劇場公開日 2025年6月6日

国宝のレビュー・感想・評価

全1619件中、1~20件目を表示

5.0「神様と話ししてたんとちゃうで。悪魔と取引してたんや。」【追記あり】

2025年6月5日
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鑑賞方法:試写会、映画館

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6月6日「稽古始めの日」に、映画館のスクリーンという“舞台”で体感すべき邦画が、カンヌから日本に凱旋しました。

「誰も見たことのない、吉沢亮がここに─」
昨年12月23日に解禁された、『国宝』のティザービジュアルと予告映像。

クランクアップ間もなかったという吉沢亮さんは、まだ役が抜けきれていない状態でのティザー写真の撮影でした。

レビュータイトルの喜久雄の台詞のように、悪魔と取引したかのような神がかった表情は、“国宝的イケメン”という言葉では到底形容できない美しさでした。

中指で目尻に《朱》を入れる顔のアップ、《漆黒》の着物に《白》の半襟、《白》い背景。このミニマムなカラーの写真1点で、見事に『国宝』という映画の世界観を表現していました。

映画.comのフォトギャラリー画像(35)でも見られるこのティザービジュアルは、特報の映画ポスターに使用され、今年5月のカンヌ国際映画祭でも披露されました。

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吉沢亮さんという俳優は、つくづく不思議な役者だと思います。

自らを「お芝居依存症」、親友の北村匠海さんからは「ぼくが知り得る中で、一番芝居バカ」。

吉沢亮さんの特撮ドラマ出演作に、横浜流星さんが俳優デビューでゲスト出演した『仮面ライダーフォーゼ』。初共演の吉沢亮さんの役名が「流星」で、13年後の『国宝』の競演に運命を感じます。

代表作の大ヒット映画シリーズ、『キングダム』の秦の若き始皇帝・嬴政と、『東京リベンジャーズ』の暴走族のカリスマ総長・マイキー。2作品とも“王”や“トップ”の圧倒的なオーラで、主演を超える“主役”の存在感です。

昨年9月公開の「コーダ」を演じた『ぼくが生きてる、ふたつの世界』。静かで小さな作品でも、高い評価で配信後も劇場上映が続いているロングラン作品です。

今年31歳になった吉沢亮さん本人は、「一生大好きなコメディだけに出ていたい(笑)」と、少年のように透き通る瞳を輝かせて笑顔でコメントしています。

役者としての“夢”の一つであった、李相日監督作品へ、主演として出演が叶った『国宝』。完成報告会での渡辺謙さんの言葉通り、俳優・吉沢亮の新たな代表作となることを願って─。

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【5月18日カンヌ映画祭】
第78回カンヌ国際映画祭・監督週間部門公式上映にてワールドプレミア。吉沢亮さん、横浜流星さん、渡辺謙さん、李相日監督の4人が登壇。

現地の機関誌では
「歌舞伎の生まれではない映画の俳優たちが
とてつもない大きな挑戦に挑んで
結果として非常に絶大な説得力を生みだした。

そして映像の美しさ。
特に歌舞伎の舞台をみる映像は
一枚一枚の絵画のような美しさであった。

最後に2025年のカンヌ映画祭の中で
最も美しい映画のひとつであった。」
と結ばれていました。

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【5月30日京都】
世界遺産・京都東寺では初の映画上映イベントとなるジャパンプレミア。国宝指定の金堂の扉が開き、キャストと監督の9人がレッドカーペットに登壇。

《黒と白と深緋》のスーツやドレスでスタイリング、『国宝』カラーでほぼシンメトリーに横一列に並び、雨上がりの東寺の借景に溶け込んでいました。

日本人のDNA、というよりこの作品の表現を借りるなら、自分に日本人の血が流れていることを感じて息を呑んだ瞬間でした。

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【6月6日追記】
映画の撮影にエキストラ参加しました。歌舞伎の数ミリ単位の型を、数センチずつ角度を変えたりしながらテイクを繰り返し、数秒・数分のシーンを1日かけて撮影しています。

公開前には「何故本物の歌舞伎役者を使わないのか」、という声もありました。映画を観た後なら「何故吉沢亮と横浜流星だったのか」、説明は要らないと思います。

P.S.
レビュータイトルの「悪魔と取引」という台詞は、終盤に伏線回収されます。シークレット・キャストのシーンなので、お見逃しなく…

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P.S.2
6月18日、第27回上海国際映画祭で上映。フランス・スイス・オランダ・韓国・香港・台湾、9つの国と地域で上映が決定。

配給の東宝(TOHO Global)×製作のアニプレックス(MYRIAGON STUDIO)による、海外展開を期待しています。

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【6月20日追記】
屋上の“マジックアワー”のシーン。喜久雄の涙の舞いとつぶやく台詞が、吉沢亮さんのアドリブだと知りました。

もう一度映画館に行って、喜久雄が芸に生きたように吉沢亮が役を生きていることを、目に焼き付けてきました。

映画館で驚いたのは、2週間前の初日には予想できなかった若い年齢層と、「歌舞伎」というワードからは想像できない観客層でした。

映画が大ヒットすると、良い意味で作品が一人歩きすることを、映画館で再確認してきました。

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【6月27日追記】
『国宝』は当初4時間30分の長尺で、興行的な事情で、監督と脚本家が3時間に再編集して公開されたそうです。

映画では長崎以降登場しない徳次(下川恭平さん)は、ラストで楽屋暖簾に名前が見えたので、人間国宝になるまで喜久雄を支え続けたのだろうと思いました。

寺島しのぶさんが「李相日監督の撮影量はえげつない(笑)」と舞台挨拶で暴露。吉沢亮さんと横浜流星さんが「一番練習した『藤娘』の数十分が17秒に。ストリップ小屋の前座や、苦労して撮影したシーンがカット」

李相日監督が上海国際映画祭でコメント。「いつか『さらば、わが愛/覇王別姫』のような映画を撮ってみたいという想いを持っていた」

李相日監督の15年前に一度頓挫した企画、吉田修一の映画化は無理と言われた新聞連載小説、吉沢亮の6年前の大ヒット作『キングダム』、三者の邂逅。「吉沢亮の喜久雄ありき」の主演オファーは、「歌舞伎を見せる以上に“歌舞伎役者の生き様”を撮りたかった」

歌舞伎指導をされた中村鴈治郎さんが、吉沢亮さんと念願の対談。「喜久雄という役を演じながら、同時に歌舞伎の演目の役を演じるという、二重の芝居は僕ら歌舞伎役者にはできない」

