「虚と実、動と静」八犬伝 TSさんの映画レビュー(感想・評価)
虚と実、動と静
現実と虚構が入り乱れた作品、150分の尺から「大丈夫か?」という一抹の不安があった。しかし、推しの役所広司が主演となれば、観ないわけにはいかない。というわけで、おっかなびっくりで初日のレイトショーへ行ってきた。
鑑賞し終わって最初に感じたことは、150分があっという間だったということ。
つまり、それだけ作品に没入できた。実と虚の世界の時間配分のバランスがよく、違和感なく、自然に見ることができたからだと思う。
推しの役所広司(馬琴)の演技はやはり流石。言うことなし。
内野聖陽の北斎も、内野らしさ、北斎らしさ、が出ていて、二人の掛け合いがよかった。
実のパートでのクライマックスは、中盤の鶴屋南北(立川談春)と馬琴の問答だったように思う。実と虚、正義と悪をどう描くかの問答だったが、大衆文芸である偽作、歌舞伎にそれぞれメッセージを込める二人の創作者としての矜持がぶつかり合う場面だった。ここ見どころ!(南北が終始天地逆さまで話し続けるのは、馬琴と真反対の考えを持っているということのメタファーかな)
虚のパートは、ダイジェスト的にまとめないと実のパートの邪魔になるので、かなりの中途半端感は否めない。いや、それでも、よく1本の映画にまとめたものだと思った。
実のパートが動きがない「静」の映画とすると、虚のパートは完全に「動」。実と虚、静と動。相反するものを1つにまとめた制作陣の手腕はすごい。
ただ、全編通して馬琴の執念は伝わってきたが、残念ながら心を揺さぶるものがなかった。馬琴が失明してお路(黒木華)が代筆して作品を完結させる場面や、八剣士が玉梓(栗山千明)と戦う場面なども、平板な印象で、観る者の心を動かすような演出・演技ではなかった(わざとそうしたのかもしれないが)。
豪華俳優陣の力が十分発揮されていないように感じたのが残念(下記に簡単な感想を)。
※栗山千明はやっぱりダークな役が似合うと思います。
※河合優実どんだけ働いてるの?
※板垣李光人はやばいわ。誑かされそうになった。
※寺島しのぶは、めちゃくちゃいい味出てました。
(2024年映画館鑑賞29作目)
共感ありがとうございます。
曲亭先生が役所さんの上品さに屈していた印象がちょっと有りました。河合さん姫君? 意外と合ってましたが、五の姫なのに一人っ子みたい。