劇場公開日 2025年6月6日

国宝のレビュー・感想・評価

全2138件中、21~40件目を表示

4.5【”積恋雪関扉、二人道成寺。そして曽根崎心中、鷺娘。”任侠一家に生まれながら歌舞伎に魅了された男と名門の家に生まれた男の歌舞伎と心中した如き人生を描いた作品。吉沢亮さんの女形の舞は壮絶な美しさです。】

2025年6月6日
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悲しい

知的

幸せ

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NOBU

5.0吉沢亮・・・天性の歌舞伎の女形

2025年6月6日
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興奮

幸せ

ドキドキ

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琥珀糖

5.0なんかすごいもん観た!

2025年6月8日
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泣ける

興奮

幸せ

予告から重厚な人間ドラマを期待して、公開2日目に鑑賞してきました。内容的に若者受けはしないかと思っていましたが、出演俳優の人気もあってか、年齢層は広めで客入りも悪くなかったです。

ストーリーは、極道の家系に生まれ、抗争で父を亡くし、15歳にして天涯孤独となってしまった喜久雄が、その才を見抜いて引き取った上方歌舞伎の名門・花井半二郎のもとで、半二郎の跡取り息子・俊介と兄弟のように共に修行に励み、実力をつける中、半二郎が事故で舞台に立てなくなり、その代役に俊介ではなく喜久雄を指名したことから、二人の運命が大きく動き出すというもの。

鑑賞後、「なんかすごいもん観た!」という言葉にならない感動に襲われました。一人の男の人生に伴走したような、何かをやり遂げたような達成感を得られる稀有な映画体験です。

これまで歌舞伎には全く興味がなく、もちろん観たこともなく、その魅力も、演技の良し悪しもまるでわかりません。それなのに、何度も描かれる舞台シーンではことごとく熱いものが込み上げてきて、わけもわからず涙が流れます。歌舞伎に魅せられ、その道を極めることに取り憑かれ、魂を捧げた男たちの壮絶な人生がそこにあったからでしょうか。

当初は明確な立場の差があり、それを自覚していた喜久雄と俊介の二人が、父の事故により代役が必要になったことから、運命の歯車が大きく、しかも予想外の方向に回り出します。それを複雑な思いを抱きながらも受け入れる二人の姿に、厳しいプロの世界でしのぎを削る生きざまを見る思いがします。

しかし、芸の技量と同等かそれ以上に血筋を重んじるこの世界では、後ろ盾のない喜久雄の未来は必ずしも明るくはありません。一方で、花井家跡取りの座を追われながらも芸から離れられなかった俊介。彼が再度脚光を浴び、かつての二人の立場が完全に逆転する構図に背筋がゾクゾクします。

そして、これが単なる跡目相続という小さな枠に収まらず、芸を極める役者の真髄へと昇華していくような展開が、とてつもない力で観客を引き込みます。紆余曲折を経て再び演じられる、二人藤娘、二人道成寺には、以前とは別の熱量を感じて再び涙腺を刺激されます。そして、圧巻の曽根崎心中。おそらく右脚までも病に冒され、死を覚悟した俊介の最期の舞台だったのでしょう。それを承知した上で演じ切る二人の姿に涙が止まりません。役者であることとの心中を本望とした俊介の思いが、演目と重なり、観るものの心を激しく揺さぶります。

終盤は、大人になった娘と喜久雄の突然の邂逅。わずかなシーンではありますが、芸の道を極めた表の顔と、そのために全てを犠牲にした裏の顔を知る、実の娘ならではの思いが滲み、実に印象的です。瀧内公美さんの渾身の演技が光る素敵なシーンです。

そして、ラストの鷺娘。誰も見たことのない景色を追い求め続けた喜久雄の生きざまを彷彿とさせる、万感の終幕。その景色は頂点を極めた者にしか観ることのできないものだったのでしょう。そして、それを目にすることは、この先二度と逃れることのできない地獄の始まりを意味しているのかもしれません。「国宝」の認定が取り消されることは生涯ないのですから。

