国宝のレビュー・感想・評価
全213件中、181~200件目を表示
うつくしさよりも生々しさが印象的
原作未読、歌舞伎はハマるの怖くて敬遠、だけどべらぼうの横浜流星さんと、PICUの吉沢亮さんのとりあわせに惹かれて鑑賞しました。
公開後初の土曜日朝一の上映回で、150席のシアターがほぼ満席。老若男女、偏りなく来てはる感じでした。
・ほぼ3時間な上映時間はやはり長い…久々に映画で腰が痛くなりました。
それでも尺が足りない大河ドラマなので眠くはなりませんでしたが、原作を端折ってるんだろうなーって脚本の飛躍具合にはところどころ混乱しちゃいました。
・子役で演じる時代の描写が長くて意外に思いましたが、「怪物」が大好きなので、黒川くんの活躍には、おお…!と内心で拍手喝采でした。
・吉沢さんのお顔はひたすら整ってる感がつよいので、黒川くんが育って吉沢さん、ってのがあまりしっくり来てなかったのが、どさ回り時代の喜久雄が屋上で酒瓶呷って踊るあの場面で、急にすとんと腑におちました。幼いころの面影が…!って。
・一番印象的だったのは、紆余曲折を経てからの二人道成寺。
二人揃って一度どん底を味わってからの、蓮の花みたいに絢爛で華やかな舞台が眩しくて。なのに引き映像での美しさよりも、多用される役者のアップでお白粉や口紅の下のなまなましさの方が前面に出てくるところの業の深さというか。
・自身の嗜好的には、悪魔に魂を売って芸を極めていく喜久雄に、名跡も家族も何もかもを奪われていく感のある俊介の悲哀の方がぐっときてしまったのですが。
御曹司のぼんぼんで周囲には愛されていて、それでも本物の役者になりたいと足掻いてしまって、一つの境地に辿りついたかと思ったら舞台に立つための脚も命も奪われていくのほんと残酷で。
横浜さんがインタビューとかでお話になってる重心の高さ、ノーブルな人品のよさが出ていて改めていい役者さんだなあ、と思いましたのこと。
・役者さんでいうと三上愛さん演じる芸妓・藤駒のうつくしさと業がツボ。高畑充希さん演じる春江との関係が昨年の大河での定子と彰子の関係も彷彿とさせられてしまいました。
・総じて、役者のみなさんの演技や衣装やセット、画面のうつくしさや生々しさが興味深かったですが、主題というかストーリー展開には???が多かったので、原作読んでみようかな、と思いました。
うつくしい。
まず出てくる感想は、「傑作だ!」。
本作品、1960年代の長崎から始まり、大阪に舞台を移して2014年のラストまでの約50年間を描く大作。もちろん上映時間も175分と長い。
観る前は、その長さがちょっと不安だったのだが、まったく問題なし。
あっという間の3時間だった。
****
とにかく映像がきれい。特に歌舞伎の舞台を撮った場面は素晴らしい。
この美しい映像がこの作品の肝でしょうね。
そしてその美しい映像に映える吉沢亮のきれいな「顔」。
この作品、吉沢亮でなければ撮れなかっただろうな……
横浜流星も超絶イケメンだけれど、女形の姿では、吉沢亮の存在感が圧倒的。
登場人物のキャラ的には、配役が逆でもよかったのかもしれないが、女形の姿の美しさを見たら納得。素晴らしかった。
そもそも、この作品のテーマの一つは「美しさ」だと思う。
「美しさ」に魅了された人々が紡ぎだす狂おしいまでの物語。
吉沢亮演じる主人公、喜久雄は、実は劇中ほとんど感情の動きを見せない。
彼の感情が大きく動くのは、その尊厳が脅かされるときに示す激しい「怒り」と、「美しさ」に対する強い憧憬だけだ。
それ以外の感情はほとんど描かれない。
彼を突き動かしているのは、「美しさ」に対する強い衝動だけだ。
その衝動が、彼自身と彼に関わる人々の運命を翻弄してしまう。
****
物語の本筋は、吉沢亮と横浜流星が演じる2人の歌舞伎役者の人生をなぞるように進んでいく。
そこに横糸として織り込まれるのが、歌舞伎に関わる女性たちの物語だ。
寺島しのぶ演じる歌舞伎一家のおかみは、歌舞伎役者の妻であり母である立場で、運命の荒波に翻弄される。
この役も、寺島しのぶだからこそ、という快演だった。
おそらくは制作陣が歌舞伎一家の彼女を敢えてキャスティングしたのであろうが、見事に奏功していると思う。
妻であり母である彼女を襲う運命を見事に演じている。素晴らしい出来だ。
また、吉沢亮演じる喜久雄に関わる4人の女性たちも、歌舞伎役者である彼に関わったがゆえの運命の転変に翻弄されていく。
物語の終盤で、数十年ぶりに父である喜久雄に出会った娘のアヤノが口にした言葉がそれを象徴している。
「あなたはどれだけの人々の犠牲のうえに、今の地位に立っているのか」
しかしそれは、「美しさ」で人を魅了するためには避けられないことだった。
だからアヤノは言う。
「でも、歌舞伎役者花井半次郎(喜久雄)の演技を観ると、突き動かされるように全力で拍手を送ってしまう。……お父さん、本当に日本一の歌舞伎役者になったんやね」
****
吉沢亮と横浜流星の少年時代を演じた2人の役者にも触れないわけにはいかない。
黒川想矢と越山敬達だ。
黒川くんは、「怪物」で主人公を演じ、その後も映画やドラマの出演が続く注目俳優。
この映画でも素晴らしい演技を見せていた。
女形の美しさでいえば、吉沢亮に引けを取らない。
末恐ろしい才能だ。
越山くんは、『ぼくのおひさま』で主演を務めた、こちらも注目俳優のひとり。
正直、背が高くなって感じも変わっていたから、同じ人物と気づかず、映画が終わってから調べて初めて分かった。
でも、後から納得。あの瑞々しい演技は得難い才能だ。
ちなみに『ぼくのおひさま』は、昨年観た映画のなかで僕の一押しの映画だ。
****
間違いなく、今年の邦画の1,2を争う傑作だ。
映像美はもちろん、物語も秀逸。
一番のクライマックス、歌舞伎「曽根崎心中」のラストを描いた場面。
自然と涙がこぼれたし、劇中の歌舞伎の観客と一緒に、思わず拍手を送った。
映画を観ることの醍醐味を味わわせてくれる素晴らしい作品です。
至極の超最高傑作! これ以上の作品にはもう出逢えないかも知れない!