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P.S.3
6月15日、公開10日間の観客動員85万人、興行収入11.9億円。前週比143.4%を記録。

6月22日、累計成績は動員152万人、興収21.4億円を突破。
*6月23日、大ヒット御礼舞台挨拶。吉沢亮さん「うれしい限り」

6月29日、動員231万8,016人、興収32億6,795万7,800円。『ファーストキス』を抜いて2025年公開邦画実写No.1。

7月6日、動員319万145人、興収44億8,322万2,200円。4週連続で前週比を超える伸びは、2000年以降の東宝配給作品では初の快挙。

7月13日、公開38日間の動員398万1,798人、興収56億732万7,700円。

7月21日、公開46日間の動員486万5,642人、興収68億5,464万9,900円。

7月24日、公開49日間の動員510万人、興収71.7億円を突破。
*7月25日、特大ヒット記念舞台挨拶。東宝によると興収100億円突破を見込める勢い、吉沢亮さん「本当に感謝しかない」
7月27日、公開52日間の動員538万人、興収75.9億円を突破。

*8月2日、SNS「吉沢亮を、高倉健(南極物語)、織田裕二(踊る大捜査線)に次ぐ、100億円の男に」
8月3日、公開59日間の動員604万人、興収85億円を突破。安定の『鬼滅の刃 無限城編』(7/18公開)や、『TOKYO MER 南海ミッション』(8/1公開)の登場にも関わらず、前週比100%を記録。

*8月10日、特大ヒット記念舞台挨拶in大阪・京都。映画の撮影も行われた2都市で、李相日監督と吉沢亮さんがティーチイン。
8月11日、公開10週目を迎えて67日間の動員677万人、興収95.3億円を突破。

8月17日、公開73日間の動員747万3,454人、興収105億3,903万3,400円。歴代興行収入ランキング邦画実写において、『踊る大捜査線 THE MOVIE THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年公開/173.5億円)、『南極物語』(1983年公開/110億円)に次ぐ第3位の成績。
*吉沢亮さん「こんなにも沢山の方に愛していただき、僕自身にとっても特別な映画になりました」

8月21日、公開77日間の動員782万9,237人、興収110億1,633万2,800円。歴代興行収入ランキング邦画実写において、『南極物語』(1983年公開/110億円)を抜き『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年公開/173.5億円)に次ぐ第2位の成績。
8月24日、公開80日間の動員817万人、興収115億円を突破。

8月31日、公開87日間の動員886万人、興収124億円を突破。

9月7日、公開94日間の動員946万人、興収133億円を突破。

9月15日、公開102日間の動員1,013万5,998人、興収142億7,232万1,300円。

9月21日、公開108日間の動員1,050万人、興収148億円を突破。

9月28日、公開115日間の動員1,092万人、興収154億円を突破。

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P.S.4
8月28日、第98回米国アカデミー賞国際長編映画賞部門(旧外国語映画賞)の日本代表に決定。映画製作者連盟(映連)が、申請のあった9作品から選出と発表。李相日監督にとっては、2006年公開の『フラガール』以来2度目の代表作。

各国の代表作から米アカデミー会員の審査を経て、最終審査の15本から2026年1月にノミネート作品の5本が発表され、3月15日に米ロサンゼルスで開催される予定の授賞式にて受賞発表。

同賞は、2024年に役所広司主演の『PERFECT DAYS』がノミネート、2022年に濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』、2009年に滝田洋二郎監督『おくりびと』(当時は外国語映画賞)がオスカーを受賞。

9月3日、東宝の米国子会社である配給会社GKIDSが、北米での配給権を獲得したと発表。2026年初頭に劇場公開を予定。英題は『Kokuho』。

10月3日、北米配給のGKIDS発表。『国宝』が11月14日にロサンゼルスで、11月21日にニューヨークで公開。今後全米での公開も予定。

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5月30日試写会で鑑賞
6月6日・6月20日映画館で鑑賞
6月1日★★★★★評価
6月2日レビュー投稿
6月6日・6月20日・6月27日レビュー追記
6月9日・6月16日レビューP.S./P.S.2追記
9月29日レビューP.S.3追記
10月3日レビューP.S.4追記

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ひな

4.0となりの人間国宝‼️❓

2025年6月6日
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そもそも人間国宝は国宝級の技術があるとゆう証では無く、絶滅危惧種のような職なんで国宝レベルに保護しようとゆう制度なのだが、いかんせん数ヶ月の鍛錬で、数十年の芸を現すのは無理があり、ある意味痛々しいのだが、さすが大河主役の二人、それなりにまとまりがある。それと、三時間の初めの1時間、子役の3人の演技と演出が凄すぎて、残像の中での後半、停滞感は否めない。だが、2人の演技は凄い、それと、周りの演技も凄い、芸者の見上愛、高畑充希、もさすが朝ドラヒロイン、その他の俳優も惚れ惚れする。でも、女型のドサ回り踊りに需要はあるのだろうか、原爆遺族とはいえ少年の犯す殺人未遂が一年で放逐されるだろうか、いや、瑣末なことか。ただ、原作の意図はなんだろう、世襲をぶち破る芸の生き様なのか、芸を極めたら見えない景色が見えるのだろうか、最後までわからなかったが、とても良い演技の景色がみえました、ありがとうございました😊😭

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アサシン5

4.5映画自体が国宝級

2025年6月6日
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被写界深度を浅くして奥のピントをぼかす撮影を多用。
ただでさえ難しい撮影にも関わらず、被写体のアップが連発します。
中でも吉沢亮さんや渡辺謙さんを捉えたクローズアップは尋常じゃありませんでした。
彼らの毛穴さえ分かるほどのアップ画面で少しでも動けばピントが合わなくなる撮影にも関わらず、迫真の演技を披露する彼らから片時も目が離せませんでした。

特に吉沢亮さん。
彼は喜久雄そのものでした。
歌舞伎役者として舞台に立つ者の生き様を見事に体現。
観るまでは首の太い吉沢亮さんに女形が務まるのか不安しかなかったのですが、とんでもない誤解でした。
彼が首を傾げる何気ない仕草にさえ女性としてのたおやかさを感じました。
渡辺謙さんが仰った「吉沢亮の代表作になる」という言葉に偽りがないと確信できる表現力でした。

