八犬伝のレビュー・感想・評価
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残念。
馬琴が友人の北斎に八犬伝の物語を語るという形式で、創作に賭ける馬琴の人生(実)と八犬伝の物語(虚)が交互に描かれるのだが、この二部構成が全くうまくいっていない。どちらも中途半端になってしまった。
特に八犬伝の物語パートが残念。映像のチープ感は否めないし、八剣士の描き方が薄すぎて、それぞれのキャラクターが立ち上がってこない。せっかく力のある若手俳優を起用しているのに、彼らのよさが活かされていなくてなんだか可哀想だった。
八犬伝自体がそれだけで素晴らしく面白い物語なのだから、正面から正攻法で新しい八犬伝を見せて欲しかった。残念。
二つの映画にした方がいいのかな、でも気持ちは分かる
今年、曲亭馬琴の原著『南総里見八犬伝』全10巻を読んだ僕としては絶対に見逃せない映画が遂に公開です。
が、本作は、現実世界の馬琴と葛飾北斎の交流と、八犬伝の物語を交互に描く構成でした。役所広司さんの馬琴・内野聖陽さんの北斎の付かず離れずの関係の中で語られる「物語を作る」と言う事への情熱と苦悩が非常に重厚でした。特に、当時の歌舞伎の人気脚本家・鶴屋南北との虚と実・勧善懲悪を巡る会話には、切れば血が噴き出しそうな緊迫感が満ちていました。南北を演じた立川談春さんの外連味もとても生々しかったです。
そうした馬琴を描く以上は、彼が生み出した物語世界も見せねば彼の思いが伝わらないのでしょうが、10巻の物語を1時間程度で見せるのはやはりダイジェスト版にしか見えないのが残念です。僕の大好きなエピソードが完全に落とされていたのも悔しい。でも、それも仕方ないのかな。ただ、馬琴・北斎パートと比べると八犬伝パートの俳優さんに重厚さが欠けた事が物語にバランスを欠く結果になってしまいました。馬琴原作では八剣士はあんなイケメンのイメージじゃないんだよなあ。
二つを別の映画にした方がいいのだろうけど、二つを裏表としたい気持ちも分るし難しいなぁ。
短いね
虚と実を過不足なく絡め映画的な統合を図るのだとすると時間が圧倒的に足りない。南総里見八犬伝は28年間を費やし私生活の苦労を抱えまた戯作の意味を繰り返し問いかけながら作り上げた超大作であるということが実の部分で強調されながら、本作で映像化されている虚の部分があまりにダイジェスト過ぎて作中で自己矛盾を起こしている。小説は未読だが、映像化にあたり実の部分を掘り下げてドキュメンタリーをやりたいのか、虚の部分のアクション大作を語りたかったのか。曽利監督の経緯から推察するに後者だったのでは。
マタゾウは薬師丸ひろ子と同学年、NHKも深作版も知っている世代。CGIの進歩はあろうが虚の部分のスケールが小さく、アクション映画としても本作が勝てたとは言えない。出演者各位にとっても残念だったのではないだろうか。
舞台挨拶会をライブビューイングで鑑賞。
追記 「ヤッチマイナー」はGOGOの出演とともにオマージュ?
若い人も人生の先輩もとっても観やすい!!
「八犬伝」は多くの方が書かれているように私も
NHKの人形劇でハマった年代なのでとても楽しみ!
と同時に、あんな荒唐無稽な話を映画化するのは
実はとっても難しい!大丈夫だろうか?と、
とても不安だったのだけどストーリーの構成を知って、
ああ、そんな手があったか!!と、興味津々でした。
これは山田風太郎氏の原作がこの映画と同じく、
滝川馬琴の半生と「八犬伝」のストーリーを
年代毎に交互に書かれているそうで、
それを元に構成された映画と言うことでした。
正直なとこ「八犬伝」の物語部分は長大なので、
完全映画化は無理だと思っていたし
VFXは頑張ってましたが、随分端折った「物語ですよ〜〜」的な
思った通りの荒唐無稽さは否めないのですが、
滝川馬琴の半生の描写は流石に演技巧者を揃えただけあって
「八犬伝」の「物語ですよ〜〜」感を補って余りある
重厚な出来栄え!!
