「ある一生だけど、普通の一生ではない。」ある一生 sokenbiteaさんの映画レビュー(感想・評価)
ある一生だけど、普通の一生ではない。
ある名もない男の一生、ではあるのだけど、これは普通の一生だろうか?
全然普通ではではない、というのが自分の考えです。
この主人公全然当たり前の男ではないと思う。
何故なら圧倒的に詩人だから。
朴訥とした語り口なんだけど、語る言葉全てが詩になってる。
そしてその詩情に支えられて、自分の中の大切さなものを守って生きていくことができた。
そういう人だと思う。
その詩人の心なしに、ただ真面目に生きてればこんな一生になるなんてのは大きな間違いで、その辺の市井の人が普通にやってたって、こんなふうに生きれないと思う。
だから憧れる。
奥さんがまた、それを上回る詩人なのが面白い。
二人で一緒に住もうという部屋を、ここをこうして、こんなふうにして、と男が訥々と騙る場面で、「口数が多い人ね」なんてことを言うのです。
全然口数多くないでしょうが!(笑)
奥さんの方がさらに上手なんですよね。
心の中に豊な詩情が溢れていて、言葉すら必要としないような詩人。
そんな二人が一緒になれたなら、それは人生を生きる意味にだってなるでしょう。
これが平凡だなんてとんでもない。
奇跡みたいなもんでしょう。
自分にはとても無理だけど、憧れるなー。
でもそもそも体格が違うし(笑)。
このどっしりとした揺るぎない生き様は、欧州人のあの体の質量あってこそのような気がする。
とにかく、全然あくせくしてないし。
あくせくしっぱなしの自分の生活を顧みて、、心の中にいつも詩を持てとまでは言わんけど、もうちょっとなんとかならんかなあ、と思わされました。
アルプスの山々の美しい景色と、詩情豊かな台詞に彩られた、静かだけど強く深く心に染みてくる映画です。
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