「2時間半では描き切れない」八犬伝 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
2時間半では描き切れない
八犬伝といえば真っ先にかつての連続人形劇を思い浮かべるが、本作は山田風太郎原作の八犬伝を映画化したものだということを、観終わってから知った。
八犬伝の物語の映像化以上に、作者である馬琴の姿を描くことに力点をおいていて、奥行きが深い。しかし、ただでさえ長大な物語である八犬伝のダイジェストに、創作者の想いや苦悩、当時の文人たちとの交流まで取り込むので、2時間半では描き切れないだけのボリューム感。興味深い題材、視点であるだけに、展開が駆け足で、一つ一つのエピソードの描写が薄くなっているのが残念。
律儀な馬琴と豪放な北斎の交友が見どころの一つだが、最も面白かったのは、奈落での鶴屋南北とのやり取り。全体のバランスからすると端折ってもいいくらいのところだが、あのシーンの特別な濃密さには、作り手の想いが込められている気がした。
出演者では、主演の役所広司以上に内野聖陽が役柄の良さもあって好印象。河合優実、磯村勇斗といった旬の役者も出ているが、あまり見せ場はなかった。歌舞伎シーンはしっかり撮っていて良かった。
観た映画館のせいか、音響がすっきりしていなくて、ところどころセリフが聞き取りづらかったのも残念。
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