役所広司さんの馬琴は言うに及ばず、
一番の儲け役、自由人北斎を演じた内野聖陽さん。
馬琴の妻役寺島しのぶさん、息子役の磯村勇斗さん、
息子の嫁役の黒木華さん。
これだけで一級の人情時代劇が出来そう。
その重厚な「実」の部分と荒唐無稽な「虚」の部分が
時代劇なんかほとんど観たこと無いと言う若い観客も観やすい様に
飽きない程度の長さで行き来する。
楽しい作品に仕上がってます!ぜひ劇場で!!
で、月に8回くらい映画館で映画を観る
中途半端な映画好きとしては
そもそも「八犬伝」そのものは
「仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌」と言う
江戸時代の武士の価値観が元になっているので
ここを現代の観客に飲み込ませるには
いい意味での「改変」が必要になるのでしょうが
本作はそこは触れずに、人の世では成立しにくい
勧善懲悪の物語として推し進めることで
馬琴の創作意欲の根源に話を集中していて、
中盤、歌舞伎舞台の奈落で考え方の違う
鶴屋南北と馬琴の会話そのものが
創作に携わるの者の本音と言うか
興味深い場面になっている様に思います。
あと、この映画、意外にジェンダーフリー映画かもしれません。
だって最大のビランが悪女ですし〜。
そのビランに対抗するのも正義の姫君様!
馬琴にとっても一番手強いのは自分の妻!
そして最後に手を差し伸べてくれるのは死んだ息子の嫁。
中々でございますわ!!
一粒で二度おいしい?
八犬伝と八犬伝を書く馬琴の話。
一粒で二度おいしい…と言えば聞こえはいいが、物語の八犬伝の部分はどうしてもあっさりりに。原作はどうなのかわからないけど、これなら八犬伝はすっぱり諦めて馬琴の物語に注力してもよかったように思う。(集客が難しいかもしれないが…)
殿様の失言がきっかけなのに、八犬士が頑張って、殿様「よくやった!がはは」ってなるのは現代の政治家を彷彿とさせます(笑)
現実部分でも虚構部分でも演出が派手。爆発にたいして被害がすくなくない?と言いたい(笑)
八犬伝を知らない方が楽しめると思います。
フランダースの犬
面白かった。
虚(フィクション)と実(現実)の問答。
四谷怪談が掛け算でも足し算でもない、引き算ではないか!と激昂するシーンが最高に面白かった。
八犬伝と四谷怪談の関係など考えたこともなかった。
虚は実となり、実は虚となり、反転する、虚実の哲学。
主人公は現実の無情さに生涯苦しみぬく。
そして、この「八犬伝」という物語そのものが、虚を実でくるんだ構造になっている上、さらに最後の最後でさらに虚でくるむという構造は素晴らしい(フランダースの犬のように)。
改めて我々にとって虚(フィクション)とは何なのか、深く考えるきっかけになった。
現実はつまらぬ、無情の世界。
しかし我々は現実だけに生きているわけではない。
むしろ何をもって生きるのか、ということの中に真実があるのかもしれない。
江戸川乱歩の「うつしよは夢、夜の夢こそまこと」にも通じる。
滝沢馬琴と葛飾北斎に鶴屋南北
南総里見八犬伝が物語パート(虚の世界)とその物語を描く執筆パート(実の世界)が交錯して進んでいく。
滝沢馬琴がどのようにして書いたか、どのような想いで書いたのか、そして作品のあらすじを口頭で聞かせてもらい贅沢な読者だけど挿し絵では馬琴の創作意欲を持続させる葛飾北斎。
北斎は絵を描くのに現地へ行ってみる主義なのに馬琴は今現在でないからと言い頭の中で想像した房総地区を舞台として物語を描くと言う。
そして北斎のツテで観た歌舞伎の奈落で会って意見を交わし合う鶴屋南北。
八犬伝の創作を見てとれる。
年齢からか目が失明しても亡き子供の嫁のお路の3年に及ぶ代執筆が完成させる下りは涙を誘う。ありがとうお路さんと言いたい。
物語パートではダイジェストで贅沢に八犬伝を堪能出来た(1作品でないのがもったいない制作費と役者たち)。ぜひ、新しい八犬伝を制作してもらいたい感想が湧いた。
最後は木下グループの映画だなぁと思ったのが、パトラッシュがネロを天国に導いていった如く、八犬士が馬琴を皆で支えて天界へ導いていった演出。カドカワの映画と違い、木下グループらしくホッコリした。
生涯を通して正義を貫いた苦悩「滝沢馬琴」物語と、軽い今どきCGアクションもの「八犬伝」の両者のダイジェストを交互に編集した総集編?で、本編は??
