八犬伝のレビュー・感想・評価
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語らせすぎる
映画内の表現を使うならば実と虚のどちらに軸足を置いて展開していきたいのかはっきりしない作品でした。実に軸足を置いてみると虚側に引っ張られて全体のテンポが悪く、虚側に軸足を置くには虚側の作りがチープすぎるためどちらの側からも物語にのめりこめません。主演の役所広司さんを筆頭に演技に力のある方を起用しているのにセリフで細かい感情や思考を語らせてしまってる場面が多くもったいない印象も強いです。3人の天才が持つ実と虚の価値観に関しての描写や北斎の最後のセリフなどは痺れるほどに決まっているだけに全体がもうちょっとテンポよく進んでくれればもっと良い映画になったように思います。
良い作品。だが、映画界の役所広司依存症は危険水域。
緊張と緩和のバランスがよく、最後まで没入できました。
しかしながら、映画界、テレビ界、の、役所広司依存症は、危険水域。
役所広司さんの声は、他の作品で聞き慣れているので、声を聞くたび「『陸王』だなぁ」と、思いながら観てしまいました。
若い俳優さん、病に伏す磯村勇斗さん、滅私奉公の黒木華さん、当人にしか見えない、素晴らしい演技でした。
様々な解釈深読みが可能
と言うことは優れた作品だ。と言えると思う
とそんなありきたりの文句で高評価を残して終わりだと
僕の感想としては片手落ちなので
一部自己解釈を書き残し締めておこうと思うのだ。
僕はある時期に同じクリエイター先祖と思い
馬琴縁のち詣を行っていた
その場所は自社オフィスのすぐ近所で直ぐにでも詣ことが
可能な場所だった。
その場所を振り返りつつ、今の僕が取り憑かれている
要素振り返りを行うと
八と言う数は古来より我が国を彩る物語で
語り続けられて来た数である。
八島に八岐大蛇に八咫烏など陰極まる数である。
因みに八犬士が倒すべき相手が玉梓とされていたので
確証は持てないが、これが玉藻であるならば
九尾の狐。
渡来の妖怪である◎
ついでに八犬士が持つ珠は
仁義八徳で七福を超えた数でもある。
これもまた渡来の神で占める福を超えた話だなぁ。と
つまりは馬琴は新時代に向けて、我が国鼓舞を意図し
本作を創作したのではないか?
と本作展開より感じた。
まぁ、僕の深読みだが、多いに刺激を受けたのである。
無事役者新旧入替も見てとれ良かった良かった◎
日本のサブカル先駆者
本作は予告編を見た時から見るのを楽しみに待っていました。
何故なら、予告で見る限り「南総里見八犬伝」の物語と、その作者である滝沢(曲亭)馬琴の物語と並行した物語であり、それに興味がそそられていました。
物語の方は、昔NHK連続人形劇「新八犬伝」(1973〜75)で初めて知り熱狂して見ていたし、それから関連して山田風太郎などの小説やアニメも色々と見て来たので、個人的には今回は作者視点の物語の方が興味があり、そちらの方で満足させて貰いました。
しかし、この方法では私の様な人間は満足しても「八犬伝」初心者の人には物足りなかったかも知れませんね。
精密には分かりませんが、物語パートと伝記パートを単純に二等分すると時間的にはそれぞれ70分程度で、あの膨大な長編物語をその程度の時間だとダイジェストというか粗筋程度にしかなりませんからね。(個人的にはそれで十分だったし、かなり上手くまとめていたとは思いますが…)
なので、それが原因で「物足りない」という感想もよく理解できます。
