劇場公開日 2025年6月6日

国宝のレビュー・感想・評価

全1619件中、201~220件目を表示

4.5映画予告で、よくある音楽コンサートやバレエなどのリアルパフォーマン...

2025年6月11日
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鑑賞方法:映画館

興奮

知的

ドキドキ

映画予告で、よくある音楽コンサートやバレエなどのリアルパフォーマンスを収録して映画にする、その歌舞伎版だと勘違いし、観に行くつもりはなかったのですが、そうではなかったようで観に行きました。(横浜 流星氏推しもあり)
歌舞伎世襲社会に対するアンチテーゼなのか、いやいや私のような歌舞伎を知らない人間に向けた異世界への誘いなのか、はたして・・・・。

前半は抗争で死亡した任侠組長の息子・立花喜久雄(吉沢 亮)と、歌舞伎名門の子・大垣俊介(横浜 流星)の二人の青春成長物語。互いに励ましあい、競いながら、やがて二人で晴れの舞台にて舞う姿にすがすがしさを感じます。また、演出も演題名が表示されて素人には親切ですし、スペクタクル系洋画のような壮大な音楽と歌舞伎のお囃子音が互いに邪魔をせず、引くところは引き、出るとこは出てと、全体を通じて大変良い音楽構成でした。(エンドロール時の音楽も良し)
中盤からは「世襲」を軸に物語は転じていきます。実子・俊介を推す母・幸子(寺島 しのぶ)と、芸で喜久雄を推す父・半二郎(渡辺 謙)との確執・葛藤は周りを巻き込みつつ、仲良くやってきた二人の関係を微妙にしていきます。芸能で歌舞伎だけでしょうか、こういった世界。他所を遮断し、実子を小さい頃から稽古積ませば、そりゃあ二番のいない「一番の芸人」になります。でもこの話で喜久雄は、任侠社会とはいえ組織の頭に成り上がれる才覚を持つ人間の「非凡な血」を持っているわけで、その非凡な血が歌舞伎世界に入り込み、その才を開花させれば、簡単に世襲社会は混乱します。(ですからこのように一本の小説が書けてしまうわけですが。。。)
そして終盤、小野川万菊(田中 泯)の芸や芸人に対する目利きが(とはいえこの方の舞踊は迫力がありスゴイ)二人の悩める若者を正しき姿へと導きます。そして同時にこの少子化社会やパワハラ、セクハラ、様々なエンタメの発展など、現代社会が歌舞伎に襲いかかる懸念からをも救う道を示した。そう感じます。「国宝」というタイトルは主人公・喜久雄ではなく、小野川 万菊に当てたものと想像します。

吉沢 亮さん、横浜 流星さんにおいては、当作品に向けて大変な努力で正に「芸を積まれた」のではと思います。リスペクトの思いで劇中ずっと観させていただきました。素晴らしかったです。
歌舞伎をよく知っている方なら言わずとも必見の一本でしょうか。そして歳取っても歌舞伎を観に行く機会は無いだろうなと思っている私にも楽しめた時間でした。

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hiroishi

4.0日本映画。

2025年6月10日
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興奮

男性俳優はプロからレッスン生まで
全員この作品を映画館で観なさい。
これは義務です。

「最近の若手役者は芝居が下手」とか思ってる
オヤジ達も観なさい。度肝抜かれます。

歌舞伎を題材に心臓に襲いかかる
重圧を楽しむ日本映画。

吉沢亮、横浜流星は、この映画のために
どれくらいの“生息”を
悪魔に売りつけたのだろう。

日本に生きる価値のある3時間10分。
(本当はもーちょい長くしたかったんだろーなー。あのシーンとか)
怒涛とはこの事。

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梶野竜太郎

5.0至極の極上映画

2025年6月10日
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鑑賞方法:映画館

ものすごく良かった。日本の国宝級俳優(渡辺謙さん、吉沢亮君、横浜流星君)の素晴らし過ぎる演技・演舞は一級芸術・美術の域、ダイナミックで華麗極まる映像が映画を最高潮の至極の名作に仕立て上げる。
『悪魔と取引しとったんや』の言葉の全貌が見えてくる。
今年度の日本アカデミー賞総舐め必須。日本ブームの世界にぜひ配給してほしい究極の名作。ぜひぜひ巨大なスクリーンで!

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masayoshi/uchida

5.0映画鑑賞料金が安く感じる作品 飽和状態の上映作品の中で別格であった...