里見家の呪いを解くため、運命に導かれた8人の剣士たちの戦いを描く「南総里見八犬伝」。
その作家・滝沢馬琴の生涯をかけた創作の過程と芸術家としての苦悩を描く。
八犬伝と言えば薬師丸ひろ子・真田広之の角川映画「里見八犬伝」ではなく、子供の頃に毎日見ていたNHKの連続人形劇「新八犬伝」を思い出す。
当時は、一大ブームが巻き起こり、書店には「南総里見八犬伝」の数々のバージョンがずらりと並んでました。
「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」が今でも空で言える人が多いのではないか?
「玉梓が怨霊~」の決め台詞も脳裏に焼き付いてます。
滝沢馬琴は、生涯を通して正義を信じる物語を描き続けながらも、そうはいかない現実との差に苦悩し続ける。
何も悪をなしていないのに、わが身に降りかかる不幸を嘆き苦しむ様は、さすが役所広司、内野聖陽、見ごたえがあります。
脇を支える寺島しのぶ、黒木華も良かったのですが、いかんせん、他の者との関係を描くシーンが少なすぎてもったいない。
黒木華が夫と心を通わせ支える話がほとんどない。
なかなか面白かったのですが、「滝沢馬琴」物語と、「八犬伝」の両者のダイジェストを交互に観ているようで残念。
ダイジェスト?予告編?で、本編は?と言いたくなる。
どっちも中途半端。
特に「八犬伝」部分。
せっかく真田広之が米国で時代劇を頑張ってるのに、日本の時代劇がこんな軽量級でいいのだろうか。
ワイヤー・アクションやCGを見せ場にしてもいいけれど、数々の名寺等でせっかく撮影しているにもかかわらず、全シーンが超軽いのは、演出のせい?俳優?美術?撮影?
特に特に玉梓の正体の超超超チープな煙CGはずっこけた。
なんと、発想が貧弱な。
いくらCGが発達してもクリエイターの発想がこれではお話にならない。
栗山千明の方が怖い!正体が煙では明らかにグレードダウンしてる!
ちなみに、八犬士は八房と伏姫の子供たちとずっと思ってたのですが(随分とエグイ話だと)、WikiPediaを読むと、そこにもいろいろあったのですね。
あと、「あっぱれ八犬士!」みたいなこと言うけど、どの口が言うか。
そもそも全ては、義実が玉梓の助命の言を翻したり、八房に「景連の首を取ってきたら娘の伏姫を与える」と軽口を言ったことから始まったことなのに。
最後にさらに許せない点。
劇中の歌舞伎のシーンの扱いが雑なこと。
戸板返しの場面(ですよね?)なのに、戸板返しの驚きシーンを映さなかったり、
お岩の登場を歌舞伎なのに合成で出現させたりするのは、ひどい。
あと、山田風太郎の原作だから仕方ないのかもしれないが、クレジットに「南総里見八犬伝」「滝沢馬琴」または「曲亭馬琴」の文字が無いのは納得いかない。
虚実の交錯がおもしろい!
『南総里見八犬伝』
あんなに堅物そうなのに…葛飾北斎が頭撫でるのも同感!
現代でも通用するであろう、ものすごーく面白いファンタジーなストーリーを思いつく
滝沢馬琴の頭の中ってどうなってるの?!
8人の剣士たちの戦いをダイナミックに活写する“虚構”パートと、
その作者である江戸時代の作家・滝沢馬琴の創作の真髄を
葛飾北斎や妻のお百、息子の宗伯、宗伯の妻 お路との日々のやり取りを
織り交ぜながら迫る“実話”パートがテンポ良く交錯され描かれており、
ワクワクとフムフムとで、とても面白く感動しながら楽しめました。
虚構パートの俳優さんたちも、2.5次元感がハマっていて良かったですが、
やはり、実話パートの俳優さんたちが、本当に素晴らしかったなー。
お百の「チクショー」、良かったなぁ…。
さらに、奈落での鶴屋南北との問答対決は、
そのまま、役所さんと談春さんの芝居対決のようでもあり、
問答も芝居も双方が引けを取らず、
息を詰めて魅入ってしまい、感動して泣きそうになりました。
この場面、いちばん好きかも。
そして、笑顔のラストは、とても良いです!!!