そんな中、最も身が震えてしまったのが田中泯さんの万菊。
彼が手招きする妖艶な手のアップに思わず声を出してしまいました。
本当に彼こそ国宝級。
劇中、喜久雄と俊介が万菊の鷺娘を見て「怪物」とこぼし、更に「美しい」と呟きますが、まさに民さんの万菊をピタリと言い表した言葉でした。
あの人を引き込む民さんの声、仕草、演技、全てに魅了されてしまいました。

時代を表した衣装や小道具、セットに至るまで全てが作品の中へと、喜久雄の人生へと我々を誘ってくれる映画ですので劇場で鑑賞する事をおすすめします。

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かもしだ

5.0役者一人一人のセリフが刃物のように心に突き刺さる

2025年6月7日
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 フィクションであることを忘れて、目の前で起こる出来事に感情を押さえることができない。
 劇中で曽根崎心中の「お初」になりきらないと、「お初」の言葉として相手に伝わらない。そう言った演技指導のシーンがあるが、まさに演者全員が、登場人物と同化していて、役者一人一人のセリフが刃物のように心に突き刺さる。

 余興の歌舞伎から一気にヤクザの出入りと、たたみ込むようなプロローグで虚構の世界に引きずり込まれる。黒川想矢の演技力は、過去作品で折り紙付きとなっているが、あらためて驚嘆です。中性的な顔立ちをしていながら、狭客的な生き方に憧れ、行動する少年喜久雄のナイーブな表情がなんともいえない。

 ジェットコースター的に立ち位置が、上下左右に入れ替わる展開。今、振り返ると作為的に感じるが、鑑賞中は、それが必然として進むため、ますます没入してしまう。
 ヤクザの遺児でありながら、役者の才を認められて猶子のように育てられる喜久雄。同い年で実子の俊介。二人とも女形に必要な妖艶さを生まれながらに備えている。

 歌舞伎という舞台装置。舞台の裏側にもカメラが回ることによって、現実と錯覚させる構成の妙。虚構と現実が一体化する。
 音響・美術は極上。劇場で鑑賞する一択の作品でございます。

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bion

4.0濁流に飲まれたかのような気持ちで映画館を後にした。

2025年6月14日
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歌舞伎に疎い私でも、別の仕事と並行して、1年半でここまで歌舞伎役者を見事に演じ切った喜久雄演じる吉沢亮と、俊介演じる横浜流星が尋常ではない努力をされたのは誰が見ても感じ取れる。
型は違えど、きっとこの2人も演じることに取り憑かれた人たちなんだろう。彼ら2人がいたから、この作品がここまでの完成度と説得力がある作品になったことは間違いない。

そして彼らの幼少期を演じたのが、新人アカデミー賞を受賞した『怪物』の黒川想也くんと、『ぼくのお日さま』の越山敬達くんという、これまた胸熱な2人なもんだから、誇張無しに喜久雄と俊介の幼少期からずーーーっと隙がなく素晴らしい。
黒川くんの女型なんて、あの歳でなんであの色気を出せるのか、昔話で人間を化かす妖怪ってこんな感じなんだろうなとさえ思えた。
なのに練習シーンで見せた、上半身のあの筋肉質で引き締まった男らしい身体に驚く。彼の日本アカデミー賞でのスピーチでも感動したけど、今後がとても楽しみな役者さんだ。

さらには田中泯さん演じる万菊。滲み出る『人間国宝』の凄みと気品で、田中泯さん自身は歌舞伎役者では無いのに、もう何十年も歌舞伎の世界に身を投じていた人物にしか見えなかった。招く手の所作まで、細部に至る全てが美しかった。

そう、この作品は3時間ずっと美しいのだ。

それは李監督がいつも作品で見せてくれる、人間の美しさなんだろう。もちろん吉沢亮と横浜流星という外見の美しさもあるけれど、単純に外見の美しさというわけではなく、醜く足掻く姿も美しく、汗と涙でぐちゃぐちゃな姿も美しく、そういう壮絶な人生が放つ、常人では放てない美しさが始終作品から放たれていた。

喜久雄の人生を3時間で描くため、若干物足りないところもあったし、あのキャラはその後どうなったの?とか、ここはもう少し丁寧に見せて欲しかったなーという箇所も無かったわけではないけれど、これでもだいぶカットしたんだろうなと思う。
演目で彼らの心情や想いを語らせる、生き方をダブらせるという手法は、歌舞伎の演目を知っていないと少し難しい。

私は『曽根崎心中』しかあらすじがわからなかったので、鑑賞後に他の演目を調べたところ、思わず「そういうことかー」と声が出た。これを知った上でもう一度あの歌舞伎のシーンが見たい。

極道一家の息子に生まれ、歌舞伎の世界に入る喜久雄と、歌舞伎一家のサラブレッドの俊介。
芸をいくら磨いても、血縁という強固な絆とお守りには勝てないと思う喜久雄と、その血によって苦しむ俊介。2人の立場の違う無いものねだりの若者が、芸を極めるために、もがき苦しみ、執着し、追い求める様の熱料は凄まじく、芸を極める以外の全てを捨てた者が辿り着く先が『国宝』なのかと思うと、畏怖感に震えた。

実際歌舞伎の世界で生きている人たちから見たら、この作品はどう映るんだろう。実際の人間国宝の方々からの感想を聞きたくなった。

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AZU

5.0これほどの作品には滅多に出逢えない

2025年6月30日
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人生は舞台、そんな言葉が脳裏に浮かぶほど、本作はあらゆる場所に舞台的状況を出現させる。観客がひしめく劇場はもちろん、雪景色の中では窓越しに惨劇を見つめ、稽古場のみならず川辺や病室にも舞台は現れ、かと思えば、場末の宴会場、それに誰もいない屋上でただただ自分のためだけに踊る場面もある。かくなる経験を重ねながら、才能に魅入られた青年が、血に見出され、血に呪われ、芸事の道をひたすら歩み続ける。その姿は圧倒的に孤独で壮絶。兄弟同然の二人が互いの存在に身を反らし、しかし鏡のように向き合い、照らし合う様も大きな感動を呼ぶ。何のために踊るのか。本作は3時間かけてその答えを探し求める果てなき旅路だ。圧倒的な存在感で役を生きた二人。その若かりし頃を担った二人。李作品の柱たる渡辺。それに手のひら一つで舞う田中。誰もがあまりに見事。歌舞伎の音階を損なわず、深いところでドラマ性を奏でる劇伴も胸を揺さぶってやまない。

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牛津厚信

5.0俳優・吉沢亮の代表作、ここに誕生。魂が震える、芸の一代記!