2025年6月10日
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鑑賞方法:映画館

映画鑑賞料金が安く感じる作品
飽和状態の上映作品の中で別格であった長尺ではあるが最初から映画の世界に飲み込まれる気がつけば主題歌の神々しい音楽に包まれなんともいえない高揚感が1人の男の壮絶な人生…それはそれは美しく空虚で残酷であった
まず全ての演者素晴らしい美術が照明が音が撮影技術が全て最高だった…感謝

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カビゴン

4.5人間国宝に巣食うミミズク。

2025年6月9日
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鑑賞方法:映画館

吉沢亮が美し過ぎる。もう終始それに尽きる。あの横浜流星が霞んでしまうほどに圧倒的な存在感だった。年代毎の演じ分けも本当に見事でちょっとこれは衝撃でした。

世襲によって代々受け継がれてゆく歌舞伎というある意味閉ざされた伝統文化。私は詳しくないので今作のクオリティ、再現度に関しては分からないですが、めちゃくちゃ大変だっただろうなというのは十分伝わってきました。足先から指先まで所作も美しかった。

内容は数十年のゴタゴタがめちゃくちゃ詰めこまれていて、とにかく目まぐるしい。多少の事は置き去りでどんどん進んでゆきます。歌舞伎のシーンはとても興味深く、キャストも豪華で3時間もそこまで長いとは感じなかったです。強いて言えばエンディング曲がちょっと合ってなかったかな。あれだけの世界観なので無音でも良かった。

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はるたろう

2.5ストーリーがイマイチ

2025年6月9日
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鑑賞方法:映画館

吉沢亮と横浜流星、メイン2人の演技がとても素晴らしくて圧巻だったのですが、何も把握しきれないまま場面や状況が変わったり、登場人物の思考が全く理解できないまま話が進んだりするので、見てる側を置いてけぼりにするタイプの映画だと感じました。
3時間あればもっと綺麗にまとまったのでは?と思うし、オチもよく分からず、ひたすら鬱々とした雰囲気が続くようなそんな映画でした。

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おい工藤

3.0影の主役は糖尿病

2025年6月9日
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歌舞伎については海老蔵ぐらいしか知識がない歌舞伎初心者だが、この映画の歌舞伎シーンの完成度には驚いた。
本物と見紛うばかりの迫力で、特に吉沢亮と横浜流星の歌舞伎の演技は圧巻の一言。
まるで『ミッション:インポッシブル』シリーズでトム・クルーズのアクションを目当てに観るように、この映画は二人の歌舞伎シーンを堪能するためにあると言っても過言ではない。
吉沢亮ファン、横浜流星ファン、歌舞伎ファンなら大絶賛間違いなし。
個人的には、渡辺謙の老いた演技も非常に印象的だった。

一方で、歌舞伎シーン以外のドラマ部分には物足りなさを感じた。
物語をドラマチックになるように繋げているだけ。
話に深みがなく、やや陳腐に映った。

ドラマが収拾しそうになると糖尿病が暗躍し始め、物語が大きく動き始めるという構造。
糖尿病の恐ろしさは十分伝わった。

吉沢亮演じる喜久雄が「歌舞伎が上手くなるなら他は何もいらない」と語る場面があったが、恋人からのプロポーズを断ったのならまだしも、実際は逆で、さらに別の女性と子供をもうけていて、彼の言葉に説得力を感じられなかった。

才能があっても成功しない歌舞伎の世界って酷いと感じたが、夢が思い通りにならないことの方が普通なわけで、例え地味な活動になったとしても、献身的に支えてくれる女性がいるだけで十分幸せなのではないか、と感じてしまった。

波瀾万丈な物語の末にたどり着いた状況を見た時、「最初からそうすれば良かったのでは?」という思いが頭をよぎった。

クライマックスの歌舞伎シーンは、『侍タイムスリッパー』を彷彿。
この場面は序盤の「ドスで親の敵討ち」の場面との関連性を示唆しているようにも思えたが、「だから何?」と感じてしまった。

李相日監督の作品には毎回濡れ場が登場する印象があるが、本作の濡れ場には必然性を感じられなかった。
まるで女優のエロいシーンを撮りたいだけのように見えてしまい、残念だった。