主演は吉沢亮さん、共演は横浜流星さんで、お二人とも熱演という言葉ではとても言い表せないほどの演技を魅せています。歌舞伎の所作そのものが極めて重要な作品なだけに、お二人のプレッシャーや稽古は相当なものだったと推察されますが、見事にその大役を果たしていると感じます。脇を固めるのは、渡辺謙さん、寺島しのぶさん、田中泯さん、永瀬正敏さん、高畑充希さん、森七菜さん、見上愛さん、黒川想矢くんら。

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おじゃる

4.0歌舞伎への深い愛を感じる力作。一方で描くべき内容が多すぎるのか予備知識が少ないと感情移入しにくい面が課題か。

2025年6月7日
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本作は歌舞伎の演技シーンを中心に強いこだわりを持って描かれている力作なのは間違いないでしょう。
役者たちの演技も文句なしに素晴らしく、その熱演は見る者を惹きつけます。
ただ、歌舞伎や原作小説の予備知識があるかないかにより、かなり見え方が変わるでしょう。
歌舞伎の知識が乏しかったり、原作未読の状態で見ると、「時」の経過に伴う場面などが断片的に見えてしまったり、状況をつかみきれず感情移入しにくい面があるのです。
結果的に175分を使いながらも、一見さんかそうでないかによって印象に差が出やすい構造になっていて、前者の視点からは課題を感じる作品でした。

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細野真宏

5.0歌舞伎界に生きた男達の波乱万丈・栄枯盛衰…アカデミー賞・最有力候補作品

2025年6月14日
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泣ける

興奮

斬新

日本の伝統芸能である、歌舞伎の世界を半世紀にも渡って駆け抜けた男達を題材にした、吉田修一原作の映画実写化。これまでに2度ほど、自分も歌舞伎鑑賞をしたことがあるが、その時は、それほど感慨にふける程ではなかった。しかし、本作を通して、歌舞伎の現代に通じる芸術演劇として迫力や美しさ、そして醍醐味…、一方でその裏にある、稽古の厳しさや世襲への蟠り等、自分の知らなかった、歌舞伎の世界観に魅了された。

3時間にも及ぶ長時間上映だったが、全くその時間を感じさせなかった。それは、主人公・喜久雄(花井東一郎)とライバル・俊介(花井半弥)の運命が、二転三転する中で、それぞれが、歌舞伎役者としての誇りと名誉、命を賭けて立ち居振舞う姿にある。特に、クライマックスの『娘道成寺』と『鷺娘』の舞う姿は、映画を観ている事を忘れるほどの臨場感と共に、感激と感動によって胸を熱くなり、何筋もの熱いモノが頬を伝ってきた。

喜久雄と俊介のライバル2人が、幼い時から厳しい稽古の中を、切磋琢磨して芽生えてきた友情と信頼。一方で、真っ当な血筋の上に成り立つ歌舞伎界の世襲に置かれた者と、外道の血筋だが、芸の実力を兼ね備えた者。その両者が世間からの板挟みの中で、ライバルとして苦悩し、底辺に堕ちた所から這い上ってくる、ヒューマンタッチのドラマとしての面白さもある。その2人の役者人生が、『曽根崎信重』『鷺娘』『娘道成寺』の歌舞伎演目の内容とリンクして、より物語を感動深いものにしていた。

そして何より、本作の素晴らしさは、今や日本を代表する若きムービースターである、喜久雄(花井東一郎)を演じた吉沢亮と俊介(花井半弥)を演じた横浜流星の2人の演技にある。主役の吉沢亮は、「これまでの役者人生の集大成の演技であった」と語ってるように、難しいとされる歌舞伎に挑戦し、女形の発声から所作、そして演舞と、素人目には、長年、歌舞伎の世界で生きてきた役者の様に、観る者の胸を熱くする素晴らしい演技を見せてくれた。吉沢と横浜は、この作品完成まで、かなりハードな稽古を乗り越えて、役者としての魂と情熱を注ぎ込んできたことが覗えた。

