ある一生のレビュー・感想・評価
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名もなき男の弛まぬ生き様が切々と訴えかけてくるもの
彼は何か巨大なことを成した偉人でもなければ、陰ながら歴史を支えた功労者というわけでもない。ひとつの人生を打算なく、ただひたすら必死に生き抜いた男だ。本作は、時代という縮尺で人生を推し量るのではなく、むしろ彼の生涯を通じて激動の時代そのものを見つめていく。悲しみや苦しみはあった。神が与えた試練、時に無慈悲に奪い去られたものも大きかった。しかし彼は天を罵倒したりせず、ただひたすら前を向き、傷つきながらも歩みを進め、妻への手紙を書き綴る。その生き様を見る限り「悔い」など何一つないのだろう。真っ直ぐな目線に突き動かされるかのように、観ている我々も自らの生き方を省みたくなるような問いかけが、この荘厳な力作には無言のうちに込められているように感じた。背景を彩るアルプスの風景(人生のメタファー)が厳しくも雄大で美しい。作品のところどころに映し出される十字架もまた、彼を見守る道標のように崇高な印象を残す。
ある一生だけど、普通の一生ではない。
ある名もない男の一生、ではあるのだけど、これは普通の一生だろうか?
全然普通ではではない、というのが自分の考えです。
この主人公全然当たり前の男ではないと思う。
何故なら圧倒的に詩人だから。
朴訥とした語り口なんだけど、語る言葉全てが詩になってる。
そしてその詩情に支えられて、自分の中の大切さなものを守って生きていくことができた。
そういう人だと思う。
その詩人の心なしに、ただ真面目に生きてればこんな一生になるなんてのは大きな間違いで、その辺の市井の人が普通にやってたって、こんなふうに生きれないと思う。
だから憧れる。
奥さんがまた、それを上回る詩人なのが面白い。
二人で一緒に住もうという部屋を、ここをこうして、こんなふうにして、と男が訥々と騙る場面で、「口数が多い人ね」なんてことを言うのです。
全然口数多くないでしょうが!(笑)
奥さんの方がさらに上手なんですよね。
心の中に豊な詩情が溢れていて、言葉すら必要としないような詩人。
そんな二人が一緒になれたなら、それは人生を生きる意味にだってなるでしょう。
これが平凡だなんてとんでもない。
奇跡みたいなもんでしょう。
自分にはとても無理だけど、憧れるなー。
でもそもそも体格が違うし(笑)。
このどっしりとした揺るぎない生き様は、欧州人のあの体の質量あってこそのような気がする。
とにかく、全然あくせくしてないし。
あくせくしっぱなしの自分の生活を顧みて、、心の中にいつも詩を持てとまでは言わんけど、もうちょっとなんとかならんかなあ、と思わされました。
アルプスの山々の美しい景色と、詩情豊かな台詞に彩られた、静かだけど強く深く心に染みてくる映画です。
一人の一生を通して「生きる」ことを問う作品
主人公アンドレアス・エッガーの人生を通して
「生きる」ことを問うている作品だと感じました。
幼少の頃から養父へ預けられ、
その養父から虐げられながら青年になっていくアンドレアス。
1900年代の初頭ということもあって、非常に酷い、足を骨折させるほど激しい体罰。
こういう環境で育ったせいか、アンドレアスは「生きる」ことに懸命だと思いました。
仕事を懸命にやってお金をため、徐々に自立していき、
その最中出会ったマリーと出会い結婚し束の間の幸せを感じているところに、
雪崩という不幸に見舞われ最愛のマリーを亡くしてしまう。
その後のアンドレアスは、マリーに手紙を書き、棺桶に入れ続けることで
マリーとの繋がりを感じながら生きているんですよね。
それでも生きていく。そこに「生きる」ということは何なのかを私も考えてしまいました。
彼は死の間際までマリーを想って手紙を書く。この強い思いは心に刺さるものがありました。
老人になったアンドレアスが養父の亡骸に対面する(対面すること自体40年ぶり)シーンでは
彼を赦したようにも見えました。
晩年になると達観もするのでしょうか。
