劇場公開日 2025年6月6日

国宝のレビュー・感想・評価

全2037件中、1061~1080件目を表示

4.0芸か血筋か、二人の歌舞伎役者の人生

2025年6月30日
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鑑賞方法:映画館

知的

ドキドキ

ヤクザの息子・喜久雄、梨園の跡取り息子・俊介。役者の才能を持った二人青年の愛憎入り乱れる半生を描く。果たして国宝となるのはどちらなのか。育ての親の代役として、最後の夢の舞台として、上方歌舞伎の名作「曽根崎心中」のお初を主演の二人が演じるのですが、吉沢亮は台詞と佇まい、横浜流星は何とも言えぬ表情、それぞれに胸を打つ特徴が出ていて見ごたえがありました。老女形役の田中泯も良かった。さすがダンサー、所作のひとつひとつが意味を持って重く感じられる。高畑充希と見上愛の関係性は去年の大河ドラマも思い出されて興味深い。

あと、糖尿怖い。親子二代ってことは体質もあったのかな。歌舞伎俳優、体を使う商売なので運動不足にはならなさそうだけど、いろんな宴席に呼ばれたりして食生活が乱れるのだろうか。「曽根崎心中」では縁の下に隠れていた徳兵衛が心中の覚悟を示すために、お初の足に縋りつく山場があるので、糖尿で壊死した足を切る切らないのところに意味があるのかな。
そっちは鉛中毒だけど、足を切っても舞台に立ち続けたという三代目澤村田之助のエピソードも思い出しました。

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アボカドかゆうま

4.0没頭する作品

2025年6月29日
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Norman

4.0私は良かった‼︎

2025年6月29日
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私は良かった‼︎ 役者さんの演技を
ひとつも見逃すまいと集中して見る
ことができました。
3時間の長丁場、飽きることは
全くなかったです。
因みに先日観たミッションイン
ポッシブルファイナルレコニング
は、体調不良もあってか?最初
から最後まで寝てしまいました。

あー、なんか、もう一回映画館で
観たくなりました。
やっぱり映画館で観る映画って
良いですよね〜。

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aiai3san

5.0映画館で観るべき

2025年6月28日
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本日、観てきました。
吉沢亮さんをはじめ、役者さん達の演技に胸が熱くなりました。
そして、ここに至るまでにどれだけ努力を重ねたのかと鑑賞中に考えていました。
約3時間の長さから最初は避けていましたが、沢山の高評価に背中を押して貰い、結論は観て本当に良かったと今しみじみ感じてます。
ストーリーは勿論、涙を堪える場面も何度もあり、最後まで集中力が切れなかったのは自分でも意外でした。
エンドロール中、この映画製作に尽力された方々に心から感謝したいぐらい満足感に満たされました。
映画って良いものですね。

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映画小僧

4.5才能

2025年6月28日
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美しさって…
化粧が崩れていても、ぐちゃぐちゃでも美しい
途中、才能が潰されていくのかと胸が張り裂けそうになった
才能を大切に守りたいと常々思う
私ができなかったけど、叶えたかった世界を、見たかった景色を、聴きたかった音を、一生かけて磨き続けて見せてくれる存在はかけがえがない
様々な才能を持った人たちが、ずっと続けてくれることを望んでいる
主演の二人の才能がしっかり開花して、届いて、守られていることに感謝

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タケコ

5.0人生を捧げること

2025年6月28日
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鑑賞方法:映画館

予告の「ひたすらに夢を追いかける」の次元ではないと思いました。歌舞伎役者になるべく血と才能。全てを捧げるふたりの人生の物語。
演じる吉沢亮と横浜流星の歌舞伎の演技、舞台前後の心情の表現に心打たれました。歌舞伎への理解や興味を持ち合わせずとも十分に惹きこまれました。

