「無理を乗り越える芸の道」国宝 ださいはずのさんの映画レビュー(感想・評価)
無理を乗り越える芸の道
歌舞伎という、時代も価値観も現代と異なる江戸時代の話で現代の観客を感動させて美に酔わせるとか・・・
男が女を演じる、また老いた者も年若い女性の役を演じるとか・・・
そんな虚構で人を酔わせるという「無理」なことを現実のものとして叶えるために、歌舞伎役者は芸を磨く。年少の頃から芸の道に生きることを余儀なくされ、日夜休みなく厳しい稽古にあけくれる
そんな苛酷な芸の道、全てを捨てて芸に生きる・・・、それもあって吉沢亮演じる喜久雄は順調に興行もかかり、襲名もしたが、風向きが変わり、役もつかなくなりさらには歌舞伎界を離れ、うらぶれた旅館の舞台のどさ回りまで落魄れる。努力したから、芸に打ち込んだからといって芸の神様いや悪魔?から愛されるとは限らない
いま流行りの仕事とプライベートのバランスを取る、いわゆるワークライフバランスと対極の世界。ワーク(芸術作品)のために自分の人生も周りの者たちの幸せも全て捨てて打ち込む、それが芸の世界なのだ。芸の偉大さの前に人間の人生や幸せなど小さすぎるものなのだ
この映画の上映された2時間50分、その苛烈さを味わい続けた時間だった。
歌舞伎界の出身でもない吉沢亮と横浜流星、その2人に歌舞伎役者としての踊りや所作が違和感なく感動させる、それがこの映画の最大の「無理」で、それを役作りした2人こそ苛烈な芸の世界の犠牲者であり成功者だったのかもしれない
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