台の中心は神戸の長田区。阪神淡路大震災の翌月に神戸で生まれた灯(あかり)は在日コリアン3世で、震災から20年の節目の年に成人式を迎えていた。晴れがましいはずの日だったが、姉が帰化の話を持ち出してきて父とぶつかり、母は別居の話を出してきて最悪の状況になる。自分ではほとんど意識すらしてこなかった出自の問題や親から何度となく聞かされる震災の悲劇と苦労の話に板挟みになった灯は、やがて精神のバランスを崩してしまい……。
商店街の天井にできた亀裂と家族の間にできた亀裂に象徴される、「街の崩壊と再生」と「人の心の崩壊と治癒」の対比が描かれ、震災そのものというより、震災がその後の人々に与え続ける影響こそが悲劇なのだということを突きつけてくる。さらに、そこで自分自身の存在、家族の存在、コミュニティの存在とは?と問いかけてくる。
震災だけではなく、戦争などでも同様だと思われるが、街への影響より人への影響はずっと長く、世代を超えて続いていく。この物語も東日本大震災やコロナ禍、そしてウクライナ侵攻といったほぼ今日の状況まで続いていく。その中で主人公の灯が見つけ出した心が落ち着ける場所が、長田区に実際に存在する丸五市場。さまざまなバックグラウンドを持った人が集うサラダボウル(あるいはモザイク)にような場所だ。
深い人間関係を煩わしく思う人が増え、人間関係の希薄化が進行し、また自国(自己)中心主義が世界中で蔓延する中で、国籍や人種を超えた共生と人のつながりこそが弱った心を癒やしてくれる唯一の望みの綱なのではないだろうか?
過去の歴史を語り継いでいくことの大切さは言を俟たないが、一方で、そこに囚われすぎて抜け出せないと悲劇を引きずることになる。何も知らない新しい世代が新たなスタートを切ることも場合によっては大切なことであるのかも知れない…… とか思いつつ、ここで描かれるているような人々の姿は、やはり自分の記憶にしっかりと刻みつけておきたいと感じずにはいられない。
少しずつでも前に進めているから
ドラマでいいんじゃない?
これはやり過ぎたかな。
テーマは良かったけど、泣きわめいて、叫んで、怒鳴って、リアリティーにこだわり過ぎたのか会話は何言ってるかよく聞き取れないし、こっちまで病みそうでした。中盤からはもう頼むから泣き出さんといてと祈りながら観てました。
震災直後に生まれた在日韓国人のあかり。父親との確執、国籍問題、帰化、鬱、さらに身体障がい者、アル中、コロナ禍など多くの題材が扱われてますが、「阪神淡路大震災」という一言で十分説得力があるから、こんなに詰め込む必要はなかった気がする。大阪で暮らす私にとってもあの震災は忘れられない出来事。せめてあかりの設定をもっとシンプルにしてほしかった。
エンディングも安っぽいMVみたいでなんのメッセージかよく分からなかった。富田望生の演技は本当に素晴らしかったし、姉弟が豪華でキャストは良かったです。
現在も横たわり、向き合っている人たちがいる
関西で暮らしてきた者にとってはこの日は特別な思いがあるし、大阪・神戸のミニシアターの中には毎年特集を組んで、関連作品を上映したりもしています 作り手のこの歴史を忘れないという思いと、その史実を知らない世代にまで震災の影を落としていること、こういう声を出せない人々の存在が伝わってきました
30年前私は仕事で生活困難となった被災者の方を大阪府内の仮設住宅に転居移送する担当となり、長田区に通いました 区内の歴史のある公設市場(本作にも出てきたような)が全焼したり、また長田区役所には多数の方が避難をされていて、断水によって排泄物が貯められている光景をみましたが、住民同士何十年もかけて作った絆が一瞬にして失われました
「キューポラのある街」で描かれていたような歴史が50年以上経って、世代が変わっても横たわっている現実 当事者がこの街で助け合って築き上げてきたコミュニテイが、今ウクライナや他民族の方が加わり形を変えて築かれようとしている姿は救いでありました
高齢者にとっては地域に築いてきた絆を失い、仕事や家族を失った方の中には、アルコール依存や精神疾患を病んで、今も苦しさの渦中にいる方は多いでしょう
精神科クリニックの場面もありましたが、孤立を防ぎ、自分で問題解決する力を持って生きていくことは、歴史の仕業とはいえ本人は苦しいことです
ぎくしゃくとした父親との関係、姉は切捨てたけど、妹の冨田さんの思いは、親目線でみて熱くなりました (1月26日 イオンシネマりんくう泉南 にて鑑賞)
この傷を癒すということ