もちろん、無為に時を過ごしたわけではなく、仕事や大事な人を亡くしたり戦争(ソ連の捕虜になったり)を経ての
ことだと思います。
とても深遠な作品で、アンドレアスの生き様もさることながら、
オーストリア・アルプスの圧巻のスケール・景色とも相まって、実に味わい深い作品になっていると思います。
観客も思った以上に入っていて、うれしかったですね。
孤児となった少年の壮絶な一生
1900年頃のオーストリアで、母が死に孤児となった8歳の少年アンドレアスは、アルプスの渓谷に住む母方の親戚クランツシュトッカーの農場へ連れてこられた。農場主にとってアンドレアスはタダで使える奴隷の様な存在で、家の子供たちと一緒に食事も出来ず、学校にも通わせてもらえず、虐げられ、虐待を受け、脚を棒で殴られ骨折し、その後遺症でまともに歩けなくなってしまった。そんな暮らしの中で、心の支えは老婆アーンルだけだったが、そんなアーンルが亡くなると、成人していたアンドレアスは農場で我慢する必要はないと思い、そこを出て日雇い労働者としてひとりで生活する様になった。やがてロープウェーの建設作業員となった彼は最愛の女性マリーと出会い、山奥の小屋で幸せな結婚生活を送り始めた。しかし・・・てな話。
オーストラリア・アルプスの山々が美しかった。
あの美しい景色を見られるだけでもお金を払う価値が有ると思った。
あんなに虐待されてたのに反抗しなかったのはアーンルと離れたく無かったからなんだな、ってほろっとした。
マリーはそんなに美しい?とは思ったけど、山で出会うとそんなるかなぁ、とわかる気もする。
この男の一生をどう思うか、うーん、難しい。
ほとんど良かったと思える時期はなく、苦しいだけの人生の様に見えた。でも、マリーへの想いをずっと持ち続け、それが幸せだった様にも見えた。
マリーの埋められた棺の隣に埋めてもらえたのは幸せだったのだろう。
最後頃に下半身が無い遺体が発見されたシーンが有ったけど、あれは元農場主でいいんだよね?
アンドレアスの青年期を演じたシュテファン・ゴルスキーがかなりのイケメンだった。
彼の人生をどう思うかは
たぶん人によるのだろう。
今までいろいろなドラマや映画で、キスのシーンを見てきたが、自分にとっては、とても心に残るシーンになった。(ひょっとしたら一番)
今までロープウェイに乗っても、それを造った人たちのことを考えたことがなかったが、これからは考えることができそう。
何処にでも在る或る一生
貧困があり、戦争があり、愛しい出会いがあり、哀しい別れがあり、特に偉業を成し遂げた訳でなく奇跡の様な出来事があった訳でもないこんな人生は、20世紀オーストリアには、いや世界中に無数にあり、そのお墓を訪れる人も今はなく苔むしているのでしょう。語るほどの事もないそんな物語こそ語られるべきなのだと気付かせてくれるお話でした。これから先に続く道よりこれまで歩いて来た道の方が遥かに長いに違いないこの歳になると堪える映画でした。
名も無き男の波乱に満ちた生涯。何も語らず黙々と地道に働き続ける姿が本当にいい。
名も無き男の波乱に満ちた生涯。
ほとんど共通点も無いのに自分を重ねているようで感動する。
本当につらい幼少期からさらに過酷な現実をいくつも経験しながらも、
終始、何も語らず黙々と地道に働き続ける姿が本当にいい。
そんな中で、ヤギ飼い(ヤギハネス)との不思議な関わり合い、意外な再会も面白い。
ずいぶんよごれちまった
と思いましたね。
学校の先生のおばちゃん可哀想でした。
貰いっ子に優しいおばあちゃん😭
おばあちゃん子の彼には無理だったのかも。
山が好きなんですね。山しかない。
一途な山男の映画はテレンス・マリック監督の名もなき生涯やフェリックス・ヴァン・フルーニンゲン&シャルロッテ・ファンデルメールシュ監督の帰れない山を思い出していました。
若くしてなくなったマリーと子供の墓に手紙を入れてゆくエッガー。
マリー役の女優さんのメイクすごかったなぁ。
テンポよく展開します。
突然の雪崩はちょっとちょっとと思いましたよ。
氷河までたどり着いた瀕死のおじいさんが40年経って見つかるのは温暖化?
