国宝のレビュー・感想・評価
全1621件中、301~320件目を表示
精進する、その美しさ。すべてを蹴散らして。
映画「国宝」を観てきました。ネットでの評判も、メディアの取り上げ方もすごくて、ちょっとそれに引っ張られたかな。もうネタバレで書いてもいいと思うけど、心理描写という意味ではちょっと物足りなかった。歌舞伎界という特殊な技能集団、世襲制が色濃く残る世界での主人公たちの葛藤と、取り巻く女性たちのそれぞれの生き様。難しく、切なかった。歌舞伎という芸の美しさがそれを増幅させる。
喜久雄は結局誰も信じていないし、誰も愛していないよね?その分、芸に愛されたかというとそうでもない。誰かを傷つけながら名声を勝ち取った、などといわれても彼に実感はないだろう。ただ次の高みを観たかったんだ。最後の彼が見た風景、それはゴールなんかじゃない。奇しくも人間国宝たるお手本、万菊がいるじゃないか。もっともっと先がある。それが無でも地獄でも、なんだっていいんです。それに魅入られたものだけが手にできる風景。精進するしかないんだよ。すべてを蹴散らして。
血筋とは因果の道理
これは間違いなく傑作である。近年、ここまで完成度の高い作品が他にあっただろうか。原作、脚本、映像、構成、そして俳優たちの演技。どれを取っても一級品だ。中でも注目すべきは、全体の構成が極めて巧みに練られている点である。
この映画の根幹を成すテーマは「血」。血筋に寄り添い、あるいは抗いながら、生き抜こうとする人々の姿を描いている。そしてその奥底には、「日本人とは何か」「我が国のアイデンティティとは何か」という問いが静かに流れている。それを李相日監督は驚くほど丹念に、深く掘り下げて描き切った。まさに圧巻だ。
物語の中心には二人の青年がいる。
ひとりは、喜久雄(吉沢亮)。彼は血筋の外から梨園に飛び込み、背中には恩義を忘れずに生きる“ミミズク”の刺青を背負っている。類まれなる才能を持ちながら、結局は「血」という逃れがたい運命に打ちのめされる。
それでも彼は、恩に報い、芸に生き抜こうとする。その姿は痛々しくも美しい。
もうひとりは、俊介(横浜流星)。歌舞伎の名門に生まれながら、血筋に支えられることもなく、むしろその重みに苦しむ青年である。恵まれない才能を、それでも芸の道で磨こうと、愚直に、必死にもがく。
この対照的な二人の生き方が交錯し、共鳴しながら展開していく。どん底に落ちてもなお、泥水をすすってでも這い上がろうとする志の姿が、胸を熱くさせる。
作品全体は歌舞伎の演目によって構成されている。前半と後半で同じ演目をあえて繰り返し見せることで、その中に二人の変化と人生が丁寧に織り込まれていく。こうした演出は、緻密な構成の妙と言えるだろう。
特に印象的なのが、田中泯が演じる名優・万菊による「鷺娘」の舞いである。
鷺の精が人間に恋し、その苦しみと喜び、そして恋が破れた後に堕ちていく地獄を描いたこの演目。その妖しく、美しい舞いに魅了される少年の喜久雄と俊介。この一幕が、やがて彼ら自身の人生を象徴するかのように重なっていく。
鷺の精は人間にはなれない。それと同じように、喜久雄には血筋がない。俊介には才能がない。彼らはどちらも、梨園という世界において「欠けたもの」を抱えた存在だった。しかし、だからこそ光るものがある。
この物語は、歌舞伎という芸の世界を通じて、彼らの人としてのあり方、そのものを描いている。
物語のラスト。恩を忘れぬミミズクを背中に背負った喜久雄が、「鷺娘」の舞台に立つ。そのとき彼の目に映ったもの。それは、血筋や因果、業といった逃れがたいものを超えた、そのさらに先に広がる、言葉では捉えきれない風景だったのかもしれない。ただ静かに、ただ深く、その舞台の上に、すべてが昇華されていた。人生そのものを使い、梨園への恩を捧げた姿が美しい。
この作品に収まりきらない魅力がある。語っても語り尽くせない奥行き。見終わった直後、思わず呟いた一言がすべてを表していた。
「これは傑作だ。」
心配ないさ〜
見る見ないは自由だけど、いま見るべき映画
語り出したらキリないですが。今は何でも配信サービスで見れてしまうけど、実際に映画館に行って、デカいスクリーンで「映画を見る」っていう時間と行為は、やっぱ大事なんだと思わせる力がありましたね。ショート動画ばっかり見てちゃダメだわ。最後の演目では、アオリをつけたり斜めに構えず、真正面から見せる構図になっていて、実際に目の前で喜久雄が舞っている、そんな錯覚を覚えました。あと、ポップコーン食ってる暇はないよ。3時間あっという間〜って、ホントかよ。いや、あっという間でした。泣く映画ではないだろうと思っていましたが、予告でも出てくるあのシーンではボロ泣き。その後も涙は止まらず、疲れ果てて映画館を出ました。「まあ、どうせそのうち配信されるだろう」と言わずに、公開終了する前に是非映画館で見てほしいです。
これ米アカデミー賞の外国作品部門いけるのでは?