2025年6月10日
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映画『国宝』を観てきました。
言葉を失うほどの余韻に包まれ、今もまだ心が震えています。
これはもう、今年度のアカデミー賞を総なめにしてもおかしくない、圧巻の一本でした👏

『悪人』『怒り』などで知られる李相日監督が、再び吉田修一の小説を映画化。
任侠の家に生まれながら、歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げた男の激動の一代記を描いた人間ドラマです。

まず何より、吉沢亮さんの“女方”役が凄まじい。
演じているというより、「役が宿っている」と表現したほうがしっくりきます。
国宝級イケメンの彼が、顔を白く塗り、己の芸一本で勝負する姿はまさに圧巻。
「歌舞伎」という日本の伝統芸能の世界は、一筋縄ではいかない道のりだったはず。

李監督が、なぜ歌舞伎役者ではなく吉沢亮を主演に選んだのか──
その理由を語るインタビューを読み、「なるほど」と納得しました。
その熱烈なオファーに応えようと、苦しみながらも挑み続けた日々さえも、
“芸の肥やし”となり、この作品を輝かせています。

“国宝”というタイトルにふさわしい生き様と芸が、吉沢さん自身の演技によって命を持ち、
観る者の魂に深く突き刺さる。
まだ上半期ですが、日本アカデミー賞主演男優賞の最有力候補といっても過言ではありません。

そして、昨年『正体』で同賞を受賞した横浜流星さんの存在感も素晴らしかった。
まさに作中のストーリーそのもの──
若手実力派俳優同士の“芸道対決”が、本作の見どころでもあります。

横浜流星から吉沢亮へ──
イケメン俳優から“国宝級”イケメン俳優への夢のバトンタッチは、美しく誠実な“アシスト”。
師匠役の渡辺謙さん、その妻役で歌舞伎をよく知る寺島しのぶさん、重要なヒロインを演じた高畑充希さんなど、脇を固める俳優陣も豪華!
芝居の間合いや声の温度感すべてが、舞台のような緊張感と深みを生み出していました。

さらに、音楽と“無音”の演出がとても効果的。
歌詞のない打楽器の重低音が、歌舞伎という芸に込められた品格と魂を引き立て、
本物の舞台を観ているかのような臨場感を味わえました。

King Gnuの井口理さんによるラストの歌声も、まるで楽器のように物語に溶け込み、
観終わったあとまで美しい余韻を残してくれます。

ふだんなら高額なチケットを払わないと観られないような上質な歌舞伎の演目を、
映画という形で丸ごと堪能させてもらったような贅沢な体験。

じっくりと味わう映画がお好みの方には、特におすすめ🧐“観ておいて損はない”名作です。
映画ファンはもちろん、日本の伝統芸能に関心がある方にもお勧めしたい映画です♪

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ななやお

5.0演技と映像が神🏆🎖️🥇🎯🎰👏👍

2025年6月7日
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才能よりも血筋💪⤵️🩸⤴️❓❓❓
観るポイント次第で評価が変わるやつです!
結論から言いますが星5個では足りないんだが👹(このレベルの作品は滅多に無いというか過去数年を考えてもトップクラスの質です👑)
チャラいエンタメ作品では無いので話題だからって普段映画を観ないような人が国宝を観ても面白いとは絶対にならないと思うし役者の演技とかを映画を見る上で全く意識して無い人や映像の美しさやカメラワークなどを観るって視点が一切無い人だと超駄作って思う人も多数居るとは思いますが演技の上手さなどを意識して観る人だと(言い方が悪くなるけど玄人向け)相当衝撃を受ける作品だとおもいます👑(同業者や舞台などを経験してる人ならとんでも無いって思うと思います🫡あと100%全てを説明するバカセリフだらけの脚本では無いしナレーションとか全く無いのが良かったです)
しかも演技が出来て女方も違和感無い人となるとかなり人選も難しかったでしょうね!
指の先まで魂の籠った演技で☝️圧巻とか圧倒的とか鬼気迫るとか魂を削る演技とか憑依型演技とかって言葉がこれほどしっくり来る作品も珍しいかも(演技の凄まじさでいうとジョーカーやゼアウィルビーブラッドや市子やTARに近い感覚あるかな)近年ではこれほどの神芸術映画は無いです👾
内容が歌舞伎で3時間なのはハードル高く感じるでしょうが観る価値ありますよ😌
究極の映像美と(美術と衣装が神)構図の素晴らしさと(カメラワークも凄い)緩急の付け方の上手さと静と動の使い分けの上手さとあえて多くは語らず表情で語るシーンも多いし演技の出来る役者が100%を超えた演技をしている正に国宝級の映画👑泣かせる場面もオーバー演出では無く実にうますぎるし😭😭😭😭(流星のシーンで泣ける場面が多くて吉沢の場面で強烈なパンチ✊💥を喰らう感じでした😱)
観ていて思ったのが3時間あるけど無駄が一切無くて原作知らないけどかなり削ぎ落としたんだろうなとは思いました🤔(子供の頃から爺さんになるまでの作品なのでむしろ3時間でよくまとめたなっておもいましたよ!)
役者さんが演技してるっていうのを完璧に忘れるくらい歌舞伎の演技が凄すぎて魅入ってしまい脳🧠がバグりまくりでしたよ😵‍💫😵(気になり過ぎて後で歌舞伎の本物の映像観たら本物がとんでも無く凄くてハマりそうになってます🤯😳🥺🤤😵‍💫)
特に共演出来るのはこれが最後と悟った上での二人の演舞はエモ過ぎ😭(トキ🆚ラオウのような超絶名シーンだがや😭🤮)
クライマックスだらけと言っても過言では無いくらい名シーンと記憶に残る名セリフも多々あるし👍これくらい良い作品だと自分の好きなジャンルとか関係なく凄いとなってしまいますね👍(歌舞伎に興味無いとか全く関係ないから👍)
2度目の結論ですが😆今年度の日本アカデミー賞独占決定でしょ🏆(内容や映像や演技の凄さを考えると他の作品が国宝を越えるとかほぼ不可能だとおもいますよマジで🔥)
というか自分の中では2000年以降の作品でも上位に入ります‼️自分が観た中で近年で演技の凄まじさと(特に市子でヤバイってなる人は国宝も同じ感覚になると思います!)内容で魂を激しく揺さぶられた作品だとアフターサンと市子とニューシネマパラダイスと国宝くらいかな(演技を一切役者にさせなかったマイナスゴジラも逆の意味で衝撃受けましたけどね🤣)
間違い無く後々まで名作と言われる作品ですね🏆

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お主ナトゥはご存じか2.1ver.