でも、映画ファンを名乗るなら元々原作モノ映画というのはそういうモノである事を念頭に置き、そういう存在価値であるという事を肝に銘じておくべきなのです。そして興味を持ちながらも物足りないと感じた人は原作を読むべきであり、それこそが原作モノ映画の存在意義なのですよ。
そして、私が馬琴の半生の方に興味があると言ったのは、元々偉人伝や伝記は大嫌いなんですが、この人が現在のサブカルチャーの始祖的存在の様に勝手に感じていたからです。
私が生まれて幼年期の最初に興味を持ち夢中になったのが漫画というサブカルチャーであり、それからずっとこの歳までそのサブカルチャーにドップリと浸かって来た人生であり、そしてこういう人間(私)が形成されたと思うと、それを作った先人の人達に興味を持つのは当然の事なのです。
私が、漫画を読み、小説を読み、映画を見て、他の様々なジャンルの表現に触れ、そこで考えたことや人生観に至る何か共通性やヒントが、そういう人達の言葉や行動の中に必ず隠されている筈ですからね。そういう意味で本作の現実パートに興味がそそられたのです。
で、本作の場合だと特に馬琴と鶴屋南北(歌舞伎の演出家又は作家?)の創作についての問答は最高に刺激的で面白かったです。
今で言うなら、娯楽とアート、商業(大衆の要望)と作家の志、人生の美しい部分だけを表現し夢を与えるか、醜いものを描き怖がらせ勉強させるか等々、あの短いやり取りの中に考えさせられる(考えて来た)様々な事柄が含まれていて非常に興味深かかったです。
しかしまあ、今やネット時代となり日本のサブカル文化が世界中に広まっている訳ですが、日本ではこの時代から大衆が人生を楽しむ術を持っていた事に対する誇らしさを本作を見て感じられましたね。
中国の「水滸伝」などはもっともっと大昔の書物でそれが誰の為の読み物だったのかまでは知りませんし他国の事までは詳しく知らんけど(苦笑)何はともあれ日本の誇れるサブカル先駆者の存在を再確認させて貰いました。
愛とロマンはあまり感じられなかったかな
子供の頃に角川映画の『里見八犬伝』を見ていたので、その後に教科書に出てきた滝沢馬琴と南総里見八犬伝の事は良く記憶していた。
『八犬伝』には、薬師丸ひろ子が『里見八犬伝』で演じていた静姫は出てきません。
簡単に言うと角川映画の『里見八犬伝』は、愛とロマンの大スペクタクル映画。
そして『八犬伝』は、滝沢馬琴が南総里見八犬伝を書き上げるまでの映画。
愛とロマンはあまり感じられなかったかな。
実在の滝沢馬琴が八犬伝を書き上げるまでの話がメイン。
交互に展開される実(現実世界)と虚(八犬伝の世界)の構成は良い、実の役者達の存在感のある演技も良い、気になったのは虚の映像の撮り方(演出)。
舞台のような照明、緻密に背景を描かず、名前の知らない若い男優の心に訴えかけない軽く感じる演技。
八犬士は、すべて同じような年齢設定なのかだろうか?
『里見八犬伝』では、子供から中年男性、女性の八犬士もいた。
『八犬伝』は原作に近くて、角川映画の方がいろいろ脚色したんでしょうね。
屋根の上で戦うシーンなんかは見どころなんだろうけど、CGなのがバレバレの映像なんすよね。
この映画は、実パートがメインで、虚の八犬伝シーンは付け足しという感じになってしまっているのが残念。
ネタと構成が良いだけにオシイとは思う。
ただ、この惜しいという感覚、たまに感じる感覚なのだが、そこからが難しいんでしょう。
最近だと『僕は、線を描く』でも感じた。
題材、役者がよければ、後は監督の問題になるんだろうけどね。
そして、ラスト。
実と虚が結びついたという事なのだろう、ただ、ちゃちい演出だと感じてしまった。
良いところは役所広司と内野聖陽の演技、土屋太鳳の伏姫も良かったかな。
虚の八犬伝パートの里見八犬伝との違い
