「田中泯だけでも⭐︎倍増」国宝 こまめぞうさんの映画レビュー(感想・評価)
田中泯だけでも⭐︎倍増
原作既読、歌舞伎は20年以上観ております、マニアの入り口程度にはいると自負しております。
原作者がこの作品のために歌舞伎の裏方に三年入ったというだけあって、舞台の上がる前の行き詰まる緊張感や演者たちの微妙な距離感、血縁主義の強さなどが遜色なく著されております。
文庫でも上下2巻の内容を映画にするには流石にそのままとはいかないのは当然のことでした。
正直なところ、女形のお家芸であるならば吉沢亮と横浜流星ではゴツい。観る前からそれはわかっていたので、人気のためにはしかたないかとあまり期待しておりませんでしたが、吉沢亮の声が予想外に板の上にはハマっており嬉しい収穫。
お二人ともそれこそ血の滲むような努力をされたのだろうと察しました。しかし悲しいかな、どうしてもずっと日舞をされてきた本場の人たちとは違う。本場の人たちは扇子が体の一部のように動く。どうしても手首の固さはその域まで達していなかった。
師匠に渡辺謙はあまりにもイメージが違う。立役だろう…荒事だろうよ…。師匠連中には梨園が良かったのではと思いましたが、万菊役の田中泯が素晴らしすぎて脱帽。語り口も驚きましたが、何よりも所作が何十年も女形として生きてきた人のそれであり、演じることの究極はここなのではないかと感嘆いたしました。
この作品につけた星全て田中泯といっても過言ではありません。
もはや田中泯を観に3時間使ってくださいと宣伝したいほどです。見応えありました。
でも鷺娘は玉三郎を観てほしいな…。
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