ラストで滝内公美が「国宝」についてディスり始めた時は、「国宝が題材の映画でこれは斬新」と驚いたが、家族を捨てた人物をあっさりと許してしまう展開には、思わず「はあ?」となってしまった。
「天才は何をしても許される」という考えが嫌いなので。

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おきらく

2.5少し途中で飽きた

2025年6月8日
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中盤まではこう、イケメン二人が切磋琢磨してて、えづらが華やかでいいな、と見れてたが、中盤以降見るのがだれてしまった。

適当なレビューでごめんね。まあ、メッセージ性のある映画ではなくて、小説、物語、娯楽だった。小説が好きな人にお勧め、僕には3時間は長すぎた。90分ぐらいが良かったかな。

あとは蛇足だけど、歌舞伎の面白さ、凄さを表現するために観客が拍手するシーンが多用されて、それがやだった。直接的に観客に歌舞伎の良さが伝わらないのを制作側知ってるから、間接的な拍手シーンばっかりなのかなって。歌舞伎凄いアピールいらない。女形のシーンとか感動できなかったよ。
普段、歌舞伎見る時も、翻訳ラジオみたいなやつ借りて聞いてるから、何言ってるかわからないので。それぐらい心の距離あるから普通に。

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スティックロール

2.5なんかすごいのとすれちがった

2025年6月8日
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怖い

難しい

感はあるし、主演2人の演技はすごい。国宝のおじいちゃんの存在感もエグい
ただ、それだけで、映画として面白いかと考えると面白くはない

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ank78

4.5長い以外欠点無し

2025年6月7日
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今年のアカデミー賞間違い無し
作品、主演男優、助演男優、監督、脚本5冠決定かな!

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ムロン

5.0圧倒的完成度

2025年6月7日
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知的

驚く

原作未読です。

見る前は「主役に歌舞伎役者使わなくて良かったのかな、優れた歌舞伎役者の役なんだし…」なんて思ってたんですが、本気で土下座ものです。

吉沢亮と横浜流星が凄すぎます。
どのくらいの練習量だったのかわかりませんが、所作に無駄がない隙がない、表現力の塊…。

長尺ではありますが、それで良かったなと思える作品です。

僕は歌舞伎とは全然縁のない生活しているから、内容についていけるかな?と思いましたが全くの杞憂でした。
テーマにあまり惹かれない人にも是非一度見て欲しいです。

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さかもと

4.0画面の顔面偏差値が高すぎる

2025年6月6日
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悲しい

知的

難しい

原作が面白すぎたので見に行った。
とにかく吉沢亮と横浜流星のタッグは強力すぎる。
顔だけで間が持つ持つ(笑)
渡辺謙の存在もデカい。説得力がすごすぎる。
原作のイメージを損なわない映画で良かった。
歌舞伎も本だとよくわからなかったけど映像だとすごくよくわかって良かった。
色々原作からの変更はあったけど、良い映像化としか言いようがない。
最後の舞台はフラガールっぽかった。(監督が同じだし)
見に行くまでの期待が高かったので公正なレビューができない…。
もうちょっと反芻したい。

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いくみ

3.5才能

2025年6月6日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

驚く

内容とキャストを知ってから楽しみで、初日に鑑賞。
もちろん喜久雄と俊介を演じる主演のお二人が素晴らしい。
でも私の1番の感想は、黒川想矢くん天才すぎませんか?!だった。彼が出てる間ずっと目が釘付け… 才能を見抜かれる前半のストーリーの説得力半端ない…
声の出し方、本当に芸妓さんかと思えるような柔らかな動き… 最初誰かわからなくて、メイクを落として、えっ、黒川想矢くん?!と驚き。
「怪物」の時とは全く違う雰囲気。

歌舞伎のシーンは役者さんたちの演技も素晴らしかったし、そのシーンを支えるすべてにすごい熱量を感じた。あまり歌舞伎には詳しくないけど、歌舞伎好きな人にはどう映ったのだろうか?