・時代設定
里見八犬伝は伏姫没後100年、八犬伝は没後20年
・静姫(薬師丸ひろ子)の存在
八犬伝には静姫は存在せず
・八犬士の年齢と性別
八犬伝は全員が若い男性、里見八犬伝は女性(志穂美悦子)と子供もいた
・浜路の設定の違い
里見八犬伝は、岡田奈々が演じ京本政樹演じる八犬士の義妹で体中が毒の闇の軍団となる
八犬伝では、河合優実が演じ、メインの八犬士の犬塚信乃に想いを寄せる役どころ
・主題歌の有無
里見八犬伝はバラードの洋曲が良かった、『八犬伝』は無い
『里見八犬伝』は、長すぎるキスシーンなどの話はありますが、同じ時代の戦国自衛隊と並んで、私は大好きな映画です。
映画レビューを始めてから思うのは、この二つの映画は評価が低すぎる。。
特撮技術はともかく、今見ても十分楽しめる映画だと思うんですけどね。
私の中で『里見八犬伝』と『八犬伝』を比べると、『里見八犬伝』に軍配が上がるかな。
子供の頃に見たので美化されてるとは思いますが。。
それにしてもなんですが、見たのは土曜日の最終回(19:30~)。
観客は5~6人でした。
今年の日本映画界でも注目の作品だと思うんですが。。
田舎の映画館だから仕方ないのだろうけど、興収を心配してしまう私でした。
長いけど飽きはしない
エンターテインメントとしては面白かったと思います
実パートは本当に良かった
役所さんと内野さんの掛け合いがいい
鶴屋南北との会話も良かった
虚と実の考え方の違いに二人が熱くなって、でも大人だからちゃんと謝る
八犬伝パートは、あくまで虚を脳内再生という感じなので、あれでよかったと思います
それなりに楽しめました
最後城の前で八犬士が揃うところはグッときました
でも……
八房、あんなに変だとは……
本当に作り物だった
影だけでもよかったんじゃないかな
村雨の水がでるところが微妙
ビチャビチャって感じで名刀に見えない
「玉梓が怨霊」の本性の表現は微妙
まず煙にする必要がない
そう怨霊じゃなくてただの煙
そこに禍々しさが感じられない
目や口いらないし、煙ならもっと赤くして怖さが欲しかった(首切られた時は赤かった)
なんなら船虫みたいにヒトガタのままでよかった
船虫のお歯黒は良かった
玉を呼ぶ順番が「仁義礼智忠信孝悌」だったところはエモい
これがエモいと思うのは55歳以上65歳以下かな(人形劇世代)
実の世界
お百目線で見ると
「私の人生っていったい……」と思ったのかも
今際の際の言葉の
「ちくしょう」が耳に残っている
北斎や息子や嫁のポジションに自分も入りたかった
一緒に物語について話をしたかった
おしどり夫婦になりたかった
素直じゃないからそれも言えなくて
結婚して思っていたのと違う人生で
息子を失ってからは本当に寂しくて寂しくて仕方がなかったんだろう
馬琴の頭の中は物語と侍再興しかなくてお百への愛情を感じられない
(家を変わったのも息子のため孫のため)
馬琴は旦那としては最低
今なら離婚案件(笑)
虚構パートの「南総里見八犬伝」の物語が面白かった。
八犬伝の内容をよく知らず、知ってるのはあちこちに飛び去った8個の玉を持つ剣士(犬士?)が戦うこと、タマズサが怨霊という悪霊が出てくることだけだった。
僕は今回の映画を、馬琴が八犬伝を完成させるまでの実話を元にした馬琴の伝記みたいな映画だと思っていた。
だけど、虚構パートの「南総里見八犬伝」の物語も織り込まれていて、僕はこの八犬伝の物語がすごく面白かった。超かけ足のあらすじだけの内容だけど、物語の発端から最後の伏線回収込みのハッピーエンド迄とても楽しかった。
八剣士の俳優は誰も知らない人だったが、土屋太凰さんと河合優実さんが重要な役どころだったのも良かった。