脇を固める出演者も、半弥の父であり芸の師匠である花井半二郎には渡辺謙、その妻には、正に公私ともにも適役の寺島しのぶ、東一郎の幼馴染で、半弥の妻となった女には、高畑充希、そして、老齢の先輩・万菊には田中冺が演じ、この田中が漏らす女形の一言一言が、とても重みのある意味ある言葉となって、心に染み渡っていく。

少し早くはあるが、作品内容や役者達の演技からも、そして、伝統芸能である歌舞伎をもちーにした点においても、来年の『日本アカデミー賞』の作品賞、男優賞、助演男優賞の最有力候補作品だと思う。歌舞伎を知らなくても、感動を味わいたい方は、是非、ご覧ください。

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bunmei21

4.0血筋と才能に翻弄される歌舞伎役者の生き様

2025年10月2日
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興奮

知的

難しい

鑑賞中、思わず腕組みをしてしまった。高評価とは異なる印象に違和感を覚え、“どんな作品にも良いところがある”という視点に戻って鑑賞を続けた。

本作は、歌舞伎役者の波乱万丈の半生を描いた話題作である。淡々として静かな大人味の作風を貫いている。歌舞伎のシーンが絢爛豪華であり監督の歌舞伎に対する畏敬の念が伝わってくる。

本作の主人公は裏社会に関わる父を持つ立花喜久雄(吉沢亮)。父が亡くなって、喜久雄の歌舞伎役者としての才能を見抜いた上方歌舞伎役者・花井半次郎(渡辺謙)に引き取られ、息子の俊介(横浜流星)と親友、ライバルとして厳しい歌舞伎修行に励んでいく。ある日、けがをした半次郎が代役に喜久雄を抜擢したことで、彼の人生は大きく動き出す。

喜久雄と俊介は半次郎の後継者争いで険悪な関係になりそうだがそうはならない。俊介は血筋重視、喜久雄は才能重視。二人の価値観の違いが対立ではなく相互補完関係を生み、互いの修行の糧になったと推察できる。喜久雄の抜擢に俊介の母親も反対するが、迫力不足だったのは彼女も舞台で喜久雄の才能を見抜いていたからだろう。喜久雄の抜擢で、既に後継者は決まった。半次郎は血筋ではなく才能の継承を取った。半次郎という名跡、更には歌舞伎界の今後の発展のために。

歌舞伎シーンのカメラアングルが出色。舞台裏、役者の背後から撮ることで、観客がその場にいるかのような臨場感に圧倒される。喜久雄と俊介の出番は、最初は踊りだけだが、次第に台詞が多いシーンが増え二人の表情が美しくなっていく。歌舞伎役者の世界には演技美という言葉が相応しい。型のなかに情熱を宿し観客の心を揺さぶる美しさがある。

映画俳優の世界も同様。吉沢亮、横浜流星は完璧に歌舞伎役者に成り切っていた。二人には映画俳優の天賦の才があると感じた。二人が更に精進し唯一無二の存在になった時、映画界は新たな“国宝”を創り出すだろう。

一回観てスッキリ分かる作品も良いが本作の様に何回か観て新しい発見がある作品には観客との対話がある。

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みかずき

4.0まわりの異性達とともに

2025年9月4日
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癒される

ドキドキ

カワイイ

 上映時間が約3時間なのですが、あっという間でした。
 貸し切り的な環境で鑑賞するのが好きなのですが、いまだに映画館が満員で、かなり前の席だったのに両脇に知らない異性が座って、ひじ掛けも使いにくい窮屈なシチュエーションは久しぶりで、それだけでもドキドキしていました。
 席に座ったからには、大ヒット映画の醍醐味だと思って覚悟を決め、楽しむことにしました。