(Vol.2)
感じた事が全く書かれていないvol.1を上げて終わったままでスミマセン。
私、病?にて ちょっと横になる羽目に・・・でして。
体調がちょっと戻ったので 続きを。(誰も読んじゃイネェ~ ってか。(;^ω^))
(感じた事)
・圧倒的な歌舞伎の舞台美。緞帳を境に表と裏世界に魅了されます。
そして演目の限りなく華やかで美しい事。見事でたまりません。
・次に予告トレ-ラですね。 ”結局血やん・・・”、ビルの上で悩み踊る喜久雄の姿と、BGMの壮大さ。ここの5秒程みて コレだと思いましたわ。
タイトル ”国宝”って 肩透かしじゃ世間は決して許さない二文字。
非常に作りのセンスが絶妙で良く、掴みは絶大だったと思います。
・チラシは2カット持っており、吉沢さんのカットと、二人道成寺で横浜さんと吉沢さんが向き合ってるカットですね。こちらの向き合ってるカットがとってもイイですね。吉沢さんの右目に朱を入れてるのも 意味アリ気で興味そそります。
・そしてなんと言っても音入れが素晴らしい。
通常歌舞伎の囃子には 大鼓、小鼓、笛〈能管〉、太鼓 など和楽器が全て。その音だけにしてしまうと舞台上の演目は良いのですが、芸人役者の心理心情はこれでは兼ねられない。原摩利彦氏が生み出す音の全てが非常に画にマッチして心地よく観ている側に深く入ってきます。
トレ-ラ見た時に感じた心地よさが本編見てもシッカリとメインで入っており、この点が本作の持つ素晴らしい力点だと感じました。
・主題歌:「Luminance」が上手く心に浸透し エンディングの余韻を創っています。最後に舞台に舞うあの雪。あの景色を喜久雄と一緒に観て そして共に感じる心の流れが 観ている側とシンクロしたと思うのです。その長い長い駆けて来た半生の時間と、たとえ国宝となっても どうする事も出来ない自身から湧き出る淋しさが そこには有ったと感じます。
見事なエンディングを飾る 井口理さんの歌でした。
・喜久雄少年期の 黒川想矢さんですね。何処かで見かけたと?思ったら
映画”怪物”の湊くん。こんなに大きくなっちゃって。しかもイイ男。
彼は頬のホクロと上唇が少し上に反ってる感じが特徴。
確かに 若い時の役は難しかったと思うのですが それに動じる事無く見事に演じ切ってる所がす凄いです。今後の活躍に大いに期待です。
・俊介少年期の 越山敬達さん。彼は映画”夏目アラタの結婚”の刑務所の犯人と文通を遣ってた少年卓斗くんなのですね。
彼も俊介の大事な若い時代の役柄で、父の後を追いかけている姿を立派に演じていたと思いますね。
二人共女形を演技では無くて そのものを遣ってのけていたと思いました。
その意気込みがシッカリ観ている側を十分に魅了していたと思います。
二人共重要な部分だけに配役は良かったと感じます。
・横浜さん演じる息子の花井半弥。映画”正体”で最優秀主演を獲りましたが 私は本当の所あまり良くなかったと感じてました。周りが獲らせてあげたの声があってやっぱりそうなのかと。実は”流浪の月”の彼(中瀬亮役)が好きなんです。あれならあげられるかと。
今作、あの時と同じ監督:李相日さんとでタッグ。
この半弥の難しい心の流れを絶妙に醸し出していたと感じますね。
吉沢さん相手に殴り喧嘩とか。本気で殴ったら吉沢さん顔が吹っ飛んじゃう・・・だからそこはメッチャ手加減でしたね。
決して相手を憎まず裏切らない同志的存在。そして半二郎の息子として その価値観をしっかりと表現出来ていたと思います。
・見事な花井東一郎を演じきった 吉沢亮さんに心から拍手。
凄い凄い~、素晴らしいです。いや それ以上に歌舞伎と言う女形を真正面から激しくぶつかって行ったのが分かります。
今までの出られた作品でもそうでしたが、今作程、非常に魅了された役は無かったと思うのですよ。また一際美しい女形。たまらんですよ。
父を亡くした苦しい少年期から、弟子入りして、初舞台を演じ成功して。
そして運命の代役。三代目に成って行く姿と それらに期待する周囲と同時に囁かれる嫉妬。そして絶望と焦り。
なぜ自分が襲名してしまったのか。血とは何か。あれ程 欲しいと言ったのに。
それを物凄く心の底に感じ取って 激しく傷ついたと思うのですね。
お見事でした。彼に最優秀主演賞を上げたい思いです。
-------------------
(Vol.1)
こんな日が来るとは思わなかった思いです。
総てに於いて本当に素晴らしい~ の一言。
圧巻のアッと言う間の175分でした。凄すぎましたわ。
今日は期待の一作「国宝」の鑑賞です。
感動の波動域がかなり高くずっと続いており、観ているこっちもアドレナリンが出っぱなし。見終わった後も感動域が深すぎて元に戻ってこないです。
観た後に車の運転したんだが、こんな運転ヤバく成るの初めてかも。
映画鑑賞直後は お茶でもして心情が落ち着くまで待った方が良いですネ。
興奮冷めやらずです。
また映画の評価指標は★5までなのに ★6枠いる事態になって
本日以降、評価基準を変えないとイケない事態に突入ですね。
という事で、ハシゴでまだ観る予定作全部キャンセルして
レビュ-書いてます。 (こんなの初めて (。・ω・。) )
原作:吉田修一氏 「国宝」
監督:李相日氏
脚本:奥寺佐渡子氏
---------素晴らしい役者陣------------
・立花喜久雄/(花井東一郎)役:吉沢亮さん
・喜久雄(少年期)役:黒川想矢さん
・立花権五郎役(喜久雄の父、任侠組長で殺される):永瀬正敏さん