4.5得体の知れない何かを求める人生の至福と過酷さ

2025年6月9日
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幸せ

当代の人気役者、吉沢亮と横浜流星が歌舞伎の世界で出会うライバル同士を懸命の演技でなぞっていく。任侠の世界から生来の才能を見込まれて歌舞伎の世界に飛び込んだ喜久雄(吉沢)と、名門の跡取りである俊介(横浜)を通して、才能か?血縁か?という命題に取り組んだ物語は、そんな比較論に収まらず、各々が命懸けで挑む美の探究の果てに、何が見えるかを垣間見せて緞帳を下ろす。出自に関係なく、芸を鍛錬する者だけが目撃する神々しい光の正体は何なのかは、正直よくはわからない。でも、得体の知れない到達点をただただ追い求める人生の至福と過酷さだけは、しっかりと伝わるのだ。

『国宝』は歌舞伎という日本古来のエンタメと、今を生きる若手俳優のトップ2人の献身が結びついて誕生した本当の意味での娯楽映画。読み始めたら止まらない吉田修一の長編小説を3時間弱の映画にまとめ上げた脚本は秀逸で、上映中時計を見ることはない(はずだ)。所作を含めた演技が美しい吉沢と、口跡と見た目で対抗する横浜(白塗りにすると中村七之助そっくり)を囲む脇役の中では、喜久雄の才能を会った瞬間に見抜く伝説の女形、万菊を演じる田中泯の妖艶さに痺れまくった。配役、美術、音楽も含めて、これほど贅沢な時間は年間を通してあまりない気がする。

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清藤秀人

4.0吉沢亮のプレッシャーを考えると、お酒の失敗も頷けた…

2025年7月12日
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知的

いやー凄かった…
吉沢亮も横浜流星も圧巻でしたわ!!
特に吉沢亮は『国宝』と銘打って伝統の歌舞伎を題材とした作品の主役としてのプレッシャーはとんでも無かったんじゃないだろーか!?そう言う意味では本人と役柄がシンクロしたかも!?
その中圧巻の演技だった。歌舞伎シーンも勿論、屋上での「どこ見てたんやろな」のシーンは印象的だった…。
アイリスオオヤマのCMの人とは思えんかった!笑
元々喜劇もでき、好きな俳優だったが益々好きな俳優になった。
他の役者も良かった!渡辺謙は勿論!!
寺島しのぶも流石関係者!居るだけでリアルに見えた。
田中泯も流石ですわ!存在感抜群!

ストーリーは前にNHKのドラマで見た『落語心中』に似た展開だったが、まずまずだった。
何度も何度も観たいと思う作品では無いけど印象的な作品だった。
ただひとつ思うのは何かが足りない気がした…
感動は吉沢亮達の頑張りに対して感じた物であり、ストーリー的に感じた物では無かった。そこが残念。

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トラ吉

5.0すごい映画を魅させてもらいました。

2025年6月11日
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泣ける

なんかすごい映画を魅させてもらいました。
仕掛けの多い脚本の面白さもさることながら、吉沢亮さんと横浜流星さんの演技には凄みさえ感じました。少年時代役も含め他の演者も全員良かった。
実際の歌舞伎は数回観ただけで詳しくはなかったのですが、この映画を観てその芸術性にとても興味が湧きました。

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光陽

3.0問題提起をしない「歌舞伎」映画

2025年6月6日
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泣ける

単純

驚く

関の扉に始まり鷺娘で幕が閉まるので、歌右衛門(六代目)と玉三郎を想起させられた。田中泯演じる万菊は闇の底からおどろおどろしく出てくる存在で、大昔に見た歌右衛門みたいだった。女形は年取ると性別を超越する、それを田中泯は素晴らしく演じていた。

話の中で特に重要な芝居が「曽根崎心中」なので、近松を復活させた上方歌舞伎の坂田藤十郎の息子の雁治郎が歌舞伎指導&出演で関わり、その息子で、踊りが上手くまだ30代の壱太郎(吾妻徳陽)が日舞指導をしたのはよいと思った。

吉沢亮の白塗りに紅の顔に、レスリー・チャンの類稀な美しさとしなやかな身振りを思い出した。60代になってからの鷺娘では、首の縮緬皺や手の甲の皺が積み重ねた年月を表していた。因縁の「お初」を横浜流星、徳兵衛を吉沢亮が演じる舞台。有り得ないこと続きで驚きつつも、涙なくして見ることができなかった。お初が徳兵衛の覚悟を自分の足で確かめるのが見せ場の芝居。文楽では女形のお人形に足はないが、お初の人形には足がつく。そのお初を左脚がない半弥(流星)が演じる。この芝居の道行きではお初が先導するのに、右足も壊死しているお初が花道で倒れた時、どうなるのか心臓がバクバクした。にも関わらず、或いはだからこそ心中場面も続けると言う徳兵衛・吉沢亮。その血を羨んだライバル・親友のとどめをさす、という演出なのか。

「壊死」で、幕末から明治まで活躍していた美貌の女形の三代目田之助について読んだことを思い出した。田之助は壊死で四肢切断しても舞台に出続けていたが廃業し33才の若さで亡くなったという。血の繋がりは顔かたちや体型や声だけでなく、病も遺伝するとしたら堪らない。芸は血の繋がりというより、生まれた時から親と同じ環境の中で生活し呼吸し見て聞いて、一日中、歌舞伎の空気と稽古の中で育つことを言っているのだと思う。血筋があっても芸や踊りが下手な役者がいる一方で、部屋子や(芸)養子で素晴らしい踊り手でいい芝居をする歌舞伎役者は数多いる。血筋のことばかりいうようになったのは、一体いつからなんだ?クラシック・バレエの世界では、血もどこの生まれの人間かも関係ない。頭の大きさや手足の長さ含めた外見で不利であっても日本人ダンサーは世界で活躍している。あるのは才能と努力と周囲からの援助のみ。音楽の世界も同様だ。