失命後の創作過程のところがとても興味深かった
個人的には、お路との創作過程の苦難と八犬伝のクライマックスをもっとじっくりと、たっぷり観たかった。
すると、3時間超えになりそうですが。(汗)
全体的にとても楽しめました。
ファンタジー
虚と実の話。
八犬伝の「虚」の部分はまさにファンタジー。
子供向けの仮面ライダーみたい。
セリフであるとおり。
嘘があっても良いし、楽しめれば良い。
やりすぎ感があるけど、それもまた良い。
かっこよすぎてニヤニヤしちゃうけど。
鑑賞後、
「はじめから玉投げれば良い」
とか言っている人もいたけど、そういうことでは無いし、リアリティとか無くても良いのだと思う。
里見だから千葉でロケして欲しいけど、まぁ、安房に行ったことなくてもいいのでしょう。
ふたつの話にボリュームを持たすために150分。たぶんこれでもカットした分がありそう。8人間それぞれの良さは出ないけど。
それでも長いな、、、膀胱との勝負。
八犬伝に込められた願い。
この八犬伝という物語には、今も昔も変わる事の無い願いが込められているのだと感じました。
そして、その物語を一途に描き切る、滝沢馬琴という一人の人間の愚直さを知ることが出来る作品です。
虚と実、動と静
現実と虚構が入り乱れた作品、150分の尺から「大丈夫か?」という一抹の不安があった。しかし、推しの役所広司が主演となれば、観ないわけにはいかない。というわけで、おっかなびっくりで初日のレイトショーへ行ってきた。
鑑賞し終わって最初に感じたことは、150分があっという間だったということ。
つまり、それだけ作品に没入できた。実と虚の世界の時間配分のバランスがよく、違和感なく、自然に見ることができたからだと思う。
推しの役所広司(馬琴)の演技はやはり流石。言うことなし。
内野聖陽の北斎も、内野らしさ、北斎らしさ、が出ていて、二人の掛け合いがよかった。
実のパートでのクライマックスは、中盤の鶴屋南北(立川談春)と馬琴の問答だったように思う。実と虚、正義と悪をどう描くかの問答だったが、大衆文芸である偽作、歌舞伎にそれぞれメッセージを込める二人の創作者としての矜持がぶつかり合う場面だった。ここ見どころ!(南北が終始天地逆さまで話し続けるのは、馬琴と真反対の考えを持っているということのメタファーかな)
虚のパートは、ダイジェスト的にまとめないと実のパートの邪魔になるので、かなりの中途半端感は否めない。いや、それでも、よく1本の映画にまとめたものだと思った。
実のパートが動きがない「静」の映画とすると、虚のパートは完全に「動」。実と虚、静と動。相反するものを1つにまとめた制作陣の手腕はすごい。
ただ、全編通して馬琴の執念は伝わってきたが、残念ながら心を揺さぶるものがなかった。馬琴が失明してお路(黒木華)が代筆して作品を完結させる場面や、八剣士が玉梓(栗山千明)と戦う場面なども、平板な印象で、観る者の心を動かすような演出・演技ではなかった(わざとそうしたのかもしれないが)。
豪華俳優陣の力が十分発揮されていないように感じたのが残念(下記に簡単な感想を)。
※栗山千明はやっぱりダークな役が似合うと思います。
※河合優実どんだけ働いてるの?