姥捨山の背負子から落ちたおじいさんの逃げ足の速いこと速いことw
山々はどことなく穂高から槍ヶ岳に似ていた。あのトンネルの感じも上高地に行く途中の白骨温泉あたりみたいだった。
名もなき伝説
ベストセラー小説の映画化って事ですが、原作は未読の為どれだけアレンジしてるのか分からないけど、
真面目な作風で静かめ暗め、けっこう淡々としてるので、眠くなる眠くなる(笑)
劇場は、お年を召した方が多かったですが、あまり若い人には響かないんじゃないかな。
女性視点だと、素敵♪と感じるシーンが若干あると思うんですけどね。
最後まで観て、最終的には良かったけど、真面目な作風の堅さ重さが気になって、気軽に2回目を観ようと思えない感じ。
いい映画なんでしょうけど…
津田健次郎似のお兄さん
トンデモナイ映画だったな(良い意味で)
最初は苦手めな胸糞映画かと思って“あ〜やっちまったかな〜”と少し後悔したけど、ただの胸糞映画ではないのでご安心を!!(←わたしのよぉに苦手な方に向けてのメッセージ)
人生、山あり谷あり。
でもエッガーの人生は谷時間、いやもはや盆地時間長すぎないか!?
だからこそどれだけ辛くても諦めないエッガーに向けて気付けば全力でエールを送ってるし、人生が変わる潮目ってのは一瞬だったりするから改めて今目の前にある幸せの尊さを思い出させてくれたり、今が人生ダウナー傾向にあるな~と感じていたとしてもそれが永遠に続くわけてはないと思わせてくれる作品。
内容は置いといたとしても、雄大な自然美を見るだけでも美しい。そして大自然の音に耳を傾けるのも心落ち着く。でもやたらと胸をかき乱すコツコツ“足音”が響く。
気になったのは以下の2点👇️
◯クランツ・シュトッカー、エッガーが去るときなぜ涙を浮かべた??
◯マリーの白いワンピース、透けすぎ……
この映画は、私たちを映す鏡だ!
アンドレアス・エッガーと言う男の一生を、3人の俳優が演じている。
三つのトピックがある。
20世紀のはじめ、アルプスのふもとのオーストリアの村に、お金でもらわれてきた当時4歳のエッガー(イバン・グスタフィク)。農場を営むクランツ・シュトッカ―は、義妹の(たぶん)私生児のエッガーを、外的には養子だが、実際にはただの働き手として扱い、表面上キリスト教を信奉していることもあって、家族の手前、つらく当たり、ろくな教育も与えないまま、苛め抜く。味方してくれるのは、義理の祖母のアーンルのみ。
18歳になって、立派な若者に成長し、耐えきれなくなったエッガー(シュテファン・ゴルスキー)は、家を出て、日雇いの仕事でお金をため、標高の高い土地付きの山小屋を手に入れる。折しも、ロープウェイの建設の話が持ち込まれ、仕事熱心なエッガー大活躍する。村の居酒屋の手伝いに来ていたマリー(フランス語読みだった)と知りあい、結ばれる。しかし、幸せも長くは続かない。40歳台だったのに、ナチの徴兵にあい、敗色濃厚の東部戦線(コーカサス)に送り込まれる。
敗戦後、ソ連で6年間の捕虜生活の後、エッガー(アウグスト・ツィルナー)は、やっとの思いで元の村に戻るが、既に、観光の村になろうとしていた。農家の手伝いをするくらいで、居場所を見出すことは大変、難しかったが、たまたま知りあったベテラン教師の女性アンナ・ホラー(マリア・ホーフステッター)に、「本物の食欲を持った、本物の男」と称賛される。
この映画を観ていて、ハンス・シュタインビッヒラー監督の言う通り、この映画は、観ている自分を映している「鏡」だと思った。この映画を観た人は、若い人も、中年の人も、高齢者も、それぞれに自分の悩んでいることや、自分の姿に気付くことになるだろう。とても、エッガーのように、口数も少なく、質朴に生き抜くことなんてできそうもないが。彼は、身体も頑丈で、いじめや事故で、けがも多かった。それにしても、マリーに口数が多いと言われたのは、本当におかしかった。もしかしたら、何度も手紙に出てきた Liebe Marie は「マリー様」かもしれないけれど。いつまでも、心に残る映画だ!