歌舞伎興業を担当する竹野を演じた三浦貴大が、ぽろっと口にする台詞がよかった。彼と吉沢亮が絡むシーンがもっとあったらと思った。

演じた本人も共演者なども高く評価している、汗と涙で顔のお白粉と紅がぐちゃぐちゃの屋上シーン。「さらば、わが愛/覇王別姫」のシーンを思い起こさせる。でも全く異なる。レスリー・チャン主演のその映画は、貧困と孤児に始まり、かつての仲間やパトロンが裏切られ密告され、多くの人々が糾弾され殺され翻弄された中国の歴史を批判的にとりあげた作品だ。その映画からの引用が浅薄で表面的でしかないのは、「国宝」というタイトルを冠したこの映画が世襲含めた「日本の伝統」というものに切り込まず、無批判のまま、個人的・私小説的お話の枠から一歩も出ていないからだ。映像は顔アップが極端に多い。立役の存在感がない。官能もない。全てが薄い。期待し過ぎた自分が悪いんだろう。

おまけ
1)父親=大旦那が亡くなった途端に跡継ぎを孤児状態にする歌舞伎の世界ってなんなんだ?でも名家の○○屋の跡取り息子は大旦那=父親を亡くしたら先輩方に頭を垂れて教えを請わなくては。年老いた大旦那の課題は一つ:踊ることも立って歩くことも座ることができなくなっても舞台に出ること、自分の息子&孫息子の為に。そんな家庭内興業で、役者の妻は男子を生むことが強烈に求められている歌舞伎はいつか滅んでも仕方ない。一方で「血筋幻想」と世襲が日本の芸能界や政治の世界でいまだ幅をきかせているが、歌舞伎の修行のように孤独な勉強と思考をしているのか?
2)原作を読んでいないのでごめんなさい。歌舞伎役者は踊りの稽古が何より大事。加えて鳴り物や三味線の稽古。女形の「国宝」なら、「阿古屋」を演じるレベルか、廃れてしまった演目を掘り起こすなどしていなければ説得力ない。
3)半蔵門にある国立劇場の楽屋入口が映った。正倉院を模した美しい建物をなぜ壊すのだ?建て替え工事を請け負う業者も決まらず使わないままでいたら、建物によくない。エレベーターもエスカレーターもある劇場だから、楽屋や舞台関連をリフォームすれば済む話では?ホテルを載っけて高層ビルにするなんて愚の骨頂。もう既に、文楽、通し歌舞伎、踊りや長唄の会などに多大な損害を与えている。建築物含め、文化と歴史と教育に無関心で無知な国に嫌気がさす。
4)この映画見てからずーっとモヤモヤしている。何故、今、このような映画が制作され大々的に宣伝され、信じられないほど高く評価されているのかわからない。歌舞伎を見たことがない人にとっては新鮮だった、は想像がつく。かつて「芸道映画」は、時代がきな臭くなり社会批判的なリアリズムの映画は検閲されたりと厳しい状況だったから作られた(ということは、今、そういう状況なのだと考えてもいいと思う。いや、もっと悪い。検閲どころか映画制作側の意味不明な忖度を感じる)。「芸道もの」の主人公は若気の過ちで封建的社会から追放され、苦しい放浪生活の中で人格と芸を鍛え、結局は許されて元の封建的秩序の地位に戻る。監督の手腕の見せ所は恋愛だが、女は自分を犠牲にして男に尽くし男は女の犠牲の上に芸の修行に励むという封建的な制限内に留まる。この映画では、多くの女性達が現れては消え、いつのまに?が多く雑だった。

🌟この映画で歌舞伎に関心を持ったら、一幕見(ひとまくみ)席や三階席で見て(切符は高くないし、どんな服でも大丈夫)、何度も足を運ぶ人が一人でも増えたら、いろんなことを考えるだろうし見えてくると思う。今、歌舞伎の世界は、20代~30代の若い役者が綺羅星のごとくひしめきあう、稀に見る時代だそうだ🌟

2025.8.29.の新聞で、大阪松竹座が閉館との記事を読んだ。なにやってんだー!劇場を大事にしてくれよー!

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talisman

4.515歳から国宝になるまでの波乱万丈の人生に凱歌あり!

2025年6月9日
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知的

幸せ

極道の息子として生まれた喜久雄(吉沢亮)、歌舞伎役者の息子として生まれた俊介(横浜流星)の見事な演技のハーモニーに酔いしれました。15歳から吉沢が国宝に登り詰めるまで(横浜は途中で糖尿病で亡くなる)を描いた波乱万丈の人生は、実に見応えがありました(この世に生きる全ての人は、波乱万丈の人生であるはずですが?)。二人は厳しい修行の人生を歩んでいますが、二人は実に楽しみながら芸を磨いている姿にリスペクトしかありません。歌舞伎は17世紀の江戸時代に誕生。その中でも歌舞伎の舞台で女性が演ずることは風紀を乱すということで、男性が女形を演じました(1629年に女性の出演が禁止されています)。この成立の不思議さに当時を調べてみたくなりました笑。個人的には歌舞伎にはほとんど興味がなかったのですが、この映画を通して、大衆芸術の奥深さを感じることができたので感謝です!(まだ初級です笑)。素人の私でも「見得を切る」という歌舞伎役者の重要な演技の面白さはよくわかる気がします。観客を魅了するクライマックスシーンだと理解していますが、映画で言えばラストシーンのようなもので、歌舞伎の新骨頂なのかもしれません(随所でその演技が見られますので、もう痺れまくりです笑)。二人が稽古中に天を仰いで「誰かに見られている」というシーンがありましたが、おそらくそれは芸の神様に見られているということを示唆しているのかもしれません!?
追記 この作品を通して、歌舞伎の世界のみならず、私たちの人生は誰一人平凡な人はいないのだと確信しました。一人一人が山坂を乗り越えて前を向いて歩んでいるに違いないし、そんな姿が本当の幸せなのだと思わせてくれる傑作でした!

