劇場公開日 2024年10月25日

「幾つか気にはなるけれど…」八犬伝 おとっつぁんアルファさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0幾つか気にはなるけれど…

2024年11月23日
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大変面白かった。八犬伝中の見せ場、例えば芳流閣の戦いや、名刀村雨の奪い合い、犬村大角の化け猫退治などはキチンと織り込められていて、物語が“虚”と“実”の間を行き来しながら、それぞれに破綻することもなく、一気に見られる。何度も見直したいと思った。
ただ、何度も見直したいのは、作品の面白さだけではない。“虚”の主役である犬塚信乃の渡邊圭佑ははあの美丈夫だから、すぐ見分けがつく。犬坂毛乃の板垣李光人は女と見紛うばかりの美貌だから、これも良い。犬飼現八の水上恒司はヒゲ面で、誰かわからなかった。犬山道節の上杉柊平もヒゲ面。犬川荘助の鈴木仁、犬田小文吾の佳久創、犬村一角の松村広大は、プロフィールを見て“あっ、あの人か!」と分かるくらいの知名度で、その上顔が汚れている場面が多く、判別がしづらい。犬江親兵衛の藤岡真威人は、あまりに出番が少なすぎる。
玉梓の栗山千明はピッタリだったが、最後の戦いの時、“呪いの炎”というCGではなく、キチンと顔を見せて欲しかった。
CGと言えば、八房はCGでなく.本物の犬でやって欲しかった。それにあの解釈では“妖犬”扱いで、“里見家を守る守り神”とするのが正解だと思う。心配した土屋太鳳の伏姫は、ちゃんとお姫様然としていて、良いキャスティングだと思った。丶大法師も名前は忘れたが、いいキャストだった。浜路に河合優美をアテたのはちょっと驚いた。
“実”の部分、滝沢馬琴の役所広司、北斎役の内野聖陽が、作品の重しになって、南北役の立川談春との掛け合いも、作品のテーマを語っているようで、“虚”と“実”、“裏”と“表”のバランスがとても良い。悪妻として知られる馬琴の妻・お百を演じた寺島しのぶ、きっとこういう人だったんだな、と思わせる。
一人だけミスキャスト、と思うのは宗白役の磯村優斗で、病弱な馬琴の子より、八犬士の一人として活躍して欲しかった。
あの長大な物語を、どう映画化するのか楽しみだったが、とてもバランスの良い、再見再々見にも耐えられるような、まとまった作品だと思う。次見る時は、誰が誰だか、注意して見よう。

おとっつぁんアルファ