見応えあり
久しぶりに映画館で見た方がいいとおすすめできる映画
アルプスの雄大な景色に決して幸せには思えない人生を歩んだ男性の一生を描いている
幸せには見えないが、果たしてそうなのか?ふと考えてみる
少年期の養子としての境遇や養父からの虐待
孤独な青年期に巡り会えた女性との結婚や妊娠でやっとこれから手に入れようとした生活が叶わなくなり失意のまま人生を過ごしていく
老年になって巡り会えた女性にもその寂しさを分つこともなく死んでいった人生を
第三者は不幸せと思いがちだけど、最後まで生き抜いて一人の女性を愛し抜いた人の気持ちはその人にしかわからない
自分で他人の人生と比べて幸せ、不幸せと判断することが出来るけど
自分の人生の価値なんて所詮、他人には評価することは出来ない
何度も死生観が語られたり、生まれたときから死に向かっている、誰もが最後は死ぬ
死を前に、彼が語ったように叶わなかった夢や希望もあった人生は誰にも訪れるのだろうと思った 愛する人がいてもいずれ一人になる瞬間がくる そのとき彼のように天寿を全うすることが出来るのか
原作も機会があれば是非読んでみたいな
春の温かさ、冬の厳しさ
時代は変わっても自然の美しさは不変である。それを山から離れるとより強く感じた。
山々は命を奪う側面もあれば、新たな命を芽吹かせる面もある。それを一生のうちに知ることができるのは、山に生きる人々だけであろう。
予告編は見ていない
ポスターだけを見て何か面白そうかも?と思って鑑賞。アルプスの景色は綺麗でした。
主人公の生い立ちが哀れで幼い頃から理不尽な虐待を受けていたが妻をめとり幸せになるかと思いきや、更に不幸になっていくという話し。
映画と観客の関係って、人間と神様の関係性に似ていて映画の主人公がどれだけ足掻いても、神様の観客は手を差し伸べる事はできずただ眺める事しか出来ない。
さぁ、その足掻きっぷりなんだけど主人公が熱演しているんだけど何か面白くないんだよな?これだけ不幸な目にあっているんですよ?可哀想でしょ?とメッセージは伝わるんだけど。原作はベストセラーだそうだから、そっちは面白いのでしょうか。イマイチ、楽しめない映画でした。
この映画は「生きることを疑わない強さでできている」鑑賞5時間後に気づく
(以前も書きましたが、映画の設定・ストーリーには全く言及しませんので、公式サイトをご覧頂きたくお願い致します。)
「ある一生」のエンドロールを見ながら、「自分には受け止めきれなかったな…」とぼんやり感じていました。そして、無性にコーヒーを飲みたくなりました。多分、この映画をアタマとカラダで再認識・再確認したかったのだと思います。
帰宅途中、帰宅後も潜在的にこの映画のことを考えている自分に気付いていました。
鑑賞後いくつか「ある一生」についてのインタビューやコメント…などを読んだのですが、「そうなのかな…」としっくりこない自分がいました。
ある有力なコメントは、現代人との対比で書かれており、「その着眼点であれば、私は現代人に該当しない。だから何か明確なメッセージを感じられない、目に見える気づきを得られなかったのか…」と…。(30歳代以下の方向けの映画なの?)
鑑賞後5時間が経過し、自分の潜在意識という鍋で煮込み続けたシチューが完成を見たと感じました。「ある一生」は「生きることを疑わない強さでできている」と…思い至りました。
この映画を安っぽく捉えると「人生思うままにいかないが、くさらず生きる」「不遇なことに遭遇しても、くじけず前向きに生きなおす」となってしまうと思います。
しかし、この映画はそうじゃない、そんなことを言いたいのではない。
たしかに、主人公は生まれからにして不遇だし、大きな流れに飲み込まれて不幸が舞い込み、血のにじむような努力で獲得した果実はあっけなく手のひらから零れ落ちる…。
宗教的な考え方を除外すると、人間は、自分の意志で生まれてきたわけではないのだから、死が到来するまで生き続けるのは疑うべくもなく、あまりにも自明である。(慣性の法則として生き続ける)それは人間という生物に組み込まれた本能であるかの如く。
この素朴な、内発的・自然発生的な強さは、主人公が持つものですが、本当は(本来は?)私たち皆が持ち合わせているのではないでしょうか。
この「問いかけ」を感じることが、この映画の価値だと思います。
後半で、生き続けることに苦悩する登場人物が現われますが、まさに主人公との対比として描かれているのだと捉えると、腑に落ちます。
生きることに目的やゴールを設定するから、そのギャップに苦しむのではないでしょうか。
ただ、ひたすらに生きる、その強さ、そして美しさが描かれた映画だと思います。
どごが普通の人生?
幼少期に虐待で一生の障害を負い青年期に妻を雪崩で亡くし、戦争にてソビエトの捕虜なる
その他の部分に置いてもかなり壮絶な人生を全うしてるようにしか思えない
あ、映画はとても感動しました素晴らしい映画ですよ
オーストリア・アルプスの景観が雄大で美しい
オーストリア・アルプスで一生を送った、ひとりの男の物語り。妻との愛の話など、心に訴えかけてくるいい映画だ。
派手な部分はないが、雄大なアルプスの景観には息をのむ。
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