一番気に入ったのがタマズサが怨霊の栗山千明さん。
実話パートには寺島しのぶさんと黒木はるさんも出てて、こうみると女性陣が結構豪華である。
寺島しのぶさん演じる馬琴のこわい妻がいい味出してた。
鑑賞後に調べたら、北斎が36景を描いたのと、八犬伝が完結したのが70才過ぎであることに感動した。
江戸時代の平均寿命はたぶん40才台だろうから、かなり元気で精力的なおじ-ちゃんだ。
中途半端
虚パートをもっと見たい派にも、実パートをじっくり見たい派にも、中途半端な出来。
いろんな役者さんが出ているのに、もったいない。
虚パートの栗山千明がいい感じの悪者なのに、最後盛り上がらない。。。
せっかく怪演しているのだから、もっと見せ場を。
あと八犬士のメンバーのビジュアルが被りすぎ。
・犬飼と犬山のビジュアルが酷似。
・犬川と犬村もよ〜分からん
実パートは北斎とのやりとりが間延びしていたし、寺島しのぶがこういう役を演じるとほんとにただ性格のキツい悪妻になってしまうので、使い方間違ったのでは。
南北と馬琴の問答(口喧嘩レベル)は面白かったけど、
それが原因でしばらく書けなくなった、という馬琴の葛藤が画面に現れることはないし。
その他、創作自体はスラスラ進んでいるので、スランプになった訳でもなさそう。
また晩年は目が見えないのに虚勢を張ることもないので、馬琴の苦悩がいまいち伝わってこない。
歌舞伎勢が総出演とか、松竹がやってもよさそうなのに
木下グループ制作、配給キノフィルムズの時点で、この企画に大手は乗らなかったという証左…?
VFXも今ひとつだし、ドラマも今ひとつだし、役者の無駄遣いに思えた。
人が前を向いて生きる為に
正義は勝つとか
悪は滅びるとか
努力は報われるとか
明日があるとか
そういった「夢物語」を信じて今日を生きる為に嘘物語は必要なんだという事を思い出した
八犬伝のパートはめちゃくちゃダイジェストだし
アクションも悪くは無いけど殆どないし
めっちゃ長いけど良い映画だった
滝沢馬琴の物語
私もジュサブローさんの人形劇を楽しんで視た世代だ。八犬伝と聞くだけで、コレは観なくてはと、待ってましたとばかりに映画館へ。
でも、コレは滝沢馬琴の映画だった。
八犬伝のお話よりも役所さんや内野さん、寺島さん、黒木華さん、磯村さん、そして談春さんに気持ちが持って行かれた。馬琴も北斎も本当にこんなに普通のお爺さんだったのかと思いつつも、奇天烈ではないその姿を役所さんと内野さんが良い塩梅で演じられていて、逆に心をうたれた。寺島さんの女の業だったり華さんの強さだったりも良かった。息子役の磯村勇斗さんや八犬伝の方の塩野瑛久さんも、このところ様々なタイプの役を演じておられて、これからも観て行きたい俳優だ。
しかし八犬伝のお話に、もう少しワクワクしたかった。あまりにも簡単に8人が揃っちゃってビックリした。
間違いなく面白かった。 だが ⑧人が多すぎて 識別不能
この有料パンフ🈶 歴史を知る的に【@1,200は高い】けど 相応の価値がある
ただ 『俳優のコメント』が多いのね 『そこじゃ無いだろ❗️』と思いました。
歴史的背景的には面白い🈶有料パンフ。資料も満載
八犬伝 って 1980年台の 薬師丸ひろ子さんですね。あと真田さん お二方ともバリバリ健在で何より。
人形劇とか漫画は一切知りません。
まあ 確かに ゴレンジャー以降集団ヒーロー🦸への影響力は計り知れないですね,まさに元祖。
本屋さんすら ほぼほぼ日本の大部分占める農村には無かった江戸時代 ただ 貸本の配達屋さんはいたかも
このような 物語を創作した 曲亭 滝沢馬琴さんは素晴らしい👍です。
