劇場公開日 2024年10月25日

「誰もが痛快な虚を見たいがそれだけでは成立させてくれない現代よ」八犬伝 たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5誰もが痛快な虚を見たいがそれだけでは成立させてくれない現代よ

2024年11月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

幸せ

名作「ピンポン」でデビューした曽利文彦は1964年生まれで1973年から始まったNHKの人形劇「新八犬伝」は小学校3~6年のドンピシャ世代なのだろう。「ゴジラ-1.0」の山崎貴も同世代でやはりこれをやりたかったと語っており辻村ジュサブローのワイヤーもろばれ人形劇ファンタジーを最新VFXでどう見せてくれるのかが最大の関心事であった。そして予告編にも使われている伏姫の着物を咥えて引っ張るモフモフの八房が素晴らしくそこにこの映画の本領を見た。ゴジラは実在しないからリアルなのだけれどちょっと大きい犬は誰もが見て知っているのでここのCGが一番難しいと思うのだ。ピンポンの球をCGで描いたようにそのものを見世物にしない(観客に意識させない)VFXが曽根監督の持ち味で、根底に流れている大阪人気質のユーモアも合わせて好感度が高い。滝沢馬琴と鶴屋南北の奈落での「虚実」論争がそのまま映画制作に懸ける監督自身のメインテーマと合致しており水面下で必死に足をバタバタさせながらもスマートに一級のエンターテインメント作品に仕上げた力量に拍手!観ていて気付いたのは滝沢馬琴は剣士と犬士を掛けていたのか!ということである。

たあちゃん