※板垣李光人はやばいわ。誑かされそうになった。
※寺島しのぶは、めちゃくちゃいい味出てました。
(2024年映画館鑑賞29作目)
江戸爛熟期の文化の香りを感じる話
感想
江戸文化文政(1804〜1830)期の町人文化華やかかりし頃、活躍した著名な戯作者で日本最初の職業作家であった曲亭(滝沢)馬琴の全盛期の活躍から晩年までの姿と、また1814年(48歳)から28年間に渡り著作された自身最長且つ最高の作品であった南総里見八犬伝を映像化した作品である。原作は山田風太郎。
馬琴自身の生涯を全て描いている訳ではない。話は八犬伝のストーリーを着想した話を挿絵の依頼をしていた後に浮世絵の大家となる葛飾北斎に語り出すシーンから始まる。(馬琴の若き日の身の上の説明がもう少し詳しくあるとこの作品は俄然面白くなるのだが歴史としての記録を含め本作の内容を以下に簡単に記した)
本作は馬琴が虚なる戯作を創作し続ける意義や流行り物の歌舞伎演目に於ける作者達の各作品としての虚と実の解釈と表現方法、四代目鶴屋南北との対話から人の虚実の捉え方の違いを意識して以降、八犬伝の作風に影響を与えたのか否かという話等、江戸文化爛熟期の世俗の中で昔から普遍的に思われていた虚と実の解釈が時代の変遷により変化し続けている事、さらに馬琴自身の実人生において虚と実とはどのようなものであったのかを克明に描いている。
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馬琴(滝澤興邦)の家系は元々は松平姓を名乗る旗本上士の家老職を務める家柄であったが馬琴の祖父興也に男子が無く中間家より養子を迎え興吉と名のらせ4人の子をも受ける。その三男として生まれた。
少年期に父興吉病にて他界。養子家系なので家禄を減らされた上、兄より家督を譲られる。主君の孫に支えるも折り合い悪く10代で浪人となる。その後戯作者山東京伝の弟子となる。さらに出版元を営む蔦屋重三郎宅に手代として住み込む。そこで読書と著述を学ぶ。
しかし生活には困窮し、24歳の時に下駄屋が本業の貸家の大家の娘である会田百と年収20両という生計を優先させる考えで半ば政略的に結婚をする。お百も半ば状況を理解していた為、興邦は生涯お百には頭が上がらなかったという。戯作創作の為にあらゆる分野の書物を読込み理解していた馬琴(興邦)と比べてお百は読み書きは全く出来なかったという。
馬琴の長男の興継は長じて宗伯という画号用い絵等も描く文人となる。土岐村路(みち)と結婚。路の父親で紀州藩家老の御典医だった土岐村元立の紹介で医師の道へ進みその傍ら父馬琴の八犬伝の文章校正を担当する。しかし流行り病で興継は早逝する。その死に顔を座像として最後に描いた渡辺崋山との出会い、自身の視力喪失、さらに興継の妻みち(路)の馬琴口伝による八犬伝代筆。さらに妻のお百の死。八犬伝という虚である話を創作する内に多くの偽らざる実が馬琴に降りかかっていく。
南総里見八犬伝が完結するまでの28年間、事ある毎に馬琴の精神的支柱を担っていた葛飾北斎の姿にも感銘を受ける。馬琴との時々の話の掛け合いは江戸っ子ならではの笑いを誘う。
馬琴の八犬伝で実の世界で滝澤家再興を待望するその熱い想いが里見家を再興させる八つの玉(仁義礼智忠信考悌)を持つ伏姫と八房の絆に繋がる八人の剣士を中心に展開する怨霊玉梓に誑かされた者達との不可思議かつ壮大な一大戦記の戯作を完成させる事に繋がっていく。
この物語を読んだ者は確かに物語は虚であるが、その話の中で主人公達が命を賭して護っていく重要な八つの理念は実(現実)の世界で生きていく時にも人として最も重要な判断をする時に護るべき大切な精神である事を切々と訴えている事を感じとった。この頃に生きていたこの戯作を読んだ多くの日本人が、これこそがこの国の精神の真髄であると結論付けたのだ。たからこそ大評判となり現代では江戸期日本文学の傑作と評される所以だと感じた。
脚本・演出
江戸期の町人文化の香りを深く感じられる内容であった。八犬伝本編を本作の配役でもっと観てみたい気がした。馬琴の出自等の身の上に関しての割愛は構成上致し方ないと感じる。全体的に二つの話を視点を変えて観たというお得感があり満足した。
VFX
どこかで観た事がある雰囲気ではなく、オリジナリティ溢れるファンタジックな映像であった。
配役
役所さん、内野さん、寺島さん、他豪華俳優陣の皆様。大変素晴らしい演技であった。
