「表現者の業を描いた傑作 若干の不満もあるが……」国宝 kou-sukeさんの映画レビュー(感想・評価)
表現者の業を描いた傑作 若干の不満もあるが……
原作小説は未履修
正に、「表現者の業」を描いた作品だったと思う。
やはり主演の二人、吉沢亮さんと横浜流星さんの演技、歌舞伎のシーンも含め素晴らしい。
もちろん、少年時代の黒川想矢さんや越山敬達さん、脇を固める渡辺謙さんや女優陣の演技派かつレベルの高い映像は、一人の青年の人生を美談に描いてしまった。
特に田中泯さんの所作は、気持ち悪いくらいの色気を感じる。
映像の作り方に特にこだわりを感じ、色やカットに対しての熱を随所に感じられた。
音楽も情欲を駆り立てるようにシーンを彩る。
なにより、光と散るもの(花や紙や雪など)の写し方が素晴らしかった。
これらの印象的なシーンのおかげて、作品の感情への訴え方が強く感じられた。
良い映画を見たと、しっかりと感じられる傑作だと思う。
基本的には絶賛なのだが、
ここからはネタバレにならない程度の不満を書きたいと思う。
個人的には、主人公の最後のシーンでは、もう少し地獄への道が示されるような展開を期待してしまった。
特に、自分の勝手で周囲の人間を何人も不幸にしておいて、少し赦しを得るようなラストの描き方は、少しバランスが悪いようにも感じる。……まぁ少年時代を考えると、トントンなのかも知れないが……。
あとは、音楽の入るシーン。
特に歌舞伎シーンからの劇伴奏が入るところ。歌舞伎の鳴物が流れる上を、BGMが重なっていくため、音楽的に気持ちが悪く、せっかくのシーンでトリップ出来なかった。もう少し鳴物側の音が早めに消えて欲しい……。
とまぁ、細かい不満はあるものの、
圧倒的な映像の豪華さと、濃密な半生の追体験のような映画だったので、
集中できる環境かつ、良い音響での視聴を強くお勧めしたい。
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