劇場公開日 2024年6月15日

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「石と骨」骨を掘る男 LaStradaさんの映画レビュー(感想・評価)

石と骨

2024年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 こんな人がおられる事を全く存じ上げませんでした。

 太平洋戦争末期の米軍沖縄上陸以降、押し付けられた集団自決や米軍の火炎放射などによってガマ(洞窟)内で亡くなった人々の遺骨を収容しようと今もたった一人で掘り続ける具志堅隆松さんの活動を追うドキュメンタリーです。

 まず、具志堅さんの持つ道具が、園芸用と思しき小さなスコップと刷毛などに過ぎない事に驚きます。それで根気よく少しずつ少しずつ掘り進めるのです。そうすると、戦後80年近く経った今でも、ガマ内で過ごしていた人々の茶碗や銃器の部品などが出て来ます。そして、勿論遺骨も。

 次に驚くのは、土や石と見分けがつかない様なものの中から骨の欠片を的確に見つけ出す具志堅さんの眼力です。そして更なる驚きは、そんな欠片だけで「それが何処の骨」なのかを識別し、一本の歯だけで「何歳くらいの子供だな」と言う事まで分かる解剖学的見識です。具志堅さんはそうした遺骨・遺品の様子から「亡くなった時にはこんな状況だったんだろう」と思いを致します。勿論それは想像に過ぎないのですが、この様な経験と知識を踏まえた言葉には強い説得力があり、我々を80年前の真っ暗なガマへいざないます。

 この様な遺骨収集をもう40年近く続けておられるのです。具志堅さんは、「遺骨が出なくても何ら問題ではなく、これは『行動的慰霊』なのだ」と語ります。その言葉を聞くと、「沖縄の土を掘り起こして辺野古の米軍基地用の埋め立てに用いる」という計画が、あの時沖縄で亡くなった人々とその思いを受け継ぐ人々を如何に傷つけているかがよく分かります。6月23日の「沖縄慰霊の日」に飛行機でブーンと遣って来て、官僚の書いた作文だけ読んで帰る総理には想像もつかない事でしょう。

La Strada