当時の三代目尾上菊五郎の公演と見受けたが歌舞伎役者としての中村獅童さん、尾上右近さんの四代目鶴屋南北版忠臣蔵と四谷怪談も素晴らしい演技で興味深く観た。更に奈落での人力の舞台回転装置の中での南北と馬琴の虚と実の解釈会話など当時の歌舞伎興行の雰囲気を大いに感じた。
⭐️4.0
物語の筆を置いてはならない
八犬伝の冒頭はなぜーか知ってます。何がキッカケだったか思い出せないのですが。
作り手にそんな人生があったのか、と胸熱。
年老いていく姿と目が見えなくなっていく姿。人生をかけて作品を生み出す美しさ。
「ルックバック」「ブルーピリオド」のように美術芸術分野の映画が多いような気がして、生成AI時代への何らかのメッセージかなと感じています。
虚を貫けばそれが実
南総里見八犬伝とそれを書いた頃の滝沢馬琴の話。
南総里見八犬伝のあらすじを、へそ曲がりで口の悪い絵師に聞かせる体でみせていく。
そもそもが里見八犬伝が面白いところに馬琴と北斎や家族との出来事を行き来させながら進行していくしで、149分という尺とはは言え長さはあまり感じない。
ただ、里見八犬伝パートは良いとこ取りのサクサク過ぎる進行だから少々物足りなさも…。
そして馬琴の行も悪くはないけれど、やはりより面白いのは里見八犬伝というね。
ラストは「なんだかとっても眠いんだ〜」な違う犬のタイトルの作品みたいだし。
ということで、かなり面白かったけれど、南総里見八犬伝だけで作り直して欲しいとか思ってしまった。
こっちが原作に忠実なのですね
小学生の頃、満席で立ち見もギチギチの映画館で観て以来、何度もテレビで観て、大人になってDVD買って今でも大好きな『里見八犬伝』。
この映画と比べたら随分と原作こねくり回してたのね。そもそもがSF時代劇だったし、主題歌も洋楽だったし。
八犬士全員の名前覚えてるから、出てくるたび信乃だ源八だ親兵衛だとテンションあがる。
深作版の浜路はちょい役だったから心配だったけど、河合さん出番多くて良かった。
真飛聖さんは気持ち悪くて良かったけど、ムカデ女の船虫を期待してただけに、あそこばかりはちょっと肩透かし。
栗山さんは安定の怖さ。
八犬士パートが楽しみだったけれど、滝沢馬琴と葛飾北斎のパートも、役者陣が芸達者揃いで見応えがあった。あの中で磯村勇斗さん頑張った!
目線でだんだん目が見えなくなっていってるのが分かるくらい、役所さん名演技。
2時間半あったけど、全く長いと感じなかった。
歌舞伎観劇の時の役者が尾上菊五郎なのは偶然かそれとも。
そういや『忠臣蔵外伝 四谷怪談』の監督も深作監督だったな。
中村獅童・尾上右近の歌舞伎シーンが一番見応えあった!
レイトショー『八犬伝』
83年版の里見八犬伝は、当時人気絶頂の薬師丸ひろこ・真田広之さんに松坂慶子・千葉真一さん共演
特撮・特殊メイクにアクションにロックな主題歌〜時代劇の概念を打ち破る作品でした
今回の作品は、滝沢馬琴と葛飾北斎の28年・・・長い。。。
構想と空想をリアルに活劇として映像化しながら、この奇想天外な物語の書き上げるまでが描かれる
役所さん内野さんの極上な演技に魅せられながら・・・
寺島しのぶの馬琴と北斎のやり取りを台無しにする毒ぶりと黒木華の安定感は流石!!
年明けの日本アカデミー賞を席巻しそうな予感!?
八剣士活劇部分は・・・
83年版と比べると役者さんの時代劇スキルが違いすぎるので、私的にオマケって感じ^^;
ただ当時の歌舞伎役者を演じる中村獅童・尾上右近さんの熱演は圧巻でした!!
八犬伝というより馬琴伝?
体感的には7割馬琴の話、3割八犬伝の話、かなりミスリードしてるタイトルだなとは一番正直な感想です。
馬琴はどういう経緯で、何を経験して八犬伝を完成したかを知りたければとてもオススメできる映画ですが、八犬伝の物語を堪能したければこれではない。
八犬伝の尺が短かく、しかも途切れ途切れなので、物語の発展も、映像の編集も唐突な部分が多く、とても入り込みにくいです。結局玉が8つ集めばいいでしたら、八犬士は戦に参加する必要性があるかな?それぞれの人生を歩んできた八犬士はどうして命をかけるまで怨霊と戦うのか、その急にできた使命感も理由も色々よく分からなかった。28年間かけて書いた大作がこれ?と思うぐらい、あまり八犬伝の原作のよさが伝わってくれなかったです。
馬琴の実話の部分がとてもよくできたが、【実】と【虚】が交差する、その【交差】の繋がりが特になく、普通に2つ別々の作品が交替しながら上映されてる感じでした。別々のパートを一つの作品として繋がる所をもっと工夫して欲しかった。
人が観たい物により、評価が割れる作品だと思います。
全329件中、201~220件目を表示