・立花マツ役(喜久雄の継母):宮澤エマさん
・彰子役(吾妻千五郎の娘、喜久雄の妻):森七菜さん
・吾妻千五郎役(彰子の父、大物上方歌舞伎役者):中村鴈治郎さん
・藤駒役(京都花街芸妓、喜久雄の愛人):見上愛さん
・綾乃(カメラマン、藤駒と喜久雄の娘)役:
・大垣俊介/(花井半弥)役:横浜流星さん
・俊介(少年期)役:越山敬達さん
・花井半二郎役(俊介の父):渡辺謙さん
・大垣幸子役(俊介の母):寺島しのぶさん
・福田春江役(喜久雄の幼馴染み、俊介の内縁の妻):高畑充希さん
・梅木役(歌舞伎の興行会社三友社長)嶋田久作さん
・竹野役(三友社員):三浦貴大さん
・小野川万菊役(人間国宝の歌舞伎役者):田中泯さん
主題歌:原摩利彦 feat. 井口理 「Luminance」
-------------------
(流れ展開) (注意)※ハッキリネタバレ書いてます
歌舞伎と言えば女形。
この女形を巡って行く 歌舞伎役者の舞台の表裏世界の話。
長崎の新年会の席で、立花喜久雄は出し物の女形を披露し 来ていた花井半二郎の目を惹いた。所がその席で任侠の父が抗争で目の前で殺される。復讐に行くが失敗する喜久雄。一年程は世間とご無沙汰だったが、父の死後行くところは無し。
世話役の人に連れられて来たのは大阪 歌舞伎役者・花井半次郎の家へ。
喜久雄が女形の才能を持っていた事が半次郎の記憶にあったからだった。
そこで半次郎の息子 俊介と共に必死に稽古に明け暮れて、やがて初舞台を踏む時が来る。人間国宝の小野川万菊にも出逢う事があり その事が後に彼を助ける事になるとは この時の喜久雄は思いもしない。
兄弟のように育つ二人だが、自分には俊介の様な名門歌舞伎役者としてのお家の血筋が無かった。この事がどんなに半次郎の亡き跡目を継ぎ三代目を世襲しようとも
周囲が許さなかった。そして週刊誌が彼の生い立ちを書き立てる。
歌舞伎役者として窮地に陥る彼は 役が欲しくて吾妻千五郎の娘に近づいて結婚するが激怒され梨園を去ってゆく羽目に。
二人は放浪しながら各地の宴会場で女形をして日銭を稼ぐ生活に。
片や俊介は 自分の幼馴染の春江と一緒になり息子がいる。
8年の放浪から家に戻り周囲からも認められていく俊介。
一方 自分には花街芸妓との間に娘の隠し子。
妻との間に子は無し。
梨園から遠ざかってゆく彼であったが、彼を救う手が やがてやって来る。
それが 死にゆく前の万菊である。
彼の一言で、喜久雄は梨園に戻って来た。俊介との再会し、
もう一度 あの歌舞伎の輝かしい舞台(二人道成寺)を 二人で演じる。
世間が二人の復活を待ちわびた日でもあった。
しかし、やがて俊介は糖尿病悪化で足を切断しないといけない羽目に。
苦悩する二人。 しかしその運命から逃げる事無く二人は舞台(曽根崎心中)をやってのけます。そして俊介の死。
あれから16年。白髪になった彼。俊介の息子も歌舞伎界で立派になり。
喜久雄は若くにして ”人間国宝 歌舞伎役者” に成る。
記者会見の日、そっと近づく一人の女性のカメラマン。
彼女は喜久雄の隠された娘であった。しかし出逢って直ぐに名前を当てる彼。
父としては憎む相手ではあったが、舞台を観る彼女は歌舞伎役者として彼を認める存在でもあった。
”悪魔と取引したけど 立派な歌舞伎役者に成れた”
それは一言では言い表せられない程の 犠牲と、後悔との引き換えの道であったであろうと思う。そこに 一筋に役者として生きて来た証があった。
人間国宝としての彼の舞台 (鷺娘)が最後に上演される。
そこに舞う沢山の紙吹雪。その中に 彼が観たかった景色があった。
それは 父の最後を見た時の景色と重なる。
きっと家族への忘れられない深い想いが
そこに在ったのだと感じます。
只今、絶賛公開中!
これは映画館で観るのお薦め。
是非 今の内に
劇場でご鑑賞下さいませ!!
勿体ないと感じた。
注意点としては、結構ガッツリ目に濡れ場があるで家族や友人とは見ない方が良いと思います。個人としてはこの点がもっとも冷めました、歌舞伎には詳しくありません。だからこそ日本の文化を感じられると思って見たのですが、男女の関係を示すのに濡れ場で表現するのは勿体ないと感じました。歌舞伎のシーンや演者の葛藤シーンは本当に感動しましたが。登場人物の訳のわからない行動にも、は?とさせられて後半は感動も薄れてしまいました。まず、春江が急に喜久雄を裏切ったのか?俊介に惹かれていたとしてもクズ過ぎる。俊介も突然戻って来て「息子の為だ」仕方ないみたいな感じも癪に触るし、両足切っても同情出来なかった。春江が終始開き直ってる感じも胸くそ悪い。藤駒の娘も最後に父親と思った事はない、と言っていたのに喜久雄の芸に感動してお父さんって呼ぶシーンには?が止まらなかった。俊介が失踪した中、芸で支えていた喜久雄に対して幸子は泥棒呼ばわり。挙げ句の果てに喜久雄に役を演じさせない始末、情は無いんか?登場人物で良かったのは、竹野と彩子ぐらい。あとは、万菊の雰囲気で保てた情緒でした。人間性を生々しく表現したのは、良いと思いますが…年月も飛ぶしイマイチ最後は簡単に国宝になってて、ご都合主義が際立ってしまっていた気がします。吉沢亮や横浜流星の演技はとても素晴らしかったです。個人的な意見なので賛否両論あると思いますが、予告で期待値が上がり過ぎました。
血のつながり
濃い3時間
没入してしまって歌舞伎のシーンが終わると拍手しそうになってしまった。
実の子の方が可愛いに決まってる!