テーマは少し違うけどつい内容的に覇王別姫を思い出しながら見た。
芸に生きる天才が周りの人達を傷つけてそして自分たちも傷つきながら進んでいく姿が少し重なる。
彼らに翻弄される女性たちの心情がもう少し丁寧に描かれていたらよかったのに、とは思うけど、すでに180分だから難しかったのかな。

ラストシーンに続くエンドロールの主題歌がとても良かった。映画の内容とシンクロしていて、井口さんの美しい声が沁み入ってきた…今度探して聴こう。

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らべ

2.0なんでこんな高評価か疑問

2025年8月1日
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鑑賞方法:映画館

難しい

オープニングの永瀬と奥さん、子役の演技は、映画をちゃんと観させられてる感があって迫力もありとても良かった。
横浜流星、吉沢亮の演技は素晴らしいかったのはわかるが、国宝と言われても、、歌舞伎がどうしてそんなに崇められるのか結局謎。
映像美と役者魂を見せつけられた3時間でした。
相変わらずの少し意地悪さの残る寺島しのぶの演技はいつもと変わらずで感動には及ばない。

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スターズ

1.5一流食材で作られた三流料理

2025年7月22日
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俳優さんたちがとにかくすごいです。
特に吉沢亮の歌舞伎の舞やセリフ、田中泯の独特な間や存在感。

しかし一方で全体を通して何を描きたいのかボケすぎでした。
原作が悪いのか脚本が悪いのか演出が悪いのか。

また、例えば年をとった姿を表現しようとしながらまぶたが生き生きとしているなど、特殊メイクもだめで、そういったことがいちいちノイズになりました。

俳優さんたちはものすごいけれど、こういう映画を評価していると日本の映画がどんどんだめになっていってしまいそうなので星1.5にしました。

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ぶらん

4.5哀しさを感じる

2025年7月22日
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鑑賞方法:映画館

抗争によって父を亡くした喜久雄(吉沢亮)は、花井半二郎(渡辺謙)見込まれ、歌舞伎役者の道を歩みだす。そこで半二郎の血を受け継ぐ俊介(横浜流星)とともに芸を磨きながら、正反対の二人が、才能や血筋に悩みながら壮絶な人生を歩んで行く。最初から最後まで「哀しさ」をずっと感じた。その哀しさがより自分の心にジワッと染みてくる。

淡々と話が進んでいるように感じるが、人生の激しい喜怒哀楽をすべて感じる。そして出演している全ての役者さんの激しさに感動する。
すべてに圧倒される作品だった。

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Kunihiro.Tanaka

4.5探していた雪景色

2025年7月21日
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歌舞伎界を舞台にした本作『国宝』は、単なる芸道ドラマではなく、血統と実力、伝統と個、愛と孤独、死と芸術の交錯する構造的悲劇でした。鑑賞中から、私は『さらば、わが愛/覇王別姫』との共通性を強く感じていました。どちらの作品も、「演目の中の死」と「現実の死」とが交差し、登場人物の実存が演技に呑み込まれていくという、メタ演劇的構造を持っています。

本作で演じられる『曽根崎心中』の演目は、その典型です。前半で吉沢亮演じる主人公が「お初」を演じ、横浜流星はその様子を舞台袖から見つめています。しかし、血統を継ぐはずの自分ではなく、実力で役を奪い取られたこと、そしてその演技の純度の高さに、自らが舞台を降りるという決断に至ります。この「役を譲る」行為は、単なる物語上のエピソードではなく、実人生の敗北と芸の前での降伏を象徴していました。

その後、彼は吉沢亮の恋人に手を引かれるようにして駆け落ちし、8年間行方をくらませます。演目内でも、女がお初として男を死へ引っ張る構図が描かれていましたが、それが現実の人物関係でも繰り返されているのです。この「女が手を引く」構図は本作において繰り返し現れ、それはもはや女性の象徴ではなく、「運命」「芸能」「死」のメタファーだと感じました。

やがて、先代(渡辺謙)が死に、横浜流星は帰還します。彼は糖尿病に侵されており、足を切断し、もう一方の足もやがて失われる運命にありながらも、舞台に立ちます。そして、演目『曽根崎心中』の中で「お初」を演じ、吉沢亮が「徳兵衛」を演じる。役は入れ替わり、まるで魂が交差し、芸が人物そのものになっていくような錯覚を覚えました。

そして物語の終盤、横浜流星は舞台の上で死んでいきます。彼の死は、まさに「役の死」であると同時に、「人としての死」であり、「芸の完成」でありました。吉沢亮はその彼に手を引かれて、つまり芸の死者に手を引かれるかのように、終幕へと向かっていきます。

この映画は、「血統主義の否定」というテーマを持ちながら、同時に「実力主義の残酷さと孤独」も描き出しています。才能ある者が、その才能ゆえに、すべてを捨て、倫理も家族も感情も捨て去り、ただ芸の頂点を目指していく。その果てに待つのは、必ずしも“幸福”ではない。人であることをやめて、芸そのものになるしかないという孤絶の境地です。