~序盤~
 BGMに癒されます。音楽のテイストは最後(エンディング)まで一貫していました。
 背中の刺青も美しく、喜久雄の父親の最期のシーンも印象的でした。
 ティーンズたち、喜久雄(黒川想矢)と俊介(越山敬)の二人が結構可愛いくて、もっと彼らの青春時代を観ていたかったのですが、わりとすぐ大人編になってしまいました。

~大人編~
 そうそう、吉沢亮さんと横浜流星さんを観に来たんでした。「ここからが本番だ」と、氣持ちを引き締めなおします。喜久雄(吉沢亮)の名前が東一郎になったり、さらに変わったりします。
 喜久雄と春江(高畑充希)のロマンティックなkissの場面は、氣まずさを感じたのもつかの間、長すぎなくて安心しました。

 神社で悪魔にお願いしたと言う場面、好きです。
 森七菜さん可愛い役で登場した時から、喜久雄と恋仲になりそうな予感した通りになりました。今度の濡れ場が、長いというか激しいというかエロかったです。
 喜久雄が妻子いることを隠してるのか、そもそも結婚してなかったのか、避妊しているかどうかなど、頭の中は氣になることが山積みでした。

 ちょくちょく数年後になるため飽きません。
 短いエピソードを休みなしで続けて連続で観ている感覚です。

~終盤~
 伏線回収はありますが、語られていないことがあって、最後まで目が離せませんでした。しかし、結局、いろいろ想像するしかありません。それが2回目の鑑賞をしたくなる理由ですね。
 演出も工夫していて良かったです。

 エモーショナルな場面がありますが、驚きのほうが勝っていて涙が出ませんでした。私はまだ1回しか観ていません。今作は“2回目が泣ける”と聞きました。次の鑑賞時、泣けたらいいなと思っています。

 4時間30分の長尺バージョン(詳細不明ですが、ディレクターズ・カット版?)が氣になります。

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Don-chan

3.5悪魔との取引‼️

2025年6月8日
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泣ける

悲しい

怖い

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活動写真愛好家

4.0圧倒的熱量〜「歌舞伎の映画」であり「映画が歌舞伎」だった

2025年6月12日
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泣ける

知的

斬新

2025年公開、配給・東宝。

【監督】:李相日
【脚本】:奥寺佐渡子
【原作】:吉田修一〜『国宝』

主な配役
【立花喜久雄(花井東一郎)】:吉沢亮
【大垣俊介(花井半弥)】:横浜流星
【花井半二郎】:渡辺謙
【大垣幸子】:寺島しのぶ
【福田春江】:高畑充希
【彰子】:森七菜
【藤駒】:見上愛
【小野川万菊】:田中泯
【立花権五郎】:永瀬正敏
【綾乃】:瀧内公美

1.圧倒的な熱量と緻密な脚本

『フラガール』、『悪人(原作:吉田修一)』などで高い評価を受けた李相日監督。

歌舞伎へのリスペクト。
人間という生き物への愛、侮蔑、赦し。

それらを圧倒的な熱量で描ききった。

また、構成、セリフなどに冗長さや贅肉がなく、
175分という3時間に及ぶ上映時間中、
たえず緊迫感と緊張感を維持させられる。

ラスト近く、
人間国宝となった喜久雄(吉沢亮)のインタビューシーン。
ようやく「緩和の時間」かと思ったら、綾乃(瀧内公美)が登場する。そんな具合に、ひとときも観客を休ませないのだ。