お互いに歌舞伎から逃げたけど、やはり芸しかないと言うこと。
若干人生を語るのには雑な部分はあったけど、
演技がカバーしていた。
吉沢亮が美しすぎました。
TCXで見れてよかったです。
美しいお姿のクリアファイルでもないのかなぁと探しましたが、売ってませんでした。
これは映画館で見るべき、家じゃ見れない。
ありがとう、国宝
「ガラス玉のような目」に映った喜久雄の孤高の姿
小説を読んだ後に映画を観ましたが、あの壮大な物語を3時間余りに凝縮し、物語の核を鮮やかにすくい取った脚本と演出に心を奪われました。
人間国宝として認定された後の場面は、原作にはない映画独自の演出でしたが、喜久雄の到達点をより鮮明に示しており、その孤高の姿が胸に迫りました。
「ガラス玉のような目」に映し出されたものは、もう戻ることのない何かを知ってしまった人間の哀しみと、それでもなお芸の道を究めようとする凄みだったように感じます。
田中泯さんが演じた役どころも圧巻で、その一挙手一投足に人生の重みを感じました。
小説で喜久雄の良き理解者として存在を放っていた徳次が描かれなかったのは少し残念でしたが、その分、喜久雄という芸の求道者に焦点が絞られ、孤高の光が一層際立っていたと思います。
映画としての結末も、小説とは異なる角度からの喜久雄の到達点を示していて、作品全体に深い余韻を残したと思います。
目が感情を表していました。
田中泯さんが吉沢亮さんを踊らせた時、それまで光っていなかった目が踊り出すと同時に光出す。
音がない場面でしたが、芸は武器よりも強いことを凄まじく表現していました。ところどころ様々な俳優さんの目が強調され、その場面が伝えたい物の説得力を増していました。歌舞伎の足の音、小道具の音、それを実感するために、映画館で見るべきだと思います。
壮絶な人生
予告編にあった、喜久雄のほうが跡を継ぐってところまでの話なのかなと思いきや、喜久雄も俊介もそれぞれ逃げる、追われる、ドサ回りで日々を凌ぐ、また歌舞伎界に返り咲く。。が代わる代わるやってきて、2人とも凄い人生だったんだな、と驚きました。
子どもの頃に稽古を付けてもらった場所で今度は喜久雄のほうが指導する側になるとか、
演技力を見せつけた曽根崎心中の女形を最初は喜久雄、2回目は俊介がまた代わる代わる務めるし。。そして主役の足を見せる演目だからここで俊介の足の壊死が舞台上で分かってしまうというこれまた凄い状況。。!
喜久雄が若い時に居た小さな娘は今頃どうしているんだろう?と思っていたら彼の晩年にカメラマンとして登場してくれて、気になってから良かったです。まぁ、娘としてはお披露目のパレードで沿道から声かけても子持ちとバレたくなくてイメージ重視の役者だからあそこで娘に敢えて反応しなかったこと、ずーっと直接的な面倒は見てくれなかったこと(生活費くらいは渡していたかもしれませんが一緒に暮らしてないし。。)しかも歌舞伎界の大御所の娘さんと駆け落ち的に一緒になってドサ回りしてるとか。。
いや最初の芸姑さん、そりゃ本人も「お嫁さんじゃなくていい、2号さん、3号さんでいいから」なんて言ってはいたけど。。娘的には「ずっと母さんも私もほっとくってどういうことよ!!」ってモヤモヤはする。
でも芸を継ぐ人としては「国宝」なのか。。とちょい複雑な気分。
主役2人は凄く演目を練習したんだなぁ、と思うと同時に、少年期役の2人も思ってた以上に出演時間長くて、結構演技もしていたし、主役4人とも大変な練習したんだな、と感嘆。
******
吉沢亮さんは観るとどうしてもキングダムの中華統一と、東京リベンジャーズの世界を思い出してしまうんですが、今回の歌舞伎役者の演技によりこの先の作品の幅がまた広がるんだなぁ、としみじみ。
横浜流星さんはアキラとあきら、書道の人の役とか見てきましたが、彼もまた良い演技で良かったです!
田中泯さんは、葛飾北斎の時は北斎にしか見えなかったのに、安定の、圧巻の演技、眼福でございました。。!
最高でした!
知人に勧められて、原作を読んでから映画館へ。演目の予備知識あり、ストーリーを知った上で鑑賞しました。
原作の方は、とにかく文章が読みやすい!朝ドラのナレーション聞いてるみたい。歌舞伎というとちょっと敷居が高い感じがするのですが、非常にとっつきやすかったです。ただ、活字で舞台がいかに素晴らしいかを説明する感じになるので、野暮と言えば野暮。小説も良いのですが、視覚に訴える映画ならではの楽しさがありました。
上手く言えないのですが、映画の終盤では、歌舞伎の作品と、こちら側の私たちの世界の区別がなくなるような感覚に近づいたので、それは予想しておらず自分でもビックリしました。
そして、吉沢亮の上手いこと!
いや〜〜〜驚いちゃったよね…
ほんとに良かった、お見事でした。
他の皆さんも素晴らしかった。渡辺謙、田中民はさっすがよ…涙 見れて幸せです。田中民こそ国宝級。三浦貴大も良かった〜〜横浜流星好き〜〜寺島しのぶが居てくれて引き締まる〜
実際に歌舞伎を見に行きたくなりました。
道成寺も大好きなのですが、今回は曽根崎心中に興味津々に。
曽根崎心中とロミジュリ、似ているようで全然違うのね…(曽根崎心中は実際にあった事件を元にしています)心中って、現代ではなかなか死ぬとこまでは行かないんだろうけど、「まぁね、そういう事もあるだろうね」って妙に納得してしまうし、悲しくも美しいと感じてしまうのは、日本人のDNAのせいなんでしょうか。
そう感じる一方で、歌舞伎の演目に限らず、昔の話って女性があまりにも不憫過ぎる。
女性誌ELLEに、曽根崎心中について書かれている記事を偶然見つけたのですが、それが「お初が徳兵衛と結婚して、醤油会社の女社長として大成功する未来」の話。遊女だったお初ですが、現代に生きていたらそんなことになっていたかもしれません。本当に惚れた男と添い遂げて、バリバリ仕事しながら幸せに暮らすという世界線は、それはそれで涙が滲んで来ます。生きて幸せでいて欲しかった。
よし、ひとまず歌舞伎「曽根崎心中」を見よう!と思い立ちましたが、現在公演は無さそう。歌舞伎オンデマンドで探したら、海外向けで英語解説付き。字幕ではなく音声なのでガッカリ…せっかく歌舞伎に興味を持っても、きっかけになる番組が圧倒的に少ないのが悲しい。シネマ歌舞伎もありますが、期間も短く上映される映画館も少なめ。文楽も探したけど無し。
散々迷った挙げ句、まず手始めに現代語訳版と、原文の文庫を思わずポチりました。
雑誌ananで「国宝」に関する8ページに渡るインタビューが載っているそうなので、そちらも要チェックです!