エクスタシーを見るための超絶しんどい映画
吉沢亮って凄い役者だったんだな。あんな風に今にも死んでしまいそうな悲しい舞、今にも人生を投げ出してしまいそうな絶望的な笑い方が出来る役者さんだったんだ。希望と絶望の連続で疲れ果て、孤独でも辛くてもまた同じ場所に戻り、求めるものを探し続ける姿を見ているのは本当にしんどかった。やめられないんだよ、わかる、辛い世界なのに戻るチャンスがあったら戻るの、麻薬と同じ。パフォーマー、芸術家、表現者みんなそう。続けていくのは本当に辛いのに、舞台の上に立って100%以上のパフォーマンスが出来た時のエクスタシーを知っているから。これはそのエクスタシーを見るための映画。吉沢亮と横浜流星によって何度も畳みかけてくるそれに心の底から拍手を送りたい。実際一度、映画の中の観客と一緒になって拍手をしそうになってしまった。
平日のレイトショーで若い観客が多かった気がするけど、エンドロールが始まっても一人も立つ人はおらず、終わってもすぐに立ち上がる人は少なかった。そのくらい会場中がエネルギーを消費しながら世界観にしっかりと浸ることが出来たんだと思った。エンドに流れてきた曲が喜久雄の叫びのように聞こえた。
散りばめられた『対』 映画館で見るべき作品!
本日鑑賞してきました。
映像内に散りばめられた対比が鮮やかな印象でした。
天賦と血筋
極道と正統
嫉妬と羨望
打算と純粋
孤独と愛
悪魔と神様
憎悪と免罪
そして随所に見られる白と赤
白と赤は冒頭の雪と血の色に重なる部分がありました。
※どれも個人的な見解です。
寄りの画では吉沢亮と横浜流星の美しさが際立つ!
もう少し2人の舞を広い画角で見たかったという思いもありましたが、これはこれで緊迫感が出て非常に見応えがありました。
儚くも力強く美しい。
人の業を、まざまざと鮮明にかつ鮮烈に描いた傑作だと思います。
主演、助演の2人はもちろん渡辺謙の圧倒的迫力、脇を固めた俳優の皆さんの演技力、また鑑賞をされたエキストラの皆さんの真剣な眼差しで現場の緊迫感が伝わり心が震えました。
これは劇場のあの迫力と音響で見るべき。
映画館で観られて良かった!!
Two thumbs up! A MUST SEE movie!
エンターテイメントとして楽しむだけなら充分だけど
最近評判の、映画『国宝』にちょっとがっかり。
演芸そのものがエンターテイメントだし、原作もあるのだから仕方がないけど、3時間にわたってここまでいろんなことを詰め込んだ、抒情詩的エンターテイメント映画にする必要があったのか?