歌舞伎という伝統芸能を舞台に、

◆若い役者たちの能力を限界まで引き出し、
◆分かりにくい歌舞伎の舞台を簡明かつ荘厳に描出し、
◆人間とは何か、を観る側に問い掛ける、

そんな作品を製作してみせた。

2.素晴らしいキャスティングと裏切らない演技

吉沢亮と横浜流星は、
以前から良い俳優だと思っていたが、
本作で、その潜在能力の一部がさらに解き放なたれた。

また、脇を固めた俳優たち、特に
寺島しのぶ、田中泯、さすがの存在感だった。

冒頭、
任侠ものと見紛う立ち回りがあるが、
この場面すら、「舞台」のような仕立てになっており、
永瀬正敏が大見得を切る。

歌舞伎の映画であり、
映画が歌舞伎だった。

3.まとめ

荘厳、重厚、熱量、、、
暑苦しい単語が並んでしまうが、
実際にそんな映画だった。

ソファに寝転がって観る作品ではない。
歌舞伎という芸能を舞台にしながらも、

「娯楽」の対極にある映画。
もう一度、通しで観られるか、自信はない。
☆4.0

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Haihai

2.5芸か血か

2025年6月7日
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単純

興奮

難しい

1964年15歳の時に出入りで組長だった父親を亡くした喜久雄が、父親と親交のあった上方歌舞伎の当主の元で彼の息子共に役者になる話。

目の前で父親を殺されて、ミミズクの紋々背負って復讐!?からの1年後、長崎から大阪は丹波屋の二代目花井半二郎の世話になり巻き起こっていく。

花井東一郎という名前を貰い、半二郎の息子の半弥と共に切磋琢磨し名を上げて行く様子を、演目の一部をみせながら展開していくけれど、随分と丁寧に作り上げられていて、一つ一つのシーンが長い、長い、長い。それぞれのシーンはめちゃくちゃ長いわけではないけれどね。

そして代役から東一郎と半弥の関係の変化が加速して行くけれど、そこからの展開がいくらなんでもイマイチ釈然とせず…その程度の知名度?

決してつまらなくはないし、歌舞伎の演技は素晴らしかったけれど、色々とクドくてテンポが悪いし、通してもやはり長いし、終盤の流れも周辺人物みんな尻切れで退場という感じだし、なんなら主人公まで…ということで、これだけの尺を使われて尚、もうちょいみせてくれよという感じだった。

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Bacchus

5.0画面に凄みがほとばしっている

2025年6月30日
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傑作映画はとにかく理屈じゃなく、画面に凄みがある。そして、この映画にはその凄みがあった。日本映画でこの凄みを感じたのは久しぶりだった。
これは確かにすごい作品だった。3時間途切れることのない集中力ある物語が展開するが、決して疲れることがない。緩急ある構成力が素晴らしい。歌舞伎役者の業を描く作品に役者たちが全力で挑んだ結果、映画の高みへと達している。
喜久雄役の吉沢亮にレスリー・チャンの面影を見た。彼がいなくては絶対に成り立たない作品だったことは間違いない。本物の歌舞伎役者を起用しなかったことがかえって良かったのかもしれない。公式パンフレットのインタビューで吉沢亮は、「どこまでも稽古を積んでも足りないと感じてしまう」と語っていたが、その気持はスクリーンの喜久雄からも感じ取れるのだった。彼には歌舞伎役者の「血」を持たないから。
もちろん、横浜流星もすごいし田中泯は手招きだけで観る者を震わせるし、すごいシーンがいっぱいあった。最後に喜久雄が見た景色がどんなものだったのか、恐ろしくも覗いてみたいという気持ちにさせられてしまった。表現者にしか見えない景色がある。

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杉本穂高

4.5芸を極めた者だけが見る景色

2025年6月8日
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ひでちゃぴん

4.5業界の洗礼を受け 親子の絆に絡みつかれ 世間の荒波に揉まれながら 人生を泳ぎきった男の物語。3時間があっと言う間の濃密な人間ドラマです。見応え十分。

2025年7月6日
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もりのいぶき

4.0名作だけが持つ風格は十分過ぎるほど感じる でも全体的に建て付けが悪く寸詰まり感があるのが少し残念

2025年6月25日
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二週間ほど前に出された梅雨入り宣言もどこへやら、この数日はお天気続きだったのですが、今朝は一雨来そうな雲行きでございました。そんななか、平日の正午少し前に開始、午後三時に終了という中途半端な時間帯にもかかわらず、『国宝』を観に集まった善男善女で劇場はざっと七分の入り、なかなかの盛況です。思えば、三週間ほど前、梅雨入りに先立って始まったこの興行は週を追うごとに好調さを増してまいりました。この『国宝』、この勢いですと今年を代表する一本になりそうでございます(以上、吉田修一が『国宝』で使った文体の文体模写でございます)。