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ルピナス

5.0美術、いや芸術作品

2025年6月27日
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鑑賞方法:映画館

驚く

運命的な出会いで人生を共にする二人の
歌舞伎役者の苦楽をベースに3時間の芸術作品は
進行します。

歌舞伎を観たことがなくても、興味がなくても
関係ありません。圧倒的な美の世界に、引きづり込まれ
ます。

これを映画観賞チケット代金で堪能できるのは、
安過ぎる感じすらします。役者とは何であるのか、
それを観る側にも十分伝えつつ、その成果物が
安っぽさのない本物として迫ってきます。

あまりもの出来栄えに、本当の歌舞伎役者はむしろ
複雑な気持ちになりそうな(ここは歌舞伎を知らない
無知故の感想ですが)、そんなことを考えてしまいました。

メークも邪魔して特に女性関係がやや読み取り辛かった
ですが、まぁそんなの関係ねぇ!

これはテレビで見てはダメです。映画館で観て下さい。
きっと元は取れます。

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t.kokubun

4.5この奇跡を見逃すな!今すぐ映画館へ!

2025年6月27日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

初めての映画投稿で恐縮。読みにくければすみません。ただ、この映画は日本人が出会える芸術作品の一つの「宝」のような存在に思えるので、あえて投稿させていただきました。

本年度の日本アカデミー賞の総なめは容易に想像がつくが、それよりも、今後上映される日本映画作品は、「あの『国宝』と比べて」と枕詞をつけて評されるような、日本の代表作として、少なくとも国内では評価されることになると想像される。それほどの出来栄えだ。
自分は年に30本程度の映画しか見ないのでとても映画通とは言えないが、それでもこの映画の構成、脚本、俳優選出、演出、演技、音楽、撮影、等々、各要素ごとの磨かれ方と、それらのバランスをとりつつ、原作を映画という世界へ展開するギリギリの刈込みと原作にはないオリジナルな創造が施されている。通でない私もでも分かる。
巨匠と言われる人はともすると自らの作品に感情移入してしまい、上記の要素をそろえながらも最後に作品を壊してしまうケースもままある中で、(コッポラさん、高畑さん、ごめんなさい)李監督はこれらを見事に制御したうえで三時間の内容に見事に収めており、その意味でこの作品は「奇跡」と言っていいのではないか。(李監督は撮影ごとに歯が一本づつなくなるんだそうだ。理由は撮影の際に歯を食いしばるせいらしい。)
今後、テレビ放送やメディア配信で茶の間でも観られるようになるのだろうが、吉沢亮、横浜流星の舞台上のあの艶めかしいほどの演技を鑑賞するのに、テレビでの鑑賞では日常空間が入り込むところとなり、その鑑賞j時間そのものが勿体ない。やはり、映画館という、そのためだけに費やす、暗闇に囲まれた映像のためだけの空間でしか得られない贅沢な体験を味わうべきなのだ。これはそういう作品だ。刺身用の食材をわざわざ煮物にしていただくようなものになってしまう(かな?)
また、今後、上映期間延長や再演であった場合、映画館の都合で三時間をさらに縮小される可能性も高く、このギリギリの編集でしか観られない作品は早く映画館に足を運ぶべきだろう。それが、タイトルをようにした理由である。
なお、映画の世界には理屈抜きで本当に映画でしか表現のできない内容の作品もある。(例:「サチリコン」)あるいは主人公の魅力だけが切り立って成立しているものもある。(例:「燃えよドラゴン」)こうした芸術品の存在を認めるために、これを考慮し、あえて満点はおかなかったのでご了承願いたい。
なお、なぜ印象のマークに「美しい」や「複層的」がないのか映画ドットコムにお尋ねしたいところである。本来、この映画の印象はこれららの既存のマークに当てはまらない気がするので。

