「【"実の世界の報われなき己の人生を糧に、虚の世界で勧善懲悪を貫く日本最古の伝奇小説を不撓不屈の心で作り上げた男とその家族の物語。”VFX多用の虚の世界と、実の世界の対比が面白き作品でもある。】」八犬伝 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"実の世界の報われなき己の人生を糧に、虚の世界で勧善懲悪を貫く日本最古の伝奇小説を不撓不屈の心で作り上げた男とその家族の物語。”VFX多用の虚の世界と、実の世界の対比が面白き作品でもある。】
ー エンドロールでも流れたが、曲亭(滝沢)馬琴の「南総里見八犬伝」は、28年の歳月を掛けてナント、全98巻に渡り描かれた日本最古の伝奇小説である。
今作は、そのエッセンスを書き出した山田風太郎の「八犬傳」が原作である。
因みに私はNHKの辻村ジュサブローによる人形美術が素晴しい人形劇で八犬伝を知り、その面白さにのめり込んだモノである。”♬ジンギレーチ、チューシン、コーテー。いざとなったら玉を出せ!力が溢れる、不思議な玉を。♬”今でも歌えるよ!そして、怨霊珠姫の姿は、チビッ子NOBUにとってはトラウマ級の怖さでありました。(だが、後年辻村ジュサブローの素晴らしい人形に、少し嵌まったなあ。)-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・物語は、曲亭馬琴(役所広司)が、友人の絵師葛飾北斎(内野聖陽)に「八犬伝」のアイディアを話し、北斎がそのイメージをササっと紙に描く”実の世界”と、「南総里見八犬伝」のVFXを多用した”虚”の世界とが、交互に描かれて行く。
・”実の世界”では、馬琴は妻(寺島しのぶ)から家業を継がずに、文筆業に明け暮れている事をブツブツ言われ、果ては医者になる事を望んでいた素直なる息子、宗伯(磯村勇斗)を病で失い、悲嘆に暮れるのである。
■ある日、馬琴は北斎と共に、鶴屋南北(立川談春)の催す”赤穂浪士”の舞台を見に行くが、その舞台は途中に”四谷怪談”が織り込まれる”赤穂浪士”の善なる行為を否定する様な内容だった。
私は、このシーンはこの作品の胆ではないかと思ったのである。何故ならば、【正しき者が報われないこの世で、”八犬伝”のような勧善懲悪の物語を書く意味があるのか】と言う事を馬琴が考えるきっかけになったシーンではないかと、思ったからである。
確かに現在でも、南北が”舞台の奈落の底”で言うように、善人が報われるとは限らない。
けれども、だからこそ、馬琴は”虚の世界”で、【正義が勝ち、善が報われる世界】を作り上げたかったのではないか、と思ったからである。
・「南総里見八犬伝」は、伏姫(土屋太鳳)が首に付けていた八つの玉(仁・義・礼・智・忠・信・考・悌)を持つ八犬士が不思議な因縁で出会って行く過程や、里見義実の逆臣の妻玉梓(栗山千秋)を一度は許そうとするも斬首にした事で”子孫まで呪ってやる!”と悪霊と化した彼女と戦う八犬士たちの姿がハラハラドキドキの勧善懲悪ストーリーとして描かれている、とても面白い伝奇小説なのである。
・但し、この映画では八犬伝が長すぎる故に、初めて観た人は”虚の世界のパートの面白さが、分かったのかな。”と思ったのも事実である。
少し、残念に思ったかな。
<馬琴は両目の視力を失い、妻も失いながらも、宗伯の妻おみち(黒木華)に字を教えながら、見事に「南総里見八犬伝」を書き上げるのである。
馬琴は、”実の世界”では報われ無き事の多い中、”虚の世界”で、世界に名だたる勧善懲悪の伝奇小説を見事に描き出したのである。>
■鑑賞後に思ったのだが、今作のVFXシーンを観ると「南総里見八犬伝」のみを前後編併せて4時間で映画化したら、大ヒットするのではないかなあ、と思ったのである。
”山崎貴監督、白組総動員で製作されては、如何でしょうか!”
南総里見八犬伝は八犬士が揃うまでの
前半の主人公が信乃、後半を親兵衛が担いますがこの親兵衛編がダラダラしますので、この揃ったら即決戦の方がよかったと思います。