もう一つ、監督は在日朝鮮人3世なんですね。大学時代にVシネマのアルバイトをされたのがきっかけのようですね。フラガールは見たことあるな。いや〜〜てっきり日本人の監督さんだと思ってました。こんな面白い映画撮ってくださって、感謝。
追記:曽根崎心中を読みましたが、薄っ!短くて驚きました。え、こんなページ数なの??と戸惑うくらい。恋愛が成就しないからではなく、やっぱり「身の潔白を証明するために」心中する感じで、腹切りに近い。夜中、皆んな寝静まっているところから2人で抜け出し、有名なあだしが原への道中の場面は、ただ歩いているだけとは思えない濃さでした。あのラップ調の醍醐味は原文で読んでこそ。高校生の文学史の授業では全くピンと来ずでしたが、今頃になってようやく手に取ることができ、読んで良かったです。現在は縁結びの地として観光名所になっているのですね、訪れてみたいです。
原作大ファンとしては
原作ファンあるあるで申し訳ないが、
国宝は吉田修一の最高傑作だと思っているので、その分期待し過ぎてしまった
期待のため初日に2回連続で見ました
不満な点は3つ
歌舞伎界に復帰してからの喜久雄の孤独と絶望が圧倒的に描き足りない
不幸を喰うと敬遠され周りを寄せ付けずひとり芸にのめり込んで孤高を極めていく姿がなかった
綾乃からのとどめの一言もあんな風に変えられてしまって、
映画だけ観た人には何が伝わったのかな
簡単に人間国宝になったみたいに感じられたのでは
原作で嗚咽するくらい泣いたラストシーンもどう描かれるか期待したが、まあ、そりゃ、解釈の違いでしょうけど、え?って
これで終わりなんだ…
春江のキャラも謎だった
高畑さんて大河でもそうだったけど若い頃演じる時に声高くするのやめた方が良いと常々思っているのだが、そのせいもあって春江の強さや決意が全く伝わらなかった
余談だが藤駒の若い頃の舞妓姿が似合わなすぎてびっくりした
田中泯さんが本当に凄かったのに、へんな演出(エフェクト)加えたのも冷めた
悪人の時と同様、「賞とる映画」って感じで、
3時間あっという間で流石っていう感想です
竹野役の三浦さんもすごく良かったです
三時間
たしかに
見ごたえのあるシーンもあったけれど
やっぱ三時間は長い…
正直尿意との戦いになってくる
(実際途中で抜ける人もそれなりいて、終わった後トイレが長蛇の列だったし)
中盤の吉沢亮の覚醒演技は
見ごたえはあったけど、
三時間の割には、
それを超えるものが
後半になかったかなぁ…とも
これならもう少し短くしてもよかった気もしないでもないけど、
雰囲気的には必要な長さなのかな?
ただ『歌舞伎』という普通じゃない世界が
普通に違和感なく見れてるのは
かなり苦労や工夫があるのは間違いないとは思う
そして全員演技が上手い
素人感はない(と素人の自分が思ったり)
自分にとっては映画は「面白いかどうか」「退屈しないかどうか」が
まず一番だからチョット評価低めだけど(アクションシーンが多ければ面白いとか単純なものではなく)
テキトーに歌舞伎やってみました作品ではないのは確かと思う
高評価の中、、、
大変期待していたが、もっと芸を極める者の業の深さや天才の孤独など、ましてや「国宝」なんだから究極に描ききっていただきたかった....。描いていたけれど、究極感を期待してしまっていた。そしてなんだかメッセージとして入ってこない。血筋の呪いは役者というより人間として(=遺伝の病気として)描かれ、切ない皮肉でした。
(国宝も普通の人だよ、という話では無いはず??)
青年漫画やBL漫画などの作品では上記のような怖さや系統のストーリーを突き詰めて描いているイメージがある、こんなに時間軸盛らずに。
序盤は面白い予感がプンプン漂っていた。
そして「怪物」の黒川さん魅力的すぎ。
全体的に役者の皆さんと歌舞伎自体には魅了された(歌舞伎は二度観た経験のみ)。
これを1000〜2000円で観られるのは贅沢とも思う。
カメラを持ち父に対峙する瀧内公美さん(由宇子の天秤?)や、ちょい役で辻凪子さんなどが入っていたりも面白かった。
しかし、、、役者さんの見せ方は、、やはり気になる…..。
田中泯さんの舞いにエフェクトみたいなのつけてた時点で冷めた。
私の感覚とは合わない、と!
(たとえご本人が納得されていたとしても)
泯さんの所作丁寧に追えば凄みは伝わるでしょう!
映画臭い、ということかな。
その才能が、血筋を凌駕する
予告からして凄まじい作品である事はすぐ
分かりましたよね。
期待値の高さを伺える。
初日初回は大きな箱、大入りでした!
⚫︎ はい、お亮さん。
以前「国宝級イケメンランキング」とやらで
1位になっておりました。
まぁ〜美しいお顔立ちです。
その端正なルックスに注目されがちですが、お芝居もとっても巧い役者さんですよね。
本作では任侠の一門の生まれだが、歌舞伎の世界に飛び込んだ主人公喜久雄(東一郎)を、迫真の演技で魅せてくれました。
実際の歌舞伎役者同様「役」に魂を吹き込む!
恐ろしいほど生々しくて痛々しくて、そして圧倒的に美しい!!
鬼気迫るものがありました。
彼の人生から目が離せなくなりました。
⚫︎ 我らが流星君!
はい素敵。
現在放送中の「べらぼう」では重三郎というコミカルな面を持つ主人公を演じ、新たな魅力を振りまいておりますね。
はきゅん。
はい素敵。
こちらは歌舞伎の名門一家に生まれた御曹司俊介(半弥)という人物を熱演!