けど何が言いたかったのか最後の部分はわたしは分からなかったの
流石安達もじり。けど、何が言いたかったのか、最後の部分は(わたしは)分からなかったのでマイナス1。
阪神・淡路大震災、在日韓国人(二世、三世)、うつ病、アルコール依存症、身体障害者、ベトナム・ウクライナ、コロナ、震災復興。覚えているだけでこれだけかな。ホンマはもっとあるのかもしれない。阪神・淡路大震災だけではなく、これら全てにスポットを当てて考えさせられた。惜しむらくは、わたしのような発達障害者やセクシャルマイノリティも入れてくれるとよかったかな。
それから、安達もじり式なのかな、二回程あった長尺というのかな長回しというのかな。5分ぐらいのカットじゃないかな。中盤にあったトイレのシーンは父との遣り取りも含めると10分ぐらいあったんじゃないかな。それをドア越しの嗚咽しか観客には聞こえない中を、カメラはトイレのドアだけを映す場面。それからエンディングのモノローグ?の場面。レイはそんなに多く映画を観ていないけど、あれだけ尺の長いシーンは観たことがない。監督脚本の腕もさることながら、富田望生、甲本雅裕の演技に惹き込まれた。特に富田望生の嗚咽。演技ではなく本当の金子灯の心の叫びを聞いているようだった。レイも、内容は灯とは違うが、あれだけ嗚咽したこともあるし、今は我が子が嗚咽することもある。考えてみれば甲本雅裕演ずる父も嗚咽しているのかもしれない。あ、長尺のシーンがもう一つあった。空のベッドや。
ま、詳しくはご覧あれ。観て損はないと思うわ。あ、それから、京都弁とも関西弁とも違う神戸弁が新鮮やった。現行の朝ドラおむすびでも使われてる神戸弁やったわな。
これは深い、、、家族愛
金子さんにとって、どこから青色ですかねえ。私たちはこういうグラデーションの中で生きているんです。
重い。しんどい。、、、、映画の中のセリフじゃなくて、観ているこっちの気分もそうだった。一生懸命な人ほど鬱になってしまうと抜け出せない。自分の生きてきた街の、自分の知らない震災の重圧。在日であることの疎外感と無力感。いろんなことに押しつぶされそうになった時、医師が夕焼けの写真を指しながら尋ねる「どこから青色?」の問いかけ。昨今、多様性という言葉で片づけられる生き方や嗜好にやや嫌気がさしているのだが、この問いかけには、ハッとした。この夕方から夜の変わろうとしている空のグラデーションはまさに、世の中に生きている多様な社会の姿そのものと思えた。どこからが境かあいまいで、人によって色の判断はそれぞれで、むしろそれで世の中はいいのだと思えた。灯がどう感じたかどうかは知らないが、少なくとも、この問いかけが彼女の心を軽くしてくれたのだと思う。
そして何より、山中崇演じる青山の存在感だ。彼が出てきてから、言葉ひとつひとつの重みが格段に違って聞こえてきた。何も知る前から、この人、相当苦労を乗り越えてきていると思えた。ただ、やや暗いキャラから、まだその途中なのだろうと感じていたが、まさしくその通りだった。たまらなく彼に寄り添ってあげたくなった。
そして、灯も一歩一歩、自分のできることから始める。ウクライナの家族を見て、おばあちゃんに思いをはせたり、父親との対話を乗り越えようとしたり。灯の人生は、まだまだこれからだよ、でもそれでいいんだよ、と応援したくなる感情が残った。
富田望生の演技力が爆発した作品
富田望生さんのことはたまにドラマやバラエティで見かけるな程度の認識です。
今作は震災をテーマにした心の病を抱えた方の作品のようだったので普段、障害者支援の仕事をしているため気になって見てみました。
内容的には思っていたものと違いました。
震災をきっかけに発症して回復していく的なものなのかなと思ってましたが。
とりあえず私が感じたままの感想を書きますが
ストーリー的にはとても不親切な作りになってると思いました。いわゆる大衆向け作品のようなわかりやすいものではなく、たとえば父との関係性、それぞれの経過などが断片的にしか描かれてないためある程度、自分の中でのこれはこういうことなのだろうか?という補完が必要になってくる作品ではないかなと思います。
特に劇中だけで読み取ろうとすると父親は在日である差別を受けたことによってだいぶ歪んだ人間性を持ちそれを実の娘にまで毎度ブチ切れてるだけの人間にしか見えなく、そんな父親をなぜか娘である主人公は何度も繋がろうとしていてこのあたりも昔の父はそうではなかったみたいな描写もないので意図がよくわかりません。ただ何度も昔の母と祖母と父が並んだ写真が登場するのでここから何かを読み取ってほしいのかなとは思いましたが。
