「ダイジェスト的ではあったけど満足感あり」八犬伝 romiさんの映画レビュー(感想・評価)
ダイジェスト的ではあったけど満足感あり
【虚】南総里見八犬伝のストーリーと【実】滝沢馬琴の人生、両方やるのに上映時間150分、かなりの詰め込みが予想されて、
八犬伝部分はダイジェスト版、馬琴部分は中途半端になってるんだろうなと思いつつ鑑賞。
八犬伝は大昔に読んだので全体の流れは把握しているものの、細かい内容はさすがに忘れていた。それを思い返しつつ、再現部分を楽しく鑑賞。予想通りキャラクターの掘り下げは浅めでストーリー展開も飛躍ありつつのダイジェスト版ではあったものの、八犬伝の魅力を知るには充分だった。
悲劇の姫君、八つの宝玉の力に呼ばれ集まる八人の剣士、ハラハラする戦闘シーン、仲間、運命、友情、勇気、戦い、勝利。江戸時代にこんながっつり本格派ファンタジーかつ王道少年漫画みたいな作品が書かれ、大衆に人気だったなんて、改めて考えても感慨深い。
学生時代とくに日本史や古典が好きで力を入れててまだ覚えてたので、鶴屋南北やら渡辺崋山やら出てきたときすぐに理解でき、あのころ勉強がんばってよかった〜と謎の自己肯定感が生まれた(笑)
でも、八犬伝部分よりも、馬琴の物語が印象に残った。
しっかり髷結って、いつもきちんとした格好で、生真面目で子育て頑張ってて、頭固そうで「戯作を書くのは生活のため」な偏屈な馬琴。
ざんばら頭に汚いラフな格好、駕籠は嫌いでどこまでも歩き、子どもは放任、「絵を描くのは絵が好きだから」な自由人で変人な北斎。
なんで仲良くなったんだろう(笑)な二人だけど、やっぱり芸術を愛する、創作に人生を捧げるという共通点があるからなんだろう。どんなに性格が正反対でも、信じる道が同じなら理解しあえる。ここもまた王道な少年漫画チック。
でもそれだけでなく、天才作家を支える周囲の献身、我が子を看取るという最大の悲しみ、老いや衰えや病と戦いながらも最期の仕事に全力を注ぐ姿は、ホームドラマでもあり大河ドラマでもあり。
もちろん、とんでもない分量の内容を含んでいるだけに虚も実もダイジェスト的ではあったものの、満足感のある映画だった。
大人から子供まで楽しめる娯楽大作に仕上がっていたと思います。