最終盤、吉沢亮が演じるのは『鷺娘』です。鷺娘とは、白鷺の精が人間の男に恋をし、報われぬまま狂い、雪の中で死んでいく舞踊演目です。この舞いは、彼の人生の総決算として選ばれたのでしょう。鷺娘は、一つの踊りの中で「清楚な乙女」「狂気に満ちた情念」「死者としての精霊」を演じ分けなければならず、それはまさに彼が生涯で演じてきた全存在の統合だったのです。

しかも、『国宝』という映画では、最初に父親が銃殺される場面でも雪が舞っており、その雪が映画全体を通して繰り返し現れます。父の死を見届けた少年時代の記憶、駆け落ち、別離、引き裂かれた娘との再会、そしてラストの鷺娘へと至るまで、雪は常に死と記憶と芸とをつなぐ結晶として現れていました。

終盤、リポーターに「なぜこの仕事をしているのか」と問われた吉沢亮は、こう答えます——「見たい景色がある」と。それは、舞台上で舞う自分の姿でもあり、父の死に際のきらめきでもあり、失った家族や愛の残像でもあり、芸の果てに見える“真実の雪景色”だったのかもしれません。そして、その景色は、ただ芸の最奥でしか見ることができない場所に存在していた。

技法的にも本作は見事でした。ディープスペースの使い方、舞台の奥行き、照明による雪のきらめきの際立たせ方、特にラストの鷺娘のシーンの紙吹雪とライティングは、まさに映像詩としての完成度を見せていました。

この映画は、表面的には「国宝になるまでの物語」ですが、深層では「芸が人をどう殺し、どう救うのか」「芸は血統を超えられるのか」「演目とは何か」「死とは何か」といった根源的な問いが織り込まれていました。
そしてラストシーン、芸の極致でようやく“見たかった景色”にたどり着いた吉沢亮の老いた背中は、まるで一つの命が雪の中に還っていくような静けさを湛えていました。

『国宝』は、単なる芸道ドラマではありません。これは“演じる”ということそのものが、人間を変え、焼き尽くし、最後に美へと昇華していく過程を描いた映画でした。日本映画において稀に見る、構造と象徴と感情が統合された傑作です。

鑑賞方法: TOHOシネマズ 池袋 SCREEN7

評価: 90点

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neonrg

3.0期待ほどじゃない

2025年7月21日
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鑑賞方法:映画館

ぶっちゃけ、万人受けしないこのジャンルの題材で、ここまで評価高いのは違和感を感じる。
吉沢亮の熱演は、素晴らしいものがあるし、役者として一皮向けた感を感じた。
が、余りに展開が早く、描ききれていない所など、映画として不整合も感じるし、ラストもウ~ンという内容。
悪い映画ではないが、絶賛するレベルでもなかったのが、率直な感想。

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エピファ

4.5人間賛歌

2025年7月19日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

知的

優れた芸術は多大な犠牲を生む。
しかし、人間は芸術を必要とする。

この作品の登場人物で安穏と平和な人生を送った者はいない。誰もが傷つき、運命に翻弄される。
それでも皆、歌舞伎を求め、自分の人生を全うする。

切なく悲しい群像劇だが、エンタメ賛歌であり、即ち、人間賛歌でもある。

劇場で見て良かった。十年に一本の傑作だと思う。

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パンダ

2.0どこをどう斬るかによるが

2025年7月9日
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鑑賞方法:映画館

斬新

映像は紙吹雪多すぎて華美と言えるほど美しい。
役作りを褒めちぎったら、ミッション・インポッシブルのトム・クルーズはさらに褒めちぎらなければならないことになる。なので、美しいとだけ。
狂気に寄ったストーリーは、ノンフィクション。ありそうな話でもあるが、創作なので終了。感動するものでもない。
舞台の迫力は素晴らしい。だが、歌舞伎のダイジェストなわけで、それで評価するのは、本物の歌舞伎に失礼。

「知ったかぶりするしかない映画」だ。
歌舞伎に通じている人は複雑だろうし、部分を見せられてスゴイと言ってしまえる人は、言うだろう。

では、何が残るかというと…
時間の長さの割に長く感じさせない展開のよさ。
多くの役者さんのいい表情。
そんな感じ。

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