有料パンフからの引用 滝沢馬琴さん 1767〜1848 南総里見八犬伝に晩年の28年 途中73歳で両目失明
3年間失明状態で 八犬伝完結1842 106冊
⭕️黒木華さんの役が素晴らしい👍 マジ 泣きのポイントあった。心を打った 是非劇場で確認してください❗️
葛飾北斎さん 1760〜1849
役所広司さんの曲亭馬琴は年相応
だけど 内野聖陽さんの 葛飾北斎さんは チト若め
あっ❗️関係ないけど ホームページの動画 東大王が出てるのは なんだかなぁ だったけど
あの 熱い男 藤岡弘さんがコメントしてるのはなぜ❓と思ったら
息子さんが 八犬士の一人演じてた❗️
曲亭馬琴さんの生き様【実 パート】
創作した八犬伝の世界VFX 【虚パート】バランスが良く飽きさせない
ただ,たまに傷 なのが ゴレンジャーのように 色分け 個性【リーダー🟥 センス人気🟦 女性の『真の強さ』🩷
未熟🟢 カレー🍛怪力🟡】が出ていない 識別がイマイチ短時間の映画では厳しい😰
ストーリーはわかったが 8人がごちゃごちゃが マジ玉に瑕。
でも 飽きなくて面白かった それは相違ない
河合優実 さんが こう言う時代劇初 らしくて 初々しい。
個人的には 渡辺崋山【大貫勇輔さん】が登場するのと 栗山千明さんが良かった。劇場で確認して❗️
玉の 数珠的な 『悌』が難読漢字 仁 智 信 義 とかは意味もわかったけど
あっ 詳しい内容は触れてないので 是非 映画館で確認してください❗️パンフもよろしく❗️
娯楽作品ですが 歴史興味ない人には少しだけハードル。だけど 誰でもわかりますよ。
悪人がのさばる世の中だが‼️❓正義を貫きたいものだ‼️❓
豪華な俳優が揃い、それなりにポテンシャルを出している。
映像も素晴らしい👍
ただ、脚本が全てを台無しにしている😠
虚と実が入れ替わるたびに、テンションが下がる。
虚と実別々に映画にしたら、多分、良い映画なんだと思う。
感動しようとするたびに中断されるので、ストレス半端ない、うーん、残念。
ただ、みんな演技が素晴らしくて、見応えがありました、ありがとうございました😊😭
特撮映画史に残る大作
特撮も演技力も殺陣も衣装もメイクも時代考証も脚本も
スクリーンに映る情景の隅々までもが素晴らしかった
役所さんもベテラン俳優さんも談春さんも
歌舞伎役者さんたちも若い八犬士の俳優さんたちも
CG映像もとにかく全部が良かった
特撮映画の歴史に残る楽しめる大作だと思う
果たして馬琴が望む世界は虚か実か?
衆議院選挙の前日に観たのも何かの導きか?
久しぶりの八犬伝
内野さんがまさかの役所さんの年上役とは!
八犬伝の物語と現実が交差しながら進むので分かりやすくあっと言う間に終わりました。
観る予定のなかった映画が思いのほか面白くてなんだか得した気分です♪
我が人生をかけて創(か)く
『里見八犬伝』は1983年の角川製作作品は見た事あるのだが…、
今となっちゃあほとんど話は覚えておらず。ましてや誰かに説明なども出来やせず。漠然と妖術とアクションとロマンスの時代劇ファンタジーだったような…くらい。
現代技術を駆使して新たに映画化。これはちょうどいい…と思っていたら、一捻り。
『里見八犬伝』の物語=“虚”のパートと、作者である滝沢馬琴がいかにして『里見八犬伝』を書き上げたか=“実”のパートが交錯して展開。
大胆な構成で描かれる、“シン・里見八犬伝”であり、名作誕生秘話。
名作誕生秘話に著作が挿入されるのはそう物珍しくはないが、こうも堂々と双方を打ち出して描くのはそうそうない。大抵、どちらかに比重が置かれる。
