「この作品で『南総里見八犬伝』を期待してはいけない」八犬伝 LEEさんの映画レビュー(感想・評価)
この作品で『南総里見八犬伝』を期待してはいけない
この曽利監督の『八犬伝』は戯作家としての生涯を貫いた滝沢馬琴のドラマだ。
深作監督版の『里見八犬伝』のような作品とはコンセプト自体が違う。
本作のメインは日本のファンタジー連載小説の原点とも言える『南総里見八犬伝』を生涯を懸けて書き上げた馬琴とその家族のドラマだ。
戯作である『南総里見八犬伝』はその大筋を紹介するのみに割り切られているため、劇中劇で有る戦闘シーン等はあくまでビジュアル的なアクションの見せ場に過ぎない。
観客が楽しむべきは、けっして楽ではない実生活を送りながら、自身の信じる理想を虚の中で書き続けた馬琴の葛藤と苦悩の人生を見届ける事。
個人的には滝沢家の嫁であるお路さんの存在に拍手を送りたい。
特にラストのテロップには胸が熱くなった。
彼女がいなければ『南総里見八犬伝』は未完の作品として、今のような形では後世に残らなかっただろうし、当然だが深作版の映画も、その他多くの二次創作小説や漫画も出来てはいなかっただろう。
そう思わせる良いラストだった。
また、映画としては馬琴の家族のドラマがメインなのだが、関連グッズのほとんどが八犬士たちのビジュアルである点でも『八犬伝』と言う作品は元来、明らかにキャラクター作品だったのだろう。
その意味で、やはり現在まで脈々と続く日本のファンタジー作品の原点なのだと再認識させられた。
はじめまして、みかずきです
共感ありがとうございます
通常、我々は物語だけを鑑賞しています。
しかし、本作では物語の作者である滝沢馬琴の信念&生き様も描いているので、作者の想いと物語が融合して、従来作品では味わえない深い感動に浸ることができました。深みのある作品でした。
ー以上ー