難しい役どころを見事に演じきっておりました。
流星君は本当に何でも出来る子だね〜♪
⚫︎ 喜久雄の少年時代を演じたのは「怪物」で
記憶に残る芝居を見せてくれた黒川想矢君。
まだ少年。
愛らし笑顔に不釣り合いな、背中の立派な彫り物が彼の人生を支える。
そのアンバランスさも美しく見える不思議。
歌舞伎に魅せられていく喜久雄を熱演!
⚫︎ 俊介の少年時代は「ぼくのお日さま」で難しい芝居を求められていましたが、見事に演じきった!
静かな作品でしたが大きな感動をくれた越山敬達君。
歌舞伎の名門の御曹司として生まれ育ち、
その険し過ぎる人生を理解する前に「役者」として生きる事が「普通」になっている少年時代の俊介の心境を見事に表現していました。
半二郎と舞う「連獅子」は迫力がありましたね。
⚫︎ 当代一の女形、小野川万菊を演じた田中泯さん。
「鷺娘」を舞う万菊さんの圧倒的な存在感は恐ろしい程でした。
芸を突き詰めた役者だけがたどり着く境地。
悟りの域。
もはや人間では無いモノになっていたかの様でした。
素晴らしい役者さん達が作品に重みと深みを与えていました。
皆さん達者!
歌舞伎は詳しくないけれど、私レベルでも知っている「藤娘」や「曽根崎心中」の演目も披露される。
特に「曽根崎心中」は物語の核となる演目で
2回演じられる。
1回目は、半二郎の代役として喜久雄が1人、初めての大舞台に立つ。
実の息子である俊介が務めるのが筋だと反対もあったが、半二郎は譲らなかった。
芸を極めている者だから見えてしまう
"上手い下手"
半二郎は誠実に"芸"だけを見て、自分の代役を喜久雄に託したんだと思った。
プレッシャーに押しつぶされて震えが止まらない喜久雄を励ます俊介の姿、2人のやり取りには泣いたわ。
本当よね。
血筋なんて変えられない泣
結果的に、俊介のおかげで無事大役を務めあげた喜久雄。
しかし、
舞台で舞う東一郎(喜久雄)の圧倒的な姿を見せつけられて、自分の負けを認めざるを得なかった俊介は姿を消してしまう事になる皮肉よ。。泣
2回目は片足を失った俊介の願いを聞く形で、東一郎・半弥、2人で舞台に立つ。
この2人が演じるからこそ、より魂までも震える「曽根崎心中」になったのだと思う。
俊介の残った足先も壊死しかけているのを見た喜久雄の涙が忘れられない。
その後何度も転び、汗と涙で崩れた化粧も構わずに、最後まで演じきると覚悟を決めた2人。
これが最後だと分かっていたと思いました。
少年時代から毎日苦しい稽古に汗を流し、
切磋琢磨しながら高みを目指した喜久雄と俊介。
葛藤や絶望、プライド。
もがき苦しみながらも2人が培ってきた友情が支えるその舞いは、正に全身全霊。
歌舞伎に人生を捧げた彼らの姿そのものでした。
それは幸か不幸か。
私にはわからない。
「歌舞伎」に取り憑かれてしまった2人の運命はある意味では残酷でした。
血筋とは。
才能とは。
今更ながら「サンクチュアリ」を一気見したばかりだったので、伝統と格式を重んじるお相撲の世界に身を置く各界のプリンス"龍貴"が抱える苦悩と2人の姿が重なった。
女将さんでもある母から
「この家に産んでごめんなさい」と言われる
シーンを思い出した。
家柄とか、血筋とか、伝統とか継承とか。。
人ごとでよかった。
私ならどの立場でもプレッシャーに押しつぶされて痩せてまう。。
又、2人共驚くほど白塗り姿が美しかったから、レスリーチャンの「さらば、わが愛 覇王別姫」とも重なった。
↑↑凄まじい作品です。
オススメ!!
本作も、後々まで語られる作品になると思うし、お亮さん、流星君の代表作になったのでは??
こんなに大変な役どころを見事に演じきったお亮さんと流星君の姿を見せられたら、少々の事は気にならない。
星は5つ以外、私には付けられません。
美雨ちゃんx理の主題歌もサイコー!
あ。
でもよ。。
春江(充希ちゃん)ちゃっかりしてるなおもちゃった。
あの身の引き方、切なくて泣きそうだったのに。
一緒に姿くらますんかいっ!!
あ。
ま〜ちんの奥さんだからいぢわる言ってるんじゃありませんけどー(棒)
そして、偉そうであまり好きではなかった
🦐🦣さんを見る目が少し優しくなれそうデス。
魂が込められた作品
まずは、吉沢亮にやっと自身の代表作として
相応しい作品が出来たのではないでしょうか。
それほど素晴らしかったです。
3時間をもってしても、上下巻に及ぶ原作を
再現しきれませんが、脚本がとてもいいのだと思います。
原作ファンですが満足です。
横浜流星に持っていかれるんじゃないかと
心配してましたが、何が何が女形になったら
吉沢亮の方が美しさ際立って見えました。
梨園の醜聞、病いとの戦い、再起と再発
もっと俊ぼん(横浜流星)の葛藤も見たかったなぁ。
血筋と才能、挫折と再起、友情と嫉妬の物語
「世襲か?実力か?」というテーマには、特に目新しさを感じないが、「芸」と「血」によって、それぞれに挫折を味わう2人の男の物語が丹念に描かれていて、見応えがある。
度々挿入される歌舞伎のシーンも圧巻で、吉沢亮と横浜流星の歌舞伎役者ぶりには目を奪われるし、特に、女形としての発声や台詞回しは見事だと思えてならない。
当初は、極道のせがれを演じる吉沢亮と、当主の跡取り息子を演じる横浜流星とでは、配役が逆の方が良かったのではないかと感じたが、悪魔と契約し、芸者との間に隠し子を設け、役を得るために実力者の娘をたぶらかし、挙げ句の果てに歌舞伎界から追放される主人公は、吉沢亮が醸し出すダークなイメージに合っていると思えるようになった。
ただし、共感を覚えるのは横浜流星か演じる御曹司の方で、父の代役に指名された兄弟弟子を妬むどころか、開演前に緊張する彼を励まし、自分の才能のなさを自覚して歌舞伎の世界から逃げ出すものの、地方のドサ回りで地道に芸を磨き続けた生き様を見ると、思わず応援したくなってしまった。
さらに、彼が、糖尿病で片足を失っても、執念で「曽根崎心中」の舞台に立つシーンは、2人の男の因縁と友情が帰結するクライマックスになっており、確かに、吉沢亮の主役としての存在感は素晴らしいものの、美味しいところを持っていったのは、横浜流星の方だと思えてならない。
吉沢亮が演じる喜久雄が、「国宝」となって美しい「景色」を見るラストは感動的ではあるのだが、もし、横浜流星演じる俊介が早逝しなかったら、喜久雄は「国宝」になれたのだろうかという疑問が残るし、喜久雄が見ることができた「景色」を、俊介にも見てもらいたかったと思ってしまうのである。
その点、喜久雄が「国宝」になれたのは、血筋がないことによって挫折を味わったり、親友の俊介を失ったりといった人生経験が、芸の肥やしとなったからに違いないのだが、そこのところは、もう少し分かりやすく描いてもらいたかったとも思う。
さらに言えば、森七菜が演じる喜久雄の恋人が、喜久雄の歌舞伎界への復帰と共に姿を消してしまったことには違和感を感じるし、高畑充希が演じる春江を巡る喜久雄と俊介の三角関係が、まったくと言っていいほど描かれなかったことにも、物足りなさを感じざるを得ない。
ただし、長尺の割には、ほとんど無駄に感じられる描写が無かっただけに、そうした場面を追加したら、上映時間が優に4時間を超えてしまうのだろうが・・・
おったまげ!
