「想像したよりクリーンな世界だった」国宝 toyotoさんの映画レビュー(感想・評価)
想像したよりクリーンな世界だった
田舎の平日午前の映画館。
いつもはほぼ貸切なのに、本日は券売機に長蛇の列(平日にこんなの初めて!)。しかも、どうも不慣れな高齢のお客さんが多いようで、なかなかスムーズに流れない。
上映10分前に到着しちゃったので(これ、ヤバいかも!)と思ったけど、まあまあの席も取れ、なんとか本編の上映開始には間に合い鑑賞。
一番大きなスクリーンで、6割くらいは埋まってる(平日にこんなの初めて!)。
平均年齢は高い。劇場鑑賞に慣れていない層が多いのか、上映中にカバンの中をゴゾゴゾゴゾゴゾしてカサカサ包装のお煎餅を何度も何度も音を立てて開けては食べたり、携帯の着信音を何度も何度も鳴らしたり、ツレ同士で話す客なんかが近くにいて不愉快だった。
年配が多い客層だとありがちなの?
作品は、時間を忘れさせる面白さ。
事前の情報収集はせず「なんだか綺麗な俳優さんが二人も出る、芸術系のお話なのね」程度の認識。PG12だし、BL要素やら”セッション”的なドロドロやらがあったりするのかしら(ワクワク)とゲスい想像をしていました(恥)。
しかし実際には、二人ともなんだかんだ言って”育ちがいい”設定だからでしょうか。全体的にはドロドロとした描写はほぼ無く、サラリと上品に楽しめる耽美な青春(?)映画という印象。
主人公二人の心根も関係性も美しく、少年時代の役者さんたちの演技も良かったです。
映像も綺麗です。
万菊(田中氏)の登場で「あーこのおばあちゃんみたいな国宝老人が、若くて美しい若者を食い物にして・・・」と想像したけど、そうじゃなかった(ゲスくてすみません)。
やさぐれてボロボロになった喜久雄(吉沢氏)が屋上で踊るシーンでは「ここで絶対、飛び降りる!」と思ったけど、そうじゃなかった(ゲスくてすみません)。
「美しいだけで終わらない」「何があっても表現し続ける」という、ガッツというか生命力というか、世俗にしがみつく胆力が現世での成功には大切なんでしょうか。
劇中では、歌舞伎を見たことがない私でもちょっとは知っているような有名作品や、なかなかに面白い演出の演目がたくさん演じられていて、衣装も所作も美しく、小道具や舞台演出も面白い。裏方さんのお仕事もうかがえて、プロフェッショナルな世界。
歌舞伎にも興味がわきました。今度観に行きたいな。
喜久雄(吉沢氏)も俊介(横浜氏)も、後半にいくに従って女形としての美しさや凄みに磨きがかかっていく感じ。
俊介(横浜氏)と喜久雄(吉沢氏)の最後の演技は凄みがあってちょっと泣けました。
心根が美しく、親友二人のザ・青春って感じ。
と書いてみて気がついたけど、これ、二人とも年齢的にも役者としても「青春」ではないはずなんだど、そう感じちゃうのはなんでかな。劇中の二人の立ち位置を考えると、本当ならもっと重厚で厚みがある脚本の方が正解なんだろうけど。
でもまぁ、わかりやすくて嫌いじゃない。
そして、喜久雄(吉沢氏)の最後の演技は、妖艶で美しく女性以上に女性らしいカットがたくさんありました。
お二人とも、お稽古たくさんしたのでしょうね。素晴らしい役者魂だと思いました。
劇中では、どの階層の女性も「男社会の中の女」という立ち位置で、”あーそんな感じでそんな扱いなんだなー”、”これ「教皇選挙」の時と同じ感じだわ〜”と思いました。
竹野(三浦氏)が良かったな。最初は喜久雄(吉沢氏)に殴られてたけど、結局、最後まで見捨てずに伴走し続けた歌舞伎ファン。
冒頭に記述した他の観客の無作法を差し引いてあまりある面白さでした。
歌舞伎の演目とかを公式HPで勉強してからもう一度鑑賞しようかな。
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