「観客を飽きさせない虚と実の描写」八犬伝 あおねるさんの映画レビュー(感想・評価)
観客を飽きさせない虚と実の描写
この長い歴史の中で八犬伝を舞台にした作品がいくつも制作されていることは知っていて、観たことがあるものもいくつかありました。
自分が生まれる前の作品ばかりですが、特に有名なものや祖父母に教えてもらったものは幼少期に観ていました。
過去に馬琴先生の人生も織り交ぜて制作されたものはあったのでしょうか。
勉強不足で至らない部分がありながらも鑑賞しました。
正直なところファンタジーの要素は面白くても、実の部分である馬琴先生と北斎先生のシーンは飽きてしまうのではないかと思っていました。
しかしそれは杞憂でした。一瞬でも飽きてしまうのではないかと思った自分を叱りたいです。
アクションの多い八犬士と比べ、動きの少ない馬琴先生と北斎先生のお芝居は大変苦労されたと、役所さんと内野さんが仰っているのを拝見しました。
確かに馬琴先生はほとんど動かないため、北斎先生が少し体制を変えたり移動したりしないと同じ画になってしまうんですよね。
ほんの少しのコメディ要素を取り入れつつ飽きさせることのなかったお二人には感服です。
また、八犬士を演じられた皆さんの躍動感には最後まで魅了されました。
存じ上げない方も何人かいて申し訳なかったのですが、それぞれ味があって素敵でした。
個人的には定正役の塩野さんのお名前がビラに記載されていなかったことが残念でした。
というのも迫力と眼力で圧倒する素晴らしいお芝居だったからです。
曲亭馬琴という人間の生き様に最後は涙しました。
逆境や困難に飲み込まれ一度は挫けても、生涯諦めない心を学びました。