上映時間が長いので途中で退屈しないか心配だったのですが、あっという間でした。旅芸人に転落して、再び大舞台に復帰するところが少し端折りすぎて戸惑ってしまいましたが笑。吉沢亮さんの美しさに見惚れまくって思わず『きれい😍』と心の声が漏れてしまいました💦あと、永瀬正敏さんがこんなに演技がお上手だとは知らずビックリしました。森七菜さんが少し幼すぎたかなぁと個人的に思ってしまいました。ごめんなさい🙏🏻
圧巻
今年一番期待していた邦画。素晴らしかった。。
3時間終わっても、まだまだ見ていられると思った。
最後、涙が出たのは半二郎の生き様になのか、ここまで成し遂げた吉沢亮になのか。
歌舞伎に詳しくはない。だから最後の演技が人間国宝に見えるのかは正直わからない。鷺娘見たことないし。
でも、二人道成寺、曽根崎心中、襲名、半半コンビ、とどんどん芸を磨いていく様子は見事だったし、顔立ちに加え所作の美しさには鳥肌たった。
曽根崎心中の死ぬ前の演技、東一郎が稽古で成長していく様もすごかったし、後年本当の死を目前にした半弥、横浜流星の真に迫った演技もさらに素晴らしかった。二人とも、後半成熟度を見せる必要があるのに前半手を抜いているようには見えない、のがすごい。
正体、を見てその凄さを認識した流星くん、の感情演技もとても自然だったし、その対比で平坦な物言いをする吉沢亮くんのボソッとした一言、がさらにナチュラルでいちいち突き刺さる。歌舞伎という超難関に一体どれだけの時間と覚悟と血の滲む努力で挑んでここまで持ってきたのだろう、と思うとそれだけで胸が熱くなる。
吉沢くんは類稀なる美しさを持ちながら、見た目以上に演技、役柄にいつも強い印象を残す役者だなと思う。そして最後のシーンでも感じたが役者というのは狂気と紙一重の世界で闘っていると実感する。そう思うと飲んだくれてしまうのも庇いたくすらなってしまうが、ぜひ失敗談はその辺に留めておいてまたいい作品作ってほしい。
子役はひょっとして本業の子を使ってるのかなと思ったら怪物で見覚えのある黒川想矢くんの名前が。天才子役の役なんてまたハードルが高いのに、すごいわ。。
芸に魅せられ、芸を極め、芸に飲みこまれる
息を飲んだ。気がついたら息をしていない場面が何度か。
原作小説は、抑揚を抑えた講談調の語り口で、歌舞伎に魅せられた男を描く一代記。まさに波瀾万丈の物語だったが、文字で表現される場面場面が、頭の中で映像となって次々と展開していく感覚があり、一気に読んだ。ただ、歌舞伎に疎い私は、舞台の情景が脳内でうまく像を結べなかった。
その作品が映像化された。
うまく像を結べなかった世界が、スクリーン上で鮮やかな映像となって展開していく。
喜久雄が、俊介が、舞台の上で踊り、舞う。
3時間近いその時間を全く感じさせない、最初から最後までテンポ良く、キリッと締まった展開。どこにも無駄がない。極限まで磨きに磨き、削りに削ったような鋭敏さを感じた。
役者の動きにピタリと寄り添い、寸分の隙を見せることも許さないような緊張感のあるカメラワークと、それに応える俳優たちの演技が光っていた。
主演の吉沢亮は、素の喜久雄の演技と歌舞伎役者としての演技どちらも素晴らしいのだが、歌舞伎役者としての演技に凄味を感じた。
「二人道成寺」は、横浜流星との息の合った軽やかな演技が華やか。
「曽根崎心中」は、二代目代役として出たお初、盟友俊介の最後の舞台での徳兵衛のどちらも、役柄と喜久雄本人の想いが滲み出す。
圧巻は、最後の「鷺娘」。本当の舞台を通しで観てみたいと思う演技。歌舞伎の世界に入り込み、美の世界に迷い込んで忘我の境地に達する。
喜久雄は、芸の極みに達して常人が見えないものを見ている。その瞬間、彼は芸を自分のものとし、自己と一体化したのではなく、むしろ逆に歌舞伎という芸に飲まれているようにしか思えなかった。
原作のラストシーンをどのように描くのかが一番気になっていたのだが、原作とは違う味わいがあった。
脇を固める俳優の演技も良かった。横浜流星、渡辺謙らの演技は、「熱演」という熱量を感じるものだったが、目を引いたのは希代の女形、万菊を演じた田中泯。この存在感は何だろう。身体表現を追求するダンサーなのに、大きな動きがなくとも、その佇まいに人を惹きつける力がある。「メゾン・ド・ヒミコ」で演じたゲイの老人役に強烈な印象が残っているが、今回の女形役も異様な存在感を放っていた。
喜久雄という男は寡黙な男だ。彼が話さない代わりに、彼の心情を表現するような言葉を師匠たちが発していたように思う。
「ほんまもんの芸は刀や鉄砲よりも強い」という二代目半二郎。
「歌舞伎が憎くても私たち役者はやるの」という万菊。
この2人の台詞が強く印象に残った。
吉田修一の執念の賜物と言えるような原作は勿論のこと、映画の脚本も、映像も、音響も、美術も、俳優陣の演技も、そしてそれをまとめ上げた監督の手腕も素晴らしい。色々な要素が、それぞれ非常に高いレベルで結晶して生まれた映画のように思った。間違いなく、後世に残る傑作。
美しい舞が、残像のように脳裏に残る。
<追記>(2025年6月14日)
公開当日のレイトショーで観て直ぐに上のレビューを書いた。それから1週間、このサイトのレビューやWEBニュースで流れてくる評判の高さに驚きつつ、時の経過とともに冷静になって考えると、5.0という自分が付けた評価が気になり始めた。