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George

4.5歌舞伎役者の人生は命懸け…凄いものを魅せられた

2025年6月26日
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きらり

4.520年ぶりの映画館

2025年6月26日
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余りの評判に「20年ぶり」に『国宝』を観て来ました。但し歌舞伎役者に評価を聞いたら「大絶賛」と言うのは当たり前の反応。歌舞伎役者が「他人を貶す」ことは「自分をリスクに晒す」ことを意味しますからね。それこそ、大師匠でもない限り(直弟子は別として)たの役者に対する本心は決して言わない筈です。歌舞伎も舞踊もやったことがないであろう俳優たちがこの映画で頑張ったのは流石です。私は第一作目から市川猿翁の大ファンでしたから、3代目が四代目猿之助を亀治郎にするのか、市川右近にするのかの騒動を、この映画を見て思い出しました。これからは、血筋だけではなく、愛之助や尾上右近などの活躍を見るにつけ、時代の変遷、歌舞伎社会の現実を思い知らされた映画でした。

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KennyHakone

4.0美しき化け物

2025年6月25日
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鑑賞方法:映画館

驚く

とにかく圧巻の一言。

一生をかけて、ありとあらゆるものを犠牲にして、
血を巡る愛憎も友情も、その何もかもを包み込んでひたすら舞台に打ち込み続ける。

手足がもげようとも、光を失っても、
身体のあらゆる自由を失っても、
役者としての更なる高みを探求する瞳の輝きは何よりも美しく、そして底のない闇のような不穏な異質さも合わせ持っておりこちらを覗き込む度に心底ゾッとした。

舞台上で見る華やかな役者としての顔。
しかし、その内側には、夥しい数の呪いが渦巻いており、役者自身も知らず知らずのうちにその一部に飲み込まれていく。

歴史という狂気に取り憑かれた化け物のようである。

その美しさと恐ろしさの相反する2面性に人は感化され、
おもわず目を奪われてしまうのかもしれない。

国宝が国宝たる所以、しかと脳裏に焼き付きました。

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かぁたん

5.0平日昼間でも満員!

2025年6月25日
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鑑賞方法:映画館

原作を読まず何も知らない状態で観たが、まず演技がえぐいやばい。
歌舞伎の世界はこんなにも壮絶なのか、凄い世界ですね。
曽根崎心中も、心中もの位しか知識がないのに、劇中の半弥と半次郎の曽根崎心中は涙が滝のように流れて激しく心を揺さぶって痛かった。
作る側の熱量が凄い、こんなにも胸を打つ作品はそうそうない。
映像も美しかったが歌舞伎の音楽とあいまって少し怖かった、神がかった恐怖というか…。
終盤の吉沢亮は芸の神様が憑依しているようだった。凄いものを観ました。
原作読みます!

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のりまき

5.0心に残ります。

2025年6月25日
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鑑賞方法:映画館

見終わってこんなに余韻の大きい映画に出会った事が無い様に思う映画でした。
3時間の時間の流れも感じません。
ストーリーの展開も退屈を感じる事なく、映像の繊細さ、俳優さん達の演技、音響、全てが融合されていて素晴らしい映画です。
歌舞伎に触れる事は無かったですが、シビアな世界なのですね。
泣いてしまう場面ではないのですが、涙が出てました。(笑)
今まで見た映画の中で心の奥に残る映画でした。

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や

5.0これは本当に凄い。日本映画史に残りますね

2025年6月25日
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みなさんのレビューひとつひとつに、うんうんと納得します。絶対に映画館のスクリーンで観た方が良い。
吉沢亮さんの圧巻の演技もさることながら、横浜流星さんの立場の変化を演技に表すのも、本当に難しかったと思います。おふたりのそれぞれの曽根崎心中は、言葉を失うくらいに感動しました。凄い役者さんばかりです。久しぶりに『映画を観た!』という満足感を得られました。

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ノンキー51

5.0この映画は映画館で観てこそ。画像の美しさは感動!

