「もはや田中泯こそ国宝!そして「徳ちゃん」が歌うますぎ!」国宝 ycoさんの映画レビュー(感想・評価)
もはや田中泯こそ国宝!そして「徳ちゃん」が歌うますぎ!
素晴らしくて、書きたいことがあり過ぎる。
鑑賞してからかなり経ってしまった。
まず、原作を読んだ時からこれは是非李監督に映像化してほしい!と思っていた。
ついに李監督により映画になることが発表され、喜久雄と俊介が吉沢亮と横浜流星だと知った時、もうこれほどぴったりのキャスティングは無いと思い、出来上がる映画の素晴らしさを思うと興奮で身震いするほどだった。追加でキャストが発表されるたび、音楽が原摩利彦で主題歌では井口理が歌うと発表された時、期待と興奮は高まるばかりであった。
そして待ちに待った上映。
素晴らしかった。私が原作を読んで思い描いていた世界がそのまま映し出されていた。
「そのまま」というのが本当に驚きで、ある意味「予想以上」より凄いことだと思うのだ。文字だけから私個人が思い描いた世界と、李監督が思い描いた世界が同じであったということ。その吉田修一氏の描写力!そしてそれを具現化する李監督の力量!それに応える俳優陣の熱意!
吉沢亮と横浜流星の素晴らしさについては多くの人が語っているのでもはや私が書くことは無いほどだが、敢えて一つ書くならば、「W主演」としても良かった!それくらい横浜流星の役は重要で出演時間も多い。が、世に出る名前の多さは当然ながら主演の吉沢亮が圧倒的。「これが二番手というものか!」と芸能界の厳しさを知らしめられた気分。
田中泯、もはや彼こそ「国宝」では!?歌舞伎のシーンはもちろん、そうでないシーンも役への入り込み方が尋常ではない。80歳であそこまで魂を込められるとは。普通の80歳は台詞を覚えるのもやっとでは?そもそも彼はダンサーだったはずなのに!ダンサーとしてはもちろん、俳優として表現者として物凄い高みに来てしまった。
また、この作品の実質3分の1ほどを占めている少年期を演じた子たちが本当に素晴らしかった。
黒川想矢、一体あの若さでどれほどの感性が育っているのか。どこまで計算でどこから本能なのか。彼にとっての演技とはなんなのか。余りにも上手く、自然で、しかし熱を秘めている。これからどのように変わっていくのかまったく予想ができない。でも物凄く魅力がある。
越山敬達、黒川想矢と渡り合わねばならないというプレッシャーはいかほどであったろうか。けれども彼に負けず劣らず。地に足のついたしっかりした演技力でしっかり彼と対等に向き合っていた。
そして下川恭平。舞台挨拶にも出ずこの映画の記事で取り上げられることはほとんどないが、原作ではかなり重要な役割でずっと喜久雄に寄り添っている徳次役。映画では少年期の黒川想矢との歌舞伎とその直後、その他2シーン程度なのだが短い出演時間なのにとても存在感があり印象に残る。「いったいどんな子なのだろう」と調べたら、なんと歌手デビューしているではないか!しかも上手い!演じている時とは異なる、澄んでよく響く声。曲も自分で作っており、テクニカルではないがありきたりな退屈さは無く素直に心に入ってくる。なんと吉沢亮主演の「ぼくが生きてる、ふたつの世界」のテーマソングも歌っているとのこと。これは思いがけないダークホースを発見した気分。これからも注目したい。
それにしてもこのレビューの「印象」の顔アイコン、このような映画を表すのにふさわしいのが無くて困る。
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