これまで正面から捉えられることの少なかった『歌舞伎』をテーマとした映画を作るなら、映像的にもっと絢爛豪華に美しく表現することが出来たはずだし、二人のライバルの演技も、本当の歌舞伎ファンを唸らせるほどのものだったのかは、甚だ怪しい。原作を下敷にしたとしても、そう言う問題点をクリアした上での映画作りは絶対にできたはずだし、そもそもの、何を目指した映画なのかが実ははっきりしていない。
豪華絢爛な歌舞伎文化と、天才芸術家の人間性の衝突を描きたかったのかもしれないが、だとすれば映画として散漫で弱すぎる。
追記:歴史的に、「リアル」が尊ばれる文化は実は特殊で、多くの場合、美は「形式」の中に見出される。歌舞伎の「美」も形式美とは切り離せないはずで、そう言う意味でも、この映画の主人公たちの「リアル」は、実は矛盾に満ちていると言えるのかもしれない。本来の「歌舞伎」から遠く離れてしまった現代人の考えが正しいかどうかは全く分からないけどね
圧倒的な演技…⭐︎
朝日新聞に連載中に読んではいたが、新聞小説の宿命で物語が細切れになってしまうためそれほど印象が残らない作品だったけど
この映画は本当に素晴らしかった。
役者さん達全員に⭐︎を贈りたいくらいに誰も良いけど やはり吉沢亮の執念を感じるほどの演技力に魅了される。
「曽根崎心中」のシーンで震えるような感動を味合わせてくれて、ラストシーンの「鷺娘」の及んでは泣けてきそうだった。
「鷺娘」は坂東玉三郎の踊りを映画で見ていて、その美しさは知っているつもりだったけど吉沢亮のそれはまた違った
感動を与えてくれるものだった。
登場する全ての踊りが、季相日監督の手腕で素人目には踊りのアラなど全く感じない仕上がりになっていた。
横浜流星もW主演と言えるほど歌舞伎界の御曹司になりきっているし、この二人が渡辺謙を食ってしまっている。
始めに登場する吉沢亮演じる喜久雄の父親役の永瀬正敏。
あの雰囲気は存在するだけで画面が締まるようだし、他の方のレビューにあるように田中泯演じる女形の万菊!
さすがに上手すぎて、もともと歌舞伎の女形では⁇と思うくらい言葉遣い、手の振りなどなど登場する度に魅入って
しまった。
実際の歌舞伎は玉三郎と團十郎を少し観覧しただけだけど、この映画を見てもっと他の作品(少なくとも
曽根崎心中は…)も見てみたいと思う。
吉沢亮が林修の初耳学で、李監督の作品に主演したくてこれまでもオーディションを受けていたと語っていたが
満を持してこの作品に巡り会えて良かった。
自分達が彼の喜久雄を見ることが出来たから。
吉沢亮と横浜流星がこの作品のためにどれだけの修練を重ねたのだろう。
演技をすると言うことは終わりがない道をひたすら歩くことなのかもしれない。
意外な「発見」があって驚き。
内容は前評判のごとく最高だった。近年見た映画の中では私としては最高傑作。
で、私が感じた意外な「発見」は次の通り。
田中泯さんが小野川万菊を演じているときの顔の表情、特に舞台化粧をした顔を見た時にぞっとした。悪い意味の「ぞっ」ではなく、六代目 中村 歌右衛門丈の姿がかぶって見えたこと。残念ながら六代目 中村 歌右衛門丈が健在の頃の私は小学生で、舞台を見たことがないが写真だけは数多く見ていた。また、私が幼い頃にいたご近所のお婆さんが六代目 中村 歌右衛門丈にそっくりだったので、そのお婆さんの姿もかぶって見えた。
もう一つの「発見」は横浜流星クンが演じた俊坊の舞台化粧をした顔。特に前半の藤娘や二人道成寺の時の顔。中村七之助丈の姿を彷彿とさせた。お二人とも花が高くて細面なので似て見えたのかも?