2025年6月25日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

斬新

国宝というタイトルに 硬さを感じて興味を持たなかったが観たら内容の良さと画像の美しさに感動し三味線の音色に引き込まれる。映画館の大きなスクリーンで絶対に観た方がよい。採点10点

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さく

5.0予告編を超えた稀有な映画

2025年6月24日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

驚く

実は映画「ルノワール」を観ようと思ってたのだが、こちらの映画の評判がやたらに良かったので、その真偽をどうしても確かめたくなり、平日の昼間に鑑賞。長時間映画の割に高齢者率高し。

うーん、やられた(笑)。ほんと、こりゃ圧巻だ。お金を払って映画館で映画を観るという行為をこれまでのいろんな駄作のせいで放棄しそうになっていたが、がんばって続けてきた甲斐がある。

今までどれだけ巧みな宣伝や予告編にどれだけやられてきたことか。もちろんこの映画も事前に予告編を見た。ちなみにこの映画の予告編、そんなに面白そうじゃない。あんまりピンと来ないし、期待できない。しかし、これほどまでに予告編にいい意味で裏切られた映画も珍しい。予告編がかすむくらい本編が圧倒的なのだ。

とにかくいろんな人に観てほしい。きっと観た時の年齢や経験、置かれた状況によっていろんな感想が生まれるであろう映画だ。個人的にはもっと若い時にこの映画に出会っていたらとも思うし、もっと歳を取ってからまた観てみたいとも思う。間違いなく5つ星。

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うえぽん

4.0良い映画

2025年6月24日
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鑑賞方法:映画館

興奮

驚く

ドキドキ

すごく正統派の、良い映画を観た気がした。満足感がすごい。でも前半が良すぎた。後半は少し駆け足っぽく感じた。ネットのアドバイスに従って曽根崎心中と鷺娘のあらすじだけ拾っておいてから見ました。特に曽根崎心中は予習しておくと分かりやすいかも。平日の朝イチでこんなに映画館に人が入っていたのは凄いと思いました。

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七味唐辛子

4.5カメラは悪魔の目線

2025年6月24日
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鑑賞方法:映画館

興奮

驚く

斬新

芸道映画という映画ジャンルがあります。刻苦勉励して芸の道を究める主人公とそれを支える周囲との人間関係を緯糸に、見事芸の頂点に達する姿を描くパターンの映画です。
日本の三大巨匠の一人・溝口健二監督が1939年に監督した『残菊物語』が、このジャンルの最高傑作といわれていますが、86年を経て漸くこれを凌駕する作品=本作が生まれました。

芸道で頂点(=人間国宝)に昇りつめた、一人の男の波乱万丈の半生記といえますが、周知のように高評価で客の入りも頗る良い作品です。最近の日本映画ではあまり類のない、175分という長尺にも関わらず、全く飽きることなく、間怠いこともなく、一気にほぼ3時間を見終えました。

しかし本作はスジを見せる映画ではなく、飽きさせない映像を巧妙に組み合わせて構成した見事な成果だと思います。

3時間、ほぼ寄せアップのフィックスでのカットで終始しています。ミドルレンジのカットも殆どなく、引きロングは、各劇場の舞台を俯瞰したシーンのみです。
最近の作品で多用される手持ちカメラは殆ど使われず、僅かに吉沢亮扮する主人公の東一郎こと喜久雄が、三代目半二郎を襲名する口上の舞台で起きた、先代半二郎吐血に伴う、ドラマにとって重要な事件の描写シーン、そして三代目半二郎が落ちぶれてドサ回りの演舞後に暴行された後の宴会場ビルの屋上で自暴自棄に陥るシーンのみです。つまり観客が酔うような揺れるカメラワークは殆どなく、どっしり落ち着いて見据えられた、換言すると凝視せざるを得ない映像ばかりで組み立ててあったといえます。
寄せアップのカットは長回しせず、短く切ってテンポ良くつないでいるので、観客はその映像に惹き付けられたままです。更にカメラアングルは殆どが、やや仰角気味で、観客は少し見上げるような映像が続き、少しずつ心理的にその人物に圧倒されていきます。
寄せアップばかりなので、観客にはその人物のその時々の感情のみが具に伝わります。引きロングは情報、即ちその前後関係やその周辺の人間関係や環境等を伝えるのですが、それが殆どないため、観客は専ら人物の感情のみを見せつけられ、客観情報がないままです。完全に感情の起伏に踊らされるがままになり、人物に自然と感情移入してしまい、スクリーンに没入させられていました。