ということで、観てきました『国宝』。任侠の家に生まれた 主人公の喜久雄(演: 吉沢亮)が歌舞伎の世界に入って女形として芸道に励み、ついには人間国宝になるまでの50年に渡る一代記です。中身はと言いますと、さすが評判に違わぬ出来栄え、歌舞伎に疎い私のような者でさえ、スクリーン上で展開される歌舞伎の演目「二人道成寺」や「曽根崎心中」等の様式美や歌舞伎役者でない者たちによる歌舞伎の熱演に酔いしれていったのでございます(なぜかまた国宝調)。まあでも鑑賞直後に思い出したのは数年前にヒットした『ボヘミアン•ラプソディ』でした。あの映画は最後のコンサート•シーンがすごくてそれがすべてを持っていってしまった感じで、ところでストーリーはどうだったと問われるとあまり憶えてませんと答えるしかありませんでした。この映画も少し似ているところがあって絢爛豪華な歌舞伎シーンに目を奪われていると、特に後半の駆け足で寸詰まりになっているあたりはスジを追うのに苦労しそうです。私は原作小説を読んでいましたので大丈夫だったのですが、逆に原作からの改変部分が気になってしまいました。

小説のほうでは「徳次」というキャラクターがいて、ほぼ全篇に渡って重要な役割を果たします。映画のほうではその徳次は冒頭の新年会のシーンで「関扉」を喜久雄といっしょに演じただけであっさりといなくなります。徳次は喜久雄より二つほど年上の 原爆症で親を亡くした孤児で喜久雄の父親に拾ってもらって立花組の部屋住みとなっていました。彼は喜久雄のことを「坊ちゃん」と呼び、喜久雄が義経だとしたら、武蔵坊弁慶みたいな存在で、喜久雄が歌舞伎役者として頭角を表してきたあとは喜久雄の回りの汚れ仕事を引き受けてゆきます。彼がいなくなったので、彼が喜久雄の娘の綾乃を救い出す場面も、「国性爺合戦」を元ネタにした「長江を白く染めてみせる」と言った彼の名文句も映画では出て来ず、非常に寂しい思いをしました。彼の他にも、喜久雄の父親亡き後、長崎でその跡目を継ぐ「辻村の叔父貴」とか、大阪で知り合った友人でTVで冠番組を持つ売れっ子お笑い芸人の「弁天」とかが小説にいて映画にはいません。まあ尺の都合上、致し方のないことかもしれませんが、これらの人々がいないおかげで映画では後半部分の話の進め方に苦労しているフシが見受けられ、残念な説明ゼリフが多くなったと思います。ということで、もっと尺を長くして『国宝-青春篇-』と『国宝-花道篇-』の二部構成にして別々に公開したらどうだったろうか、という考えがちらりとよぎりましたが、言い出したらキリがないこと、ここは175分の一本にまとめた李相日監督の力量に敬意を表したいと思います(これ、実は李監督が意識していたであろう『さらば、わが愛 覇王別姫』とほぼ同じ長さなんですね)。

あと、原作では喜久雄も俊介(映画では横浜流星が演じている)もなんとなくカタギではない感があって、特に喜久雄のほうは芸のためなら何でもやってしまいそうな怖さがあったのですが(それこそ「悪魔と取引している」感あり)、映画では吉沢亮や横浜流星のパブリック•イメージに引っ張られて原作にあった毒気のようなものが少し弱まっている感じがします。これも映像化すれば必ず出て来る問題で、ここは吉沢亮、横浜流星を始めとする俳優陣それぞれの熱演に敬意を表したいと思います。

