「一人で居るのは孤独でもないし寂しくもない」ある一生 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
一人で居るのは孤独でもないし寂しくもない
でも、大切な人と出会いその人を失ったら寂しさと孤独を感じるだろう。「愛するマリーへ」で始まる小さい文字で書かれた手紙は、40年後に雪の中から見つかるだろうか。
遠い親戚に預けられた時からアンドレアスの目の光は強かった。神へ祈りをささげながら小さいアンドレアスに暴力をふり続けてきた養父の背丈を超えた彼はもう恐れない。唯一彼を大切にしてくれたおばあちゃん(『バグダッド・カフェ』のゼーゲブレヒト!)の死と共に一人の生活を始めるアンドレアス。自分の頭を超えたら、が人生の転機になっていく。家庭菜園のセロリがもう自分の頭を超える程大きくなったんだよと、愛するマリーに話しかける彼は輝いていた。寡黙な彼がたくさん話すのはマリーとだけだった。マリーに綴る手紙に、年をとったから背中が丸まって自分の頭より高くなりそうだと書いたアンドレアスはマリーが居なくてもマリーと一緒に年をとる幸せな人生を送った。
山は雪や風で人間を痛めつけるが、時間によって変わる山の色や涼気は人間の気持ちをひきしめて饒舌を諫め黙々と歩き考える世界に導いてくれる。
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Mさんのコメント
2024年8月29日
「自分の頭を超えたら」
そんな視点では、まったく考えてもいなかったので、
なるほどと思いながら読みました。
「マリーが居なくてもマリーと一緒に年を取る幸せな人生を送った」という見方は彼の人生を肯定的に見ていて、なんかよかったです。
私も彼の人生を否定的には見ていなかったのですが、何かそう考えた理由が見つかったような気がしました。