全体的に救いがないというか冒頭から自分勝手な家族の胸糞悪いシーンとかしんどい場面がわりと多く仕事終わりで見に行って気持ちの余裕がない時には見るものではないなと思いました。
震災、在日、心の病という要素がある中で正直何を伝えたいのか、どれを主軸としているのかがいまいち中途半端で見えにくい作品だなと感じました。
ずっと同じシーンを長回しするのもあえてそこから見せたい考えさせたい意図があるのでしょうがみていて苦痛でしかなかったです。
ストーリーだけでいうと金返せレベルでかなりの駄作だと思います。
ただ、演者の方々の演技はみなさん間違いない方々ばかりなのでそこはとても良かったです。
特にやはり富田望生さんの何度か出てくる発狂するシーンや心の病を患った時の演技はすごいなーと思いました。
ストーリーどうこうよりも富田望生さんの演技力のすごさを見る作品だなと感じました。
達観したって事か
初め、理由はよく分からないけど、倦怠した雰囲気から始まり、喧騒、慟哭、嗚咽を伴って不和が表現される。理由を仄めかすワードはで始めるが、ハッキリとは語られず、それを内に秘めたまま家庭と個人が壊されて行った。そこから順を追っての元への再生ではなくてリノベーションの話。
もっとはっきり主人公家族に具体的に起こったトピックを創作してくる筋書きかと思ったけど、そうじゃなく普通の生活を営んで来た普通の人達の過去と現在を何重にも重ねることで、生きていれば誰にでもある・あった観客個々の不安や不満などの経験を想起させ、登場人物達の情緒に寄り添わせる事で、映画のメッセージを自然と吸収させようとしていたように思う。
ちょっと引っかかったのは、比較的診療所を早く退所して就活した事。あの辺りの時間の進み具合がよく認識出来てないけど、発作や症候群めいたものは時折その後も表現されていて、秘密にしてでも診療所に通いながらという演出を取らなかった趣旨は何だろう?と思った。完治といかなくても復調のきっかけを掴んだのは分かったんだけど、あの辺りの心と身体のバランスの演出の仕方が、映画の主題がボヤけるとしても、その設定にして、アノ長回しを入れ込むぐらいなら、もう少し大事に扱っても良いのでは?とは感じた。
それよりもそんな状態にしたであろう原因の一つ一つを同時に潰しに行けるだけの強さがあったって事なんだろうか。。。
全体的には、よく考えて作られている良作なのは間違いない。
最大の敬意と感謝を。
震災後の神戸、在日韓国人女性、心の傷、人と人との分かりあえなさ・・・
難しいテーマが、いくつもあって、1つのテーマだけでも映画として成立しそうなのに、それを1作品、しかも2時間以内にまとめた安達監督は、本当にすごいです。
そして、主人公を灯を演じた富田望生さん。
演じたというより、『スクリーンの中で、灯として生きていた。』という言葉がしっくりきます。今も、『灯は確かに神戸にいる。』そう思う事が自然なくらい。
圧巻だったのが、トイレでの長回しのシーン。ひたすらトイレのドアだけを撮り続けます。それなのに、息をするのを忘れるくらい見入っていました。
扉の向こうには、灯が自分の心と闘っているから。「息遣い」だけで、このシーンが成立していました。そんな俳優さん、他にいるでしょうか。
「灯、頑張れ、大丈夫。灯のペースで。。」祈るような気持ちでドアを見続けていました。灯を応援していた言葉が、気がつけば、私自身が灯を通して励まされていました。
涙が止まらなかったです。
こんな突き抜けた演出をした安達監督は、私たち観客にちゃんと伝わると、「監督は、観客の事を信じてくれている。。。」そんな感情さえ芽生えました。
また、本作は、膨大な時間をかけて、取材を重ねたとの事。だからこそ、作品に散りばめられた言葉の数々が印象に残っています。
特に、灯の精神科の主治医の「あなたが感じる感情は、あなたを守るための感情。だから全て正しい。」私は、この言葉に本当に救われました。
そして、「私は私として生まれてきてしまった。」という言葉。
私は、不眠症で眠るという当たり前のことが上手くできず。そんな自分が情けなく、受け入れたくなかった。だけど、灯さんと出会い、この言葉と出会い、少しずつ受け入れていこうと思えました。
とても、誠実な作品。この映画と出会えて良かった。「港に灯がともる」に携わる全ての方に最大の敬意と感謝を込めて、ありがとうございました。
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