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三輪

4.5役者と言うのはやっぱり凄い

2025年7月26日
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本当の役者に成りたい。
そう言った俊介の言葉が全てを表しているように思うのです。
芸が血を凌駕する。
伝統ある世界だからこそ、その道で生きて行くためには本物の芸を極めなければならない。
二代目が後継に喜久雄を選んだのも本当の芸の世界で生きて来た本物を知る人だからこその決断だったのではないでしょうか。
もちろん自分の息子が可愛く無い訳もなく、そのことは心の奥底に閉じ込めたのでしょう。
病に倒れた時に心の奥底に眠っていた物が顔を出したのも当然の事。
喜久雄には切ない事ではあったでしょうが、それでも血の継承と言うものがこの伝統を支えて来たのも真実。
血の後ろ盾の無い物はやはり本物の芸を身に着けるのみなのです。
当然のように三代目としての舞台は順風満帆になど進む訳も無く試練のドサ回り。
しかし今こそ本物の芸を身に纏い、自身の生い立ちや背中の彫り物などの事をとやかく言わせ無い圧倒的な芸を見せつける時なのです。
そして栄光を掴む者がいれば、その影で泣く者もいる。様々な人間模様が垣間見えるのも悪魔との約束事なのでしょう。
歌舞伎について評価出来るような知識は何もありませんが、吉沢亮くん、横浜流星くん両名の鮮やかな舞は圧巻でした。相当の練習量だったであろうと容易に想像がつきます。
特にラストの吉沢亮くんの舞は、正に変幻自在。艶やかで妖艶で見る物を魅力する舞であったと思います。
渡辺謙さん、寺島しのぶさんの貫禄の演技はやはりさすがの一言。高畑充希、森七菜、見上愛も作品の中に溶け込んで見事。三浦貴大さんも実に印象的な役柄でした。そして何と言っても田中泯さんの圧倒的存在感が際立ちました。
本物の役者とは何か。芸とは何か。
それに立ち向かう人間の覚悟と生き様を描いて鮮烈でした。
いい映画を見ました

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たつのこ

4.0日本の芸

2025年6月30日
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古くからの日本の芸能は元々血筋であった。其処に稀に才能の華が咲くし血筋で無い者も又花が咲くその繰り返しであった。この物語りはそんな歌舞伎の世界の中でも血なのかそれとも才能なのかと競い合う。

嫉妬あり葛藤あり妬みありそしてその二人共時期は違えどドサ回り迄もおこなったが芸に対する情熱を失う事は無かった二人。もうこの二人はライバルでは無く、ある意味一心同体であった。がある時、主人公の喜久雄はより自身を高める為芸の神さんに魂を売ったのだ。皮肉にも(否自分が望んだ事か)その事がより一層、人間国宝へと近づくのだった。そして喜久雄はその先に何を観たのか…。

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えーじ

5.0吉沢亮のお初の台詞回しに心震える。伝統に挑むアウトサイダーの物語を李相日が監督した点にも感慨

2025年6月30日
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悲しい

知的

驚く

私は歌舞伎の素人ながら、稽古に1年半かけた吉沢亮(喜久雄役)の演技、とりわけ「曽根崎心中」のお初が声を振り絞る「死ぬる覚悟が聞きたい」に心が震えた。顔のクローズアップと引き気味の画を巧みに配した客席側からの映像も見事だが、原作者・吉田修一が四代目中村鴈治郎に黒衣を作ってもらい3年間舞台裏や楽屋まで取材して書いた役者視点での描写も興味深い(脚本は「八日目の蝉」「軽蔑」「望み」など小説の映画化で実績のある奥寺佐渡子)。横浜流星、渡辺謙らもそれぞれに素晴らしい。とりわけ、舞踊家でもある田中泯の手招きの柔らかな表現や、浮世絵のごとき白塗りで皺深い表情にも引き込まれた。

喜久雄が藤駒(見上愛)との間にもうけた娘・綾乃を演じた瀧内公美もワンシーンながら印象的。綾乃が喜久雄に伝える言葉には、周りの大勢を踏み台にして高みを目指す役者の生き様と、そうしたスターを支えるファンの心情が濃密に詰まっていた。

舞台のシーンでは入魂の演技と美麗な映像に目を奪われっぱなしになりそうだが、BGMの繊細な演出もいい。演目の実際の音楽(囃子)を中心に据えつつ、ストリングスやシンセ系の音を加えて調性やドラマチックさを補強しているのだ。まさに映画らしい歌舞伎の見せ方と言えるだろう。

世襲制が基本の伝統芸能である歌舞伎の世界で頂点を目指すアウトサイダーの物語を、在日朝鮮人三世の李相日監督が映画化した点も感慨深い。李監督が過去に2度、吉田原作の「悪人」「怒り」をいずれも東宝配給で映画化していたことも起用の要因だろう。李監督はまた、チェン・カイコー監督が2人の京劇俳優の波乱の生き様を描きカンヌでパルムドールを獲った「さらば、わが愛 覇王別姫」を観た衝撃が、本作につながったと明かしている。確かに、同作で女性役(姫=虞美人)の京劇俳優を演じたレスリー・チャンと、女形の化粧をした吉沢亮は見た目も雰囲気も近い。厳しい稽古を積みながら兄弟のように育った役者同士の絆や確執といった要素も共通する。「国宝」は今年後半以降、韓国や台湾などアジア、フランスやオランダなど欧州で公開が決まっているようで、日本の伝統芸能を題材にした本作が海外でどのように評価されるかにも大いに興味がある。

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高森郁哉

5.0良かった《圧巻の映像美・吉沢亮san素晴らしい》

2025年8月6日
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観て良かった→5
映像・音楽 →5
テンポ →5
ストーリー →5
心に残る →5

邦画が苦手なのに、この映画は映画館で観て本当に良かった。余韻まで素晴らしいものになった。

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茶々の葉

5.0なんかすごいもん観た!

2025年6月8日
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興奮

幸せ

予告から重厚な人間ドラマを期待して、公開2日目に鑑賞してきました。内容的に若者受けはしないかと思っていましたが、出演俳優の人気もあってか、年齢層は広めで客入りも悪くなかったです。

ストーリーは、極道の家系に生まれ、抗争で父を亡くし、15歳にして天涯孤独となってしまった喜久雄が、その才を見抜いて引き取った上方歌舞伎の名門・花井半二郎のもとで、半二郎の跡取り息子・俊介と兄弟のように共に修行に励み、実力をつける中、半二郎が事故で舞台に立てなくなり、その代役に俊介ではなく喜久雄を指名したことから、二人の運命が大きく動き出すというもの。

鑑賞後、「なんかすごいもん観た!」という言葉にならない感動に襲われました。一人の男の人生に伴走したような、何かをやり遂げたような達成感を得られる稀有な映画体験です。

これまで歌舞伎には全く興味がなく、もちろん観たこともなく、その魅力も、演技の良し悪しもまるでわかりません。それなのに、何度も描かれる舞台シーンではことごとく熱いものが込み上げてきて、わけもわからず涙が流れます。歌舞伎に魅せられ、その道を極めることに取り憑かれ、魂を捧げた男たちの壮絶な人生がそこにあったからでしょうか。

当初は明確な立場の差があり、それを自覚していた喜久雄と俊介の二人が、父の事故により代役が必要になったことから、運命の歯車が大きく、しかも予想外の方向に回り出します。それを複雑な思いを抱きながらも受け入れる二人の姿に、厳しいプロの世界でしのぎを削る生きざまを見る思いがします。