その上、登場人物が非常に絞り込まれています。3時間の長尺にも関わらず、喜久雄、横浜流星演じる初代半二郎の息子・俊介の二人の尺が大半です。これに渡辺謙演じる初代花井半二郎が前半、寺島しのぶ演じるその妻が中盤以降に2人に絡み、少し限定的に高畑充希演じる俊介の妻、見上愛演じる祇園の芸妓・藤駒、森菜々演じる喜久雄のパートナー・彰子、三浦貴大演じる興行会社スタッフ・竹野が、エピソードによって絡むだけです。

今一人、登場シーンはごく僅かですが、物語の転機で重要なリード役を果たしたのが田中泯演じる女形役者・小野川万菊です。喜久雄の初めての舞台見学の時、楽屋での万菊の手招きには不気味なオーラが充満していました。ギリシア神話のサイレーンの如く、喜久雄を怪しく辛く苦しい歌舞伎の世界へ陥れたともいえます。
更に、ドサ回りからの復帰を促す手招きにもゾクッとする怖さが漂っていました。既に臨終間際の寝たきり状態であり、しかもどういう経緯を経たのか、簡易宿泊所の4畳半の薄汚い部屋の中の粗末な布団からであり、喜久雄を魑魅魍魎が跳梁跋扈する歌舞伎界に引き戻そうとする悪魔のような手招きでした。
万菊は、三代目半二郎襲名披露の口上のシーン、先代半二郎が吐血し舞台がパニックになるシーンにも、終始無表情でそこに立会っており、物語の重要な転機での舞台回し役、恐ろしくも無気味な役回りを果たしていました。女形らしく凛として、六代目歌右衛門を彷彿させる演技でした。
万菊の辿った履歴は一切出て来ませんが、これは彼に限ったことではなく、他の人物の私生活や周辺情報は全く触れられず、のみならず喜久雄の私生活も最低限のエピソードを間接的に描くのみです。
全シーンには4W1Hの情報は皆無で、唯一Whatのみ、つまりそこでその時に起きていることのみ伝えられ、あとは観客の想像力に委ねられます。スジの根幹以外は、観客から完全にシャットアウトされていて、あくまで主役2人の言動のみにフォーカスしていましたので、自ずと感情移入し没入していかざるを得ません。

カメラの目線はどこにあったのか、てっきり主人公・喜久雄目線だと思って観ていました。しかし寄せアップばかりで映すにも関わらず、喜久雄の本音の思惑は、実は見えてきません。殆ど喜怒哀楽が表情に出て来ない、又は敢えて出してきません。これは俊介とは好対照で、俊介は都度都度感情を剥き出しにしています。喜久雄目線ゆえに自分以外を客観視して映し出しているせいか、と思っていました。
喜久雄が願掛けして祈るのは神仏ではなく“悪魔”に対してであり、ひょっとするとカメラは、歌舞伎の神様ならぬ歌舞伎の悪魔の目線なのかと思い直しています。将に本作では田中泯扮する万菊の目線だったのではないかという気もしています。

アクションなし、ラブロマンスなし、美しい自然描写なし、そもそも映像の9割方が屋内であり、さらに舞台の演技シーンがその内の半分くらいは占めていました。そんな退屈な構成のはずが、3時間を飽きさせずに惹きつけ続けたのは、一つには脚本の力であり、二つ目は巧みな映像の組み立て、そして何より大きいのは、寄せアップで映され続けた主役2人の、指先まで神経が研ぎ澄まされた技量、更に演技がスクリーンいっぱいに滾るように溢れかえった熱量です。
1972年上演の「曽根崎心中」で喜久雄が演じたお初には、スクリーンに食い入って見入ってしまい、その真に迫った劇中劇の演技には、思わず感極まって全身に震えがきてしまいました。
二人の舞台共演シーン、二人藤娘、二人娘道成寺は、華麗で優美で妖艶で、しなやかな風でいてはんなりと、たおやかで、寄せアップの細かいカット割りで見せられるので、つい前のめりにスクリーンに見入ってしまいました。