ならば、一本で二本分の…と言いたい所だが、ちょっと惜しい気がした。『里見八犬伝』はダイジェスト的であり、馬琴のドラマもぶつ切りエピソードを並べ立てたようにも…。
“虚”と“実”が巧みに入れ替わるが、人によってはそれが物語やテンポを鈍らせたかもしれないし、純粋にVFXエンターテイメントを楽しみたかった、馬琴の創作のドラマをじっくり見たかった…という声もあるかもしれない。
でも、私のように『里見八犬伝』をほぼ忘れてしまったり、創作秘話に少なからず興味ある者としては、やはり贅沢な2時間半なのである。
見る前は2時間半は身構えるが、終わってみれば意外とあっという間の感。まんまとこの“虚”と“実”の物語に引き込まれてしまった訳か。
監督・曽利文彦にとっても『ピンポン』以来の上々作。
“虚”のエンターテイメントと“実”のドラマなので、それぞれの感想を語っていこうかなと。
まず、“虚”。『里見八犬伝』。
見ていく内に話を思い出した。呪いをかけられた里見家。呪いからの解放を願い、息絶えた姫君縁の八つの珠を持つ八人の士が導かれるようにして集い、邪悪な存在と闘う…。
演劇・映画化・ドラマ化は数知れず。『指輪物語』が洋ファンタジーの原点なら『里見八犬伝』は和ファンタジーの原点。
1983年版はたっぷりの製作費と当時の特殊技術を駆使して描いた娯楽活劇だった事を記憶している。さすがに今回は全編『里見八犬伝』ではないのでちとスケールなど物足りなさはある。
しかし、現代VFX技術を駆使したケレン味たっぷりの世界観。若いキャストも多く、何だか映画というより2.5次元舞台のよう。最近『推しの子』を見たばかりなのでそれはそれで楽しませて貰った。
若いキャストの中には名も知れた注目株もいるが、ちと実力不足も…。今年最大のブレイク・河合優実も勿体ない。栗山千明は怪演。
先述の通りダイジェスト的だが、サクッと『里見八犬伝』を知るには充分。確かにこんな感じで1983年版のように長尺で見てみたかった気も…。
“虚”も悪くなかったが、個人的に“実”の方が好みだったかな。
ラストでも説明あるが、執筆期間は28年…! 全98巻。48歳の時に書き始め、人生の後半を費やしたほど。まさにライフワーク。
創造した『里見八犬伝』を話聞かせる。相手は、葛飾北斎。
知ってる人もいるのだろうが、馬琴と北斎が親交あったとは、私ゃ知らなかった。
馬琴が話を聞かせ、北斎が挿し絵を描く。それを糧に馬琴はまた物語を創造していく。だけど北斎はせっかく描いた挿し絵をすぐ丸め捨ててしまうんだけど…。
そんな二人のやり取りをユーモラスにも。馬琴のうるさ妻曰く、ジジイ二人で何やってんだか。
ものを書く/描く者同士、才能を認め合っている。あんな石頭からどうしてこんな奇想天外な物語が創られるのか、あんな偏屈からどうして躍動感たっぷりの画が描けるのか。
馬琴と北斎は北斎の方が年上なので、馬琴=役所広司、北斎=内野聖陽の配役はちと違和感あるが、そこは演技力でカバー。不思議としっくり来る。
実パートは豪華演技派揃いで、その点は虚パートと比較にならないほど。磯村勇斗や黒木華も好助演で見せ場あり。寺島しのぶはオーバー気味だったかな…?
創作秘話には苦悩が付き物だが、馬琴のそれはちょっと違う。物語の創造に於いて壁にぶち当たる事はなく、想像力は無限。馬琴と関わる人間関係や馬琴の身体のある部分が馬琴を苦しめる…。
馬琴はある時北斎に連れられ、芝居を観に行く。
一見『忠臣蔵』。そこに怪談話が絡む。深作欣二監督作でも知られる『忠臣蔵外伝 四谷怪談』。
馬琴は作者・鶴屋南北の独創性は評価するが、ある疑問が。何故、“実(忠臣蔵)”に“虚(四谷怪談)”を…?
