劇場公開日 2025年6月6日

「臨場感と艶やかさに引き込まれる」国宝 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5臨場感と艶やかさに引き込まれる

2025年6月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

緊張感と没入感。
吉沢亮、横浜流星、2人の女形姿の艶やかなこと。
彼らの生きざまに引き込まれました