劇場公開日 2025年6月6日

「誰も、勤まりゃしない」国宝 機動戦士・チャングムさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5誰も、勤まりゃしない

2025年6月9日
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 天上天下唯我独尊と云う言葉があります。直訳すると、世界で私が、いちばん尊い、と、なります。我を崇めよ的な意味で、使われますが、あのお釈迦様が、そんなこと言いますかね?。

 「サブスタンス」もそうですが、美を追求するヒトの思いは、狂気と紙一重なのか、と。

 …本物より綺麗に描こうとするなんて、あんた、まともじゃない。

 かわぐちかいじの「心」のセリフです。「ヴィーナスの誕生」で有名なボッティチェッリが、酒場の女主人に言われています。

 そう、まともではない。でも、綺麗なものを求めてしまう私がいます。綺麗と引き換えに、何かを売り渡してしまうヒトも、います。
 季節に合わせ、花は咲きます。綺麗なものです。でもその綺麗を造花にすると、埃だらけの花となります。ヒトの追い求める綺麗とは、造花に積もった埃程度のものなのかも。それでも私は、美を否定しません。世界は移ろいゆくもの、私の思い通りにならない。空虚なものです。ただその刹那に、美を求めるヒトの思いを否定する程、私は達観する気はありません。

 美は醜悪であり、醜悪もまた、美なり。

 …どんなに世界が広くとも、あなたは、世界で唯一無二。他に代わりはいない。それは、素敵なことだと、思いませんか?。

 先ほどの、天上天下唯我独尊を、こう訳した方がいます。私は、喜久さんにも、俊さんにもなれません。そんな存在に、憧れるけど、国宝級の生き方はしてません。先日、数年前の母の日に、私が贈った紫陽花に、小さな花が咲きました。母が地味に管理していたようです。母に感謝ですね。綺麗ですよ。地味だけど。そう思える今の私に、国宝級の賛辞を捧げたくなります。
 私が喜久さんや、俊さんにならないように、喜久さんも、俊さんも、私にならない。私の代わりなんぞ、誰も勤まりゃしない。そう、私達、ひとりひとりが、唯我独尊なのだから…。

 国宝とは、何のことだと思います?。

「さらば、わが愛」
 変わらない京劇の舞台から、変わりゆく中国を描いた、稀に見る傑作。「国宝」に、通ずる何かがあります。併せご覧下さい。

「ビューティー」
 小さな村の、小さな奉納歌舞伎が舞台です。どんなに格好悪くても、どんなに笑われても、舞台を降りない。その思いに、共感できたら、ラストは号泣一直線です。独立系の映画なので、視聴困難やも知れませんが、オススメします。

機動戦士・チャングム
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