南北にとっては『四谷怪談』こそ“実”で『忠臣蔵』こそ“虚”。『四谷怪談』に恐怖を感じたならそれはもう“虚”ではなく“実”。
馬琴は『里見八犬伝』で勧善懲悪を描くが、南北はこの世は必ずしも正義が勝つ訳ではない。
馬琴と南北の問答の凄みと、立川談春の存在感。
『里見八犬伝』を勧善懲悪の“虚”として描く馬琴にとってはカルチャーショック。
妻・お百は物書きの夫を理解出来ない。口を開けば悪態悪態悪態…。息子・宗伯は父を尊敬しているが、馬琴は厳しく向き合ってくれない。それでも父の執筆を手伝う宗伯だったが、身体が弱く、やがて…。
良き息子に恵まれ、孫にも恵まれるが、真に家族として幸せだったのか…? もっと家族と…。
息子が亡くなり、妻も亡くなり、それでも書き続ける馬琴。長い歳月をかけて『里見八犬伝』も終盤に差し掛かった時、馬琴に病魔が…。失明。
これは物書きにとっては致命的。見えない=紙に文字を書けないも同じ。
物語の創造が出来ないのも苦だが、書きたいものがあるのに書けないのも苦。その歯痒さ、もどかしさ。
そんな時助力を申し出たのが、息子の妻であったお路。
読み書き出来なかったお路が馬琴に一文字一文字教えを乞い、叱責受けながらも、完成させる。知らなかったが、これも実話。
ラストシーン。『里見八犬伝』を書き上げ、力尽き果てたように命絶えた馬琴の元に現れたのは…。
昨今、原作者問題が何かと物議になるが、作者にとって生み出した作品やキャラは我が子。作品やキャラにとって作者は生みの親。
和ファンタジーの原点。
善と悪が入り乱れる世界で貫いた勧善懲悪の信念。
様々な人間関係、苦楽の果てに。
我が人生をかけて創(か)く。
“虚”は“実”となる。
「虚構」の世界だけでなく「現実」の世界にもハッピーエンドは訪れる
「八犬伝」の物語と、それを創作した滝沢馬琴の物語を同時に楽しむことができて、少し得をした気分が味わえる。
ただ、「八犬伝」の方は、その面白さを満喫するには、さすがに「尺」が短かすぎて、例えば、せっかくの八犬士のキャラクターが充分に活かされていないなど、どうしても物足りなさを感じてしまう。VFXやアクションの見せ場も多いのだが、やはり、ダイジェスト版のような中途半端さが気になって、今一つ没入することができなかった。
その一方で、「八犬伝」の創作活動の方は、気難しくて人付き合いの悪い滝沢馬琴と、自由闊達な葛飾北斎という2人のキャラクターの対比が面白いし、馬琴に文句を言い続けた妻と、馬琴を支え続けた息子とその妻との関係性が、馬琴の人生を上手く浮かび上がらせていると思う。
馬琴と北斎の創作に対する姿勢の違いも興味深いが、本作の最大の山場の一つは、歌舞伎小屋の奈落で、馬琴と鶴屋南北が、「虚構」と「現実」に対する考え方について火花を散らす場面だろう。
悪がはびこり、正直者が馬鹿を見る「現実」だからこそ、勧善懲悪の「虚構」を創り出すことにこだわる馬琴と、正義が報われないという「現実」を直視し、それをありのままに描こうとする南北の姿勢は、どちらが正しくてどちらが間違っているという類のものではなく、いつの時代にも共通する創作のスタイルであるに違いない。
おそらく、重要なのは、その姿勢をブレずに貫くというで、馬琴が、28年という歳月を費やして、勧善懲悪の姿勢を貫いた「八犬伝」の価値は、そういうところにもあるのだろう。
そして、八犬士が玉梓の怨霊を滅ぼし、盲目になった馬琴が、義理の娘の力を借りて「八犬伝」を完結させたという二重のハッピーエンドからは、「虚構」の世界だけでなく、「現実」の世界でも「善人は報われる」ということを実感することができ、思わず胸が熱くなってしまった。
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