もうひとつ、この作品は半世紀に渡る 歌舞伎役者の一代記なのですが、時代背景の描き込みが少し弱いように感じました。半世紀のほぼ半分が昭和、残りが平成だったはずですが、登場人物やそれにまつわるエピソードに当時の世相との関連があまり見い出せませんし(喜久雄の実母が原爆症で亡くなっているあたりは出てきますが)、背景に時代を象徴する何かが出てくることも少なかったように思います。このあたりは1920年代から始まってほぼ半世紀を描いた『さらば、わが愛 覇王別姫』と大きく差がついたところだと思います(もっとも覇王別姫のほうの半世紀は、国民党の中華民国の時代から始まって日本軍の統治があったり、共産党政権の誕生があったり、文化大革命があったりの激動の時代だったので、時代を描くことが物語と不可分だったわけですが)。私は喜久雄、俊介の六つほど下の年齢で彼らの成長とともに昭和、平成の時代へのノスタルジアめいたものを映画内でも感じたかったのですが、歌舞伎の美しさを見せたい、主人公の生き様を感じてもらいたい、あたりを主眼においた李監督の演出意図に敬意を表して、この話はここで止めたいと思います。

今回、私は原作小説→映画の順だったのですが、原作小説が面白すぎました。小説の地の文が語り物のような調子で(私は講談や落語の地噺を想起しました)読み始めたときにはこりゃやり過ぎだろと思いましたが、だんだん慣れてきて語り物口調で叙事的に展開されるエピソードが面白くてページを繰る手が止まらなくなりました。本当かどうかわからないにしろ、村上春樹は自分の小説が外国語に翻訳されることを意識して小説を書いているという言説がありますが、同じレベルで吉田修一は自分の小説が映画化されること意識して小説を書いていると感じました。また、先ほど、小説のほうが毒気が強いようなことを書きましたが、小説には映画にない「救い」もあります。喜久雄の娘である綾乃に関しては小説では納得できる着地点が用意してありました。原作小説未読の方にはぜひ一読をお薦めします。

あ、ここは映画のレビューでしたね。映画『国宝』は2025年の日本映画を代表する一本になるのは間違いないところだと思います。でも映画としてはバランスが悪い感じもするし、何よりも『さらば、わが愛 覇王別姫』との差も感じましたので、李相日監督の次回作への期待も込めて星は厳しめにつけました。

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Freddie3v

4.5芸に魅せられ、芸を極め、芸に飲みこまれる

2025年6月7日
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知的

幸せ

驚く

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TS

5.0素晴らしい

2025年6月4日
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興奮

カマラワーク、場面の切り替え、そして脚本が素晴らしい‼️存分に終始たのしめました。歌舞伎は興味があるけど行った事なし。でも全く関係なく面白い。
主人公と御曹司の波瀾万丈人生が飽きる事なく、これでもかーって位に一転二転で良かった。
最後も格好いい終わり方。
アカデミー賞は間違いなくノミネートは確定作品。
有難う御座いました。

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ノブ様

5.0その才能が、血筋を凌駕する

2025年6月7日
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ゆき

4.0ポップコーンを食べるのに、とんでもない緊張を強いられる映画

2025年7月15日
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momokichi

4.5極上の映像体験!歌舞伎のシーンは圧巻!

2025年5月22日
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鑑賞方法:試写会

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知的

斬新

「守ってくれる血が俺にはないねん」

▼感想
東宝の試写会に招待頂きました!ありがとうございました!