しかし、芸の技量と同等かそれ以上に血筋を重んじるこの世界では、後ろ盾のない喜久雄の未来は必ずしも明るくはありません。一方で、花井家跡取りの座を追われながらも芸から離れられなかった俊介。彼が再度脚光を浴び、かつての二人の立場が完全に逆転する構図に背筋がゾクゾクします。

そして、これが単なる跡目相続という小さな枠に収まらず、芸を極める役者の真髄へと昇華していくような展開が、とてつもない力で観客を引き込みます。紆余曲折を経て再び演じられる、二人藤娘、二人道成寺には、以前とは別の熱量を感じて再び涙腺を刺激されます。そして、圧巻の曽根崎心中。おそらく右脚までも病に冒され、死を覚悟した俊介の最期の舞台だったのでしょう。それを承知した上で演じ切る二人の姿に涙が止まりません。役者であることとの心中を本望とした俊介の思いが、演目と重なり、観るものの心を激しく揺さぶります。

終盤は、大人になった娘と喜久雄の突然の邂逅。わずかなシーンではありますが、芸の道を極めた表の顔と、そのために全てを犠牲にした裏の顔を知る、実の娘ならではの思いが滲み、実に印象的です。瀧内公美さんの渾身の演技が光る素敵なシーンです。

そして、ラストの鷺娘。誰も見たことのない景色を追い求め続けた喜久雄の生きざまを彷彿とさせる、万感の終幕。その景色は頂点を極めた者にしか観ることのできないものだったのでしょう。そして、それを目にすることは、この先二度と逃れることのできない地獄の始まりを意味しているのかもしれません。「国宝」の認定が取り消されることは生涯ないのですから。

主演は吉沢亮さん、共演は横浜流星さんで、お二人とも熱演という言葉ではとても言い表せないほどの演技を魅せています。歌舞伎の所作そのものが極めて重要な作品なだけに、お二人のプレッシャーや稽古は相当なものだったと推察されますが、見事にその大役を果たしていると感じます。脇を固めるのは、渡辺謙さん、寺島しのぶさん、田中泯さん、永瀬正敏さん、高畑充希さん、森七菜さん、見上愛さん、黒川想矢くんら。

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おじゃる

4.0歌舞伎への深い愛を感じる力作。一方で描くべき内容が多すぎるのか予備知識が少ないと感情移入しにくい面が課題か。

2025年6月7日
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本作は歌舞伎の演技シーンを中心に強いこだわりを持って描かれている力作なのは間違いないでしょう。
役者たちの演技も文句なしに素晴らしく、その熱演は見る者を惹きつけます。
ただ、歌舞伎や原作小説の予備知識があるかないかにより、かなり見え方が変わるでしょう。
歌舞伎の知識が乏しかったり、原作未読の状態で見ると、「時」の経過に伴う場面などが断片的に見えてしまったり、状況をつかみきれず感情移入しにくい面があるのです。
結果的に175分を使いながらも、一見さんかそうでないかによって印象に差が出やすい構造になっていて、前者の視点からは課題を感じる作品でした。

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細野真宏

5.0歌舞伎界に生きた男達の波乱万丈・栄枯盛衰…アカデミー賞・最有力候補作品

2025年6月14日
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興奮

斬新

日本の伝統芸能である、歌舞伎の世界を半世紀にも渡って駆け抜けた男達を題材にした、吉田修一原作の映画実写化。これまでに2度ほど、自分も歌舞伎鑑賞をしたことがあるが、その時は、それほど感慨にふける程ではなかった。しかし、本作を通して、歌舞伎の現代に通じる芸術演劇として迫力や美しさ、そして醍醐味…、一方でその裏にある、稽古の厳しさや世襲への蟠り等、自分の知らなかった、歌舞伎の世界観に魅了された。

3時間にも及ぶ長時間上映だったが、全くその時間を感じさせなかった。それは、主人公・喜久雄(花井東一郎)とライバル・俊介(花井半弥)の運命が、二転三転する中で、それぞれが、歌舞伎役者としての誇りと名誉、命を賭けて立ち居振舞う姿にある。特に、クライマックスの『娘道成寺』と『鷺娘』の舞う姿は、映画を観ている事を忘れるほどの臨場感と共に、感激と感動によって胸を熱くなり、何筋もの熱いモノが頬を伝ってきた。

喜久雄と俊介のライバル2人が、幼い時から厳しい稽古の中を、切磋琢磨して芽生えてきた友情と信頼。一方で、真っ当な血筋の上に成り立つ歌舞伎界の世襲に置かれた者と、外道の血筋だが、芸の実力を兼ね備えた者。その両者が世間からの板挟みの中で、ライバルとして苦悩し、底辺に堕ちた所から這い上ってくる、ヒューマンタッチのドラマとしての面白さもある。その2人の役者人生が、『曽根崎信重』『鷺娘』『娘道成寺』の歌舞伎演目の内容とリンクして、より物語を感動深いものにしていた。

そして何より、本作の素晴らしさは、今や日本を代表する若きムービースターである、喜久雄(花井東一郎)を演じた吉沢亮と俊介(花井半弥)を演じた横浜流星の2人の演技にある。主役の吉沢亮は、「これまでの役者人生の集大成の演技であった」と語ってるように、難しいとされる歌舞伎に挑戦し、女形の発声から所作、そして演舞と、素人目には、長年、歌舞伎の世界で生きてきた役者の様に、観る者の胸を熱くする素晴らしい演技を見せてくれた。吉沢と横浜は、この作品完成まで、かなりハードな稽古を乗り越えて、役者としての魂と情熱を注ぎ込んできたことが覗えた。

脇を固める出演者も、半弥の父であり芸の師匠である花井半二郎には渡辺謙、その妻には、正に公私ともにも適役の寺島しのぶ、東一郎の幼馴染で、半弥の妻となった女には、高畑充希、そして、老齢の先輩・万菊には田中冺が演じ、この田中が漏らす女形の一言一言が、とても重みのある意味ある言葉となって、心に染み渡っていく。

少し早くはあるが、作品内容や役者達の演技からも、そして、伝統芸能である歌舞伎をもちーにした点においても、来年の『日本アカデミー賞』の作品賞、男優賞、助演男優賞の最有力候補作品だと思う。歌舞伎を知らなくても、感動を味わいたい方は、是非、ご覧ください。

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bunmei21
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