「日本映画最高傑作の誕生」国宝 なこさんの映画レビュー(感想・評価)
日本映画最高傑作の誕生
国宝の映画に関する予備知識は特になく、予告映像を少し見ただけで公開初日に行った。
メインビジュアルのポスターを見た瞬間、私は行くことを決意していた。
私の世界で2番目に好きな映画が『さらば我が愛 覇王別姫』であり、その作品にものすごく似た雰囲気を持っていたからだ。
開始5分で、この映画は傑作に違いない。と確信した。
渡辺謙さんの圧倒的存在感と、黒川想矢くんの凍り付くような妖艶さと瞳の美しさが導入部分で魅入らされた。
序盤は幼いころの2人の様子、まんま覇王別姫!と思ったが、物語が進むにつれ、全く新しい一人の人間国宝・歌舞伎役者の人生の物語であることが分かる。
曽根崎心中を演じる喜久雄・吉沢亮は身震いがするほど美しく、女形そのものだった。その前の緊張で震えるシーンから鳥肌もの。
私が日本映画を好きな理由は、心情の変化の表現が繊細なところ。心情表現を大げさなカメラワークや映像ではなく、俳優の演技に全掛けするところ。
『覇王別姫』は社会性・暴力性が強いのが特徴なので、それとは完全に異なる、「静かに血を憎み、歌舞伎に人生を捧げる」作品となっていた。
クライマックスは年を重ねてからの俊介・横浜流星と二人で演じる曽根崎心中。監督は横浜さんの演技に少し不安があったようだが、無理に前に出ようとしないけど、俊介の子どものころからの一貫した性格を感じられる素晴らしい芝居だったと思う。
最後の喜久雄の舞は、何のセリフもないのに、その指先までまるで最初に子どもの頃の喜久雄が見た人間国宝を見ているかのようなまさに「生きる国宝」。すべての神経が研ぎ澄まされ、ツンと雪の中を舞うような冷酷さと繊細さを感じられる彼の人生が詰まった究極の美に、涙が溢れてしまった。
彼の求めていた「景色」の描写含め、1秒も無駄のない演出、無理に大きな音や激しいCGを使わない無駄を削ぎ取った映像美、トップレベルの俳優陣の芝居、歌舞伎の美しい衣装や道具。全てが完璧。
私の人生で一番の日本映画となった。
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