かなり面白かった!3時間と邦画にしては長尺だったけど、これだけの時間が必要な濃密なストーリーだった。吉沢亮演じる喜久雄が日本一の歌舞伎俳優を目指す。様々な出会いや別れ、栄光や挫折など歌舞伎を極める美しさや残酷さがこの3時間に詰まっていた。

主演は吉沢亮、共演は横浜流星。イケメン…という言葉では表せないくらい美しい顔立ちだった。二人の関係も絶妙で単純な憎み合うライバルではなく、相手の存在が自分のコンプレックスになっていた。俊介にとって喜久雄は「父に選ばれなかったこと」、喜久雄にとって俊介は「歌舞伎の血が流れていないこと」…それを思うとお互いの衝突や再会も感じ方が変わってきた。

歌舞伎のシーンは圧巻!「自分は歌舞伎が特別好きではないから退屈に感じたらどうしよう」そんな不安は吉沢亮と横浜流星の演技に呑み込まれ消えた。歌舞伎のシーンは瞬きできないくらいの迫力があり、子供の喜久雄が感じたように怖さも感じるくらいだった。退屈なシーンは全くなく、二人のとてつもない努力がこの迫力を生んだのだと思った。

これは特にスクリーンで観て良かったと思える映画だった。この映画をきっかけに歌舞伎も久しぶりに見に行きたいと思った!

▼お気に入りのシーン
震える喜久雄の顔に俊介が化粧をするシーン!

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UUU

4.5ゲイがあるやないか。

2025年6月9日
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監督「若手の人気俳優使って撮りたいんだが良い企画ないかな」
プロデューサー「ゲイがあるやないか」
のようなやり取りはここではなかったようでゲイの映画ではありませんでした。

監督とキャストで、すごく期待していた作品だけれど、「100年に1本の壮大な芸道映画」という、まさかの原作者による100年に1度くらいの仰天な賛辞にちょっと引いてしまったので観るのが遅くなった。(10年に1本というならわかりますよ。100年に1本て。映画自体の歴史がまだ130年なのに。さらばわが愛覇王別姫からでも30年。ホントに作家さんの言葉なのか疑ってしまう。)
元々、歌舞伎役者嫌いだし。

壮大な映画には違いなかった。
出だしと、お初徳兵衛の道行きに重ねた俊介と春江の道行きあたりは面白かったけれども、後半はいつ終わるのかいつ終わるのかと思いながら観ていた。

美形には違いないが吉沢亮と横浜流星の女形・着物姿での踊りよりも、マーガレット・クアリーがレオタード着けてエクソサイズしてる方がきれいだな、ワクワクするなぁて思っちゃう私にはこの映画を語る資格がないのかもしれませんが。
あんなに厳しい歌舞伎の世界なのに歌舞伎役者さんじゃない俳優さんたちが演じて大丈夫か、というより演じ切った吉沢亮と横浜流星がすごい。
そのすごさと尺の長さは、ファイナルレコニングのトム・クルーズのノースタントのアクションみたいで、称賛と感謝に値する。ただ作品としてはどうか。

クライマックスは音楽にごまかされた感はありましたが、映画を観た〜という満足感は充分味わえました。

吉沢亮と横浜流星と近松門左衛門はすごい。

(追記)
すごい映画だとは思いますが、絶賛のレビューがこれほど多いとは。
歌舞伎俳優ってそんなに偉いのか?
お能や狂言、文楽は伝統芸能だから文化伝承の意義から人間国宝って解るけど、歌舞伎ってもう好き勝手やってるじゃないか。横浜流星と吉沢亮はすごい俳優だけど、それでも歌舞伎の血筋でもない二人が映画とドラマの撮影の合間に稽古すれば素人にはわからないほど見事に演じられる歌舞伎って所詮は政治家と一緒で能力がなくても跡を継ぐことができるような世界じゃないか。(ホントは一番能力が必要な世界なのにね) と常々思っている私は、ヤクザに生まれて歌舞伎の世界に入って苦労して云々というお話よりも、歌舞伎の家に生まれた男(女でもよいね)がヤクザになって任侠の世界に生きるって話の方が感動したかもしれません。

横浜流星と吉沢亮はすごい俳優だな。

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大吉
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