また劇場舞台の映し方が秀逸でした。殆どが舞踊、つまり台詞がなくて演者がひたすら舞台上を激しく動き回る演目です。通常公演での舞踊は、狂言と異なり、単に見ているだけではなかなか意味が理解できず、やや退屈することが多いのですが、本作では舞い踊る様の寄せアップを短いカットで切り替えて、その上、演者を360度回転して映し、更に観客席からのアングルに加えて舞台後方からも映し、その熱く激しい動きと表情がリアルにビビッドに観客に伝わってきました。この迫力をスクリーン上で増幅するために、撮影に使用された劇場は、京都・南座と京都・先斗町歌舞練場という、それほど舞台上が広くない劇場です。東京・歌舞伎座は舞台上が広すぎて、映像にすると間延びしてしまったと思います。それゆえに歌舞伎座はファサードのみ使い、劇場内部は南座であり、先斗町歌舞練場のやや狭苦しいロビーや楽屋でした。築98年の先斗町歌舞練場のレトロで重厚な時代感が巧く使われていました。

今の歌舞伎は松竹が興行元であり、歌舞伎座、南座は松竹の劇場です。またスタジオ撮影はほぼ東映京都撮影所で行われ、従い殆どの仕出しは東映京都の俳優です。
にも関わらず配給は東宝という、奇妙な組み合わせの作品でもあります。

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KeithKH

5.03時間目が離せない静かな緊迫感と映像美

2025年6月23日
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鑑賞方法:映画館

知的

驚く

ドキドキ

長編になると、単調になったり冗長だったり、無駄があったりしがちだが、この作品にはそれがない。原作の持つ骨太な人間ドラマと俳優が演じアップの多い撮影が仕上げる歌舞伎の映像美が見事に融合している。脚本的には上方歌舞伎が突然東京に移るところや、パートナーの女性について説明不足な点もあるが、全体として正攻法でグイグイ引っ張り、歌舞伎のファンを新たに開拓してしまいそうな力強さが、作品の背骨を貫き、稀に見る上質な緊迫感に酔う3時間を提供してくれる。吉田修一と相性のよい李相日監督の手腕が存分に発揮された今年を代表する作品であり、映画ファンなら絶対に見逃してはいけないと確信できる。

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susuumucchi

5.0ガブガブ飲みたいんや

2025年6月23日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

以前王様のブランチで紹介してたのと評判がいいので遅ればせながら9:30より観ました。いやぁ~良かった。余韻を感じられる素晴らしい作品でした。任侠に生まれ、芸の道に人生を捧げる喜久雄の50年の物語。国宝までたどり着くまで幸福に見えたのは少年時代、ライバルであり親友の俊介と芸に勤しんでいるとき、共に舞台に上がっている時、春江と過ごす時間。誰かといる幸せや、心休まることを全て犠牲にして、芸に向き合う。ラストシーンで人生の全てを芸にかけたからこそ見れる景色。本当に何かを成し得ようとするならば、全てを投げうる覚悟が必要。吉沢亮、横浜流星、渡辺謙、みなさん素晴らしい演技。吉沢亮と横浜流星は、複雑な関係性を見事に表現した。本音と建前と思いやりや葛藤する思いがすごく伝わった。「曽根崎心中」を演じる吉沢と横浜の演技にはグッときた。観て損しない作品です。日本中の方にお勧めする映画です。糖尿病は怖い。みなさん健診で血糖値を測り気をつけましょう。

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junjun
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