「吉沢亮さん更なる高みへ」国宝 彩陽さんの映画レビュー(感想・評価)
吉沢亮さん更なる高みへ
公開前から気になっており、映画館へ足を運んだ。1番心に残ったのは、終盤で喜久雄が1人で踊った時に後ろの幕の色が一瞬で変わったシーン。美しかった!これを見るためにここに来たのだ、と思ったくらい。
観ていてしみじみいいなと感じたのは、吉沢亮さん演じる喜久雄と横浜流星さん演じる俊介のやり取り。特に、半二郎が代役を喜久雄に指名する前までの2人の様子は見ていて微笑ましく温かい気持ちになった。その後2人に多くの試練が訪れたシーンはどれも見ていて辛くなった。
ちなみに、私がこの映画を観たいと思った1番の理由は、映画キングダムで最優秀助演男優賞を受賞した吉沢亮さんが更なる飛躍を遂げる姿をリアルタイムで見たかったからだ。吉沢さんが初めて演技をしたのは17歳の時。ルックスへの賞賛が多い中、キングダムでは演技力を高く評価された。現在31歳になられた吉沢さんの演技は絶対に映画館で見たいと思っていた。案の定、スクリーンに吉沢さんが映る度に惹き付けられた。
ここからは、感じたことを率直に書いていきたいと思う。まず、主要キャラ以外の各キャラの心情やキャラ設定をもう少しわかりやすく描写してほしかった。この作品、大元は小説であるが、私は小説を読んでいない。他の方の感想を読んだら、映画用に改編した箇所も幾つかあるようだ。私が、もうちょっとこうだったらいいな、と感じてしまった箇所は以下の通り。
例えば、高畑充希さん演じる春江が俊介と結婚した理由。春江の心情を一言でいいから描写してほしかった。あと、俊介が女性達に囲まれて華やかにお酒を飲むシーン。あのシーンが必要だった理由がいまいちわからない。あのシーンがあったことにより、俊介と喜久雄の性格・境遇が正反対だということ、俊介が御曹司だということはよくわかったが、浴びるようにお酒を飲みながら女性達をはべらす「俊介」という人物、実はめちゃくちゃ「いいやつ」である。3時間という限られた時間でこの作品を深くスッキリ理解するために、敢えて俊介をもう少しだけ「やなやつ」として描いても良かったのではないか。(終始いやなやつにしなくとも、例えば青年期と中年期はちょっといやなやつ、そして晩年でいいやつにするとか…笑)
あと、喜久雄が俊介に「俊介の血がほしい」と発したシーン、神社で悪魔と取引したと言ったシーン、二代目半二郎を襲名するパレードで幼い娘が「お父ちゃん」と追いすがる姿とそれを制する藤駒のシーン。この辺りは私にとっては生唾をごくりと飲み込んでしまうようなシーンだったのだが、どれも後のどの場面に繋がる伏線なのかいまいち理解できなくて悔しかった。
つまりこの映画は私自身の理解力の足りなさにより、様々な大事なシーンを味わい尽くすことができなかったのだ。ひとつひとつをきちんと理解し、スッキリした頭で観ることにより、もっと吉沢さんの美しい舞いにのめり込んで見たかった。悔しい。
ところで、この作品では吉沢亮さんが1年半かけて歌舞伎の女形の稽古をし、本番もかなりの長丁場だったと聞く。ご自身の体力の限界の中で踊った際、監督から「上手に踊れるのはわかったから、喜久雄として踊って」と言われた時の吉沢さんのお気持ちはいかほどのものだっただろう。女形を演じる吉沢さんは、言葉でうまく表せないほど儚く美しかった。横浜さんの演技は、脚を失った後に舞った際の表情が素晴らしかった。
吉沢亮さんと横浜流星さんは10代の時に仮面ライダーで共演されたらしい。年齢や芸歴を重ねたお二人の共演を「国宝」という珠玉の作品で見れて本当に良かった。各キャラクターの設定に自分の理解が追いつかなかったため、1回の鑑賞では十分にこの作品を味わうことができなかったが、海外でも高く評価されたこの作品を観ることができて本当に幸せだった。大切にしたい作品だからこそ、ただ賞賛するだけでなく感じたことを正直にありのままに書いたが、私のこの作品への評価は星5つだ。国宝制作に携わった全ての皆様にお礼を申し上げたい。3時間という長丁場で正直お尻が痛くなったが、素晴らしい作品をリアルタイムで観ることができた自分は本当に幸せである。
吉沢亮さんと横浜流星さんがもっとお歳を召した時、国宝の中で生きていた喜久雄と俊介のように変わらずお互いを高め合える仲で、共に素晴らしい俳優さんのままでいらっしゃったら、きっと私はまた感動するに違いない。
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