しかし、歌舞伎指導を受けたとはいえ、歌舞伎役者としての演技をよくもまあこれだけできたものだと感心した。
原作をかなり以前に読んでいたが、もう一度読んでみようと思う。
原作が読みたくなった
糖尿病を舐めてはいけない
観終わった後良い意味で言葉が出ない
一言で言い表せられない。
「凄かったね〜よかったね〜」の次元じゃない。
歌舞伎を全く知らないわたしでも、
スッと世界に入り込める作品でした。
カンヌに呼ばれるような作品で、海外の人たちにも受け入れられるであろう素晴らしい作品だと感じるとともに、日本人である私たちがまず観るべき映画だと感じます。
そして役者の皆さんの圧巻の演技。
プロフェッショナルを越えるプロフェッショナルを感じて、ガーンと食らった感覚が止まりません。役者さんとはこうも凄いものなのかと思いました。また、それを形作った、映像チームや監督、脚本の方々まで、全員へ尊敬が止まりません。
3時間はあっという間でしたが、ご飯を食べてから見たのに終わった後心地よい疲労とまたお腹がすくような感覚。色々な人の魂を見せられたような感じで、カロリーをめちゃくちゃ消費しました。
歌舞伎のシーンは、思わず胸を押さえながら観ました。美しい映像美の中に、命をかけた演技。
やっぱり言葉で言い表せません。
万菊さんの歌舞伎は本当に美しい怖さでした。
映画館で観るという選択をした自分を褒めたいです。
思わずこの映画を作った方々全員に尊敬をするような、そんな映画は初めてです。
圧巻でした。
圧巻でした!
主役の吉沢亮さん、共演の横浜流星さん、
お二人とも、もちろん美しいのですが
それに劣らずの映像美。
冒頭のシーンから一気に飲み込まれ
最後の最後まで目が離せませんでした
SNSから「凄い!」の情報が絶え間なく
これは早く観に行かないと、
と思い朝一番の上演に向かいました
平日なのに結構な入り
人がまばらな前方席を選んだのがことを奏し
シネコンでも大きめスクリーンだったので
その迫力は何たるものや!
2人の少年時代を演じていた役者さんも
素晴らしかった!
2人の少年の歌舞伎に対する真摯な想いが
日常の全てのような生活、
そしてお坊ちゃんである「俊ボン」も
意地悪なセリフは初対面の時だけで
それからは一緒に切磋琢磨する姿が
とても微笑ましかったです
だからこその
その後の対比に引き込まれました。
また
最初に喜久ちゃんが胸ぐら掴んで
罵声を浴びせた相手とその後も長いお付き合いに
本音でぶつかり合えるって言うのは
いいなぁ、その後も嘘なく付き合える。
そう言う相手ってリアルに大切だと思った。
その役者さんも好きなんですよね〜
上演時間3時間と
かなりの長編でしたがあっという間でした
原作は読んでいませんが、
映画が先でも楽しめるとのSNS情報。
ただ、後半はスイスイ話が進むので
もしかしたら原作を先に読んでいたら
ちょっと物足りなさを感じるのでは?
と思いました
映画を先に鑑賞するのは
正解なのかも
原作、ぜひ読みたい
そして歌舞伎、観に行きたい!
そしてそして
もう一回映画館で観たいなぁ〜、と。
ぜひ今から観る方は
できるだけ大スクリーンで観て!
また、前方席がお勧めです!
任侠と歌舞伎がカンヌにウケないはずがない
予告の期待を裏切らない
PG12(閲覧注意)映画です
高評価レビューが多く、注意喚起も見当たらなかったので、観に行ってきました。
歌舞伎の映画ということで油断していたのもあります。
でも、
PG12は、暴力的な表現や性的な内容が含まれている場合があり、小学生には不適切とされるものに付けられます。
実際、冒頭から父親が銃殺される場面あり、その後も、殴る蹴るや厳しい指導、中盤以降は病気による吐血、足の切断等、凄惨な場面が散りばめられています。
私は、血を見るだけで気分が悪くなる体質のため、途中から気分が悪くなってしまいました。
美しい歌舞伎の舞台と、凄惨な場面とのミルフィーユを3時間、何とか耐えましたが、行くかどうか迷っている方で、血や暴力に弱い人はやめておいた方がよいです。
以上、注意喚起でした。
演技合戦は面白いが、演出はどうかな
役者の魂
全1621件中、301~320件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。