過去に5.0の評価をした作品は、何かしら「心を大きく動かされる」「また観たい、また観るだろう」と思える作品だった。しかし、本作はそれに当てはまらないことに気づいた。
結局私は、この映画のスケール感と、原作で埋められなかった脳内映像を補完できたことには満足したが、感動とか、そういう感情は沸かなかったことに気づいた。
上のレビューでは触れていないが、多くの方が指摘されているように、女性の描き方が非常に薄くて雑だった。原作も薄めだったが映画は原作より相当薄い。それは喜久雄と俊介に焦点を当てて他を削らなければ、800ページにわたる大作を映画化することなど到底不可能だったからやむを得ない選択だったと思いたいが、一方で何故、女性陣の中で幸子(寺島しのぶ)だけクローズアップしたのか疑問が残った(原作では他の女性と比べて幸子の扱いが突出している訳ではない)。
それから、鑑賞後に知ったが、原作者が「100年に一本の壮大な芸道映画」と絶賛しているという。これには少しガッカリした。自分が心血注いだ作品が映画化された喜びの表れだろうが、それはメディアの入らないところで制作陣たちにかけてあげればよかった言葉ではないだろうか。
近年稀にみる邦画の大作であり、圧倒される傑作であることは間違いないと思いますが、上記のようなことを考えた結果、点数は4.5に変えさせて頂きます。
歌舞伎好きにも感動を与える作品
映画【国宝】すばらしい。
原作を2回読みました。
なので、小説と脚本の違いがよくわかります。
設定を変えた場面も多くありますが、なるほどと納得するばかりです。
冒頭、この作品の大序というべき「ヤクザの殴りこみ」の場は、小説の美しさとリアル感そのままで、緊張して呼吸を忘れるほどです。
もし、人生を動かしている歯車というものがあるのならば、喜久雄という男の歯車がガタガタと大きく向きを変えてあらぬ方へと動き出す瞬間です。
そんな歯車の軋みが何度も何度もやってくる。
周りの人を巻き込んで。
また、周りの人に巻き込まれて。
どうしてこうなる。
どうしてそうする。
と、いろんな場面で言いたくなるんですけど、
「どうしてもこうしてもあるかいな!」というあがきのような叫びが聞こえてくるようです。
主演のお二人は、女形の所作が驚くほどきれいです。どんなにお稽古なさったのか想像できますが、でもきっと私たちの想像をはるかに超える鍛錬をなさったに違いない。俳優さんて、すごい。
歌舞伎の楽屋裏の様子や普段の生活を細かく指導したのは鴈治郎さん。リアリティがグッと感じられます。(ご本人にもっとたくさんスクリーンに出てほしかったわ♡舞台の鴈治郎さんはほんとに素敵です)
以上、6/6の初日を観ての感想でした。
以下、2回目の鑑賞を終えての追記です。
2回目となると、原作本との違いにとらわれずに没頭できました。2回見てよかったです。
「七つの時が六つ鳴りて 残る一つが今生の 鐘の響きの聞きおさめ」
「聞きおさめ」の部分にたっぷりと情緒をまとって、
余韻を引く吉沢亮のセリフ回しに泣けてくるのに、
師匠の半二郎(渡辺謙)は怒り心頭。
目の前の箸や茶碗をなぎ払って怒鳴る。
「あんた、死ぬんやで。あと鐘ひとつなったら死ぬんやで。死ぬ恐怖と、好きな男と死ねる喜びが"ないまぜ"なんやで!」
あちこちにある"ないまぜ"。
代役に抜擢されて、ひとり鏡台に向かって顔をする(化粧をする)喜久雄(吉沢亮)は、緊張のあまり震えが止まらず目尻に赤が入れられない。
お前の血をがぶがぶ飲みたいわ。守ってくれる血が俺にはないねん…と震える声で俊介(横浜流星)に訴える。
その手から筆を取って、黙って紅を引いてやる俊介は、逆に俺はお前の才能がほしい、父親に認めてもらえる才能がほしいと心の中で叫んでいる。
一つの場面ごとに、重なる意味、重なる思いがあって胸が熱く、痛くなります。
田中泯の第一声「あら」がまた良かった。
女ではなく女形の声、まさにこれだなと思う。
怪演って言葉が頭に浮かびます。
喜久雄と俊介がもしこのまま歌舞伎界を担う二人であり続けたら、と映画の中のこととはいえ想像してしまいます。
「三津五郎と勘三郎」であろうか、近年の「幸四郎と猿之助」であろうか、あるいは遡って、見たことはないが「七代目榮三郎と五代目福助」であろうかと、現実の歌舞伎役者とオーバーラップせずにはいられないほど、吉沢亮と横浜流星が本物の歌舞伎役者になっています。
喜久雄と俊介が舞台から客席のはるか上を見つめて「誰かが見ている」というのは、実際に何人もの役者さんが対談などで口にする言葉です。
見ているんですね、きっと。
見守られているんです、きっと。
厳しくも優しい目で。
さてこの映画を見て、初めて歌舞伎を見てみようかなと思った方には、七月歌舞伎座の夜の部がお勧めです。
染五郎と團子の舞踊「蝶の道行」。
染五郎は幸四郎の息子で高麗屋の御曹司。
團子は市川中車(香川照之)の息子です。
年はひとつ違いの20歳と21歳。
喜久雄と俊介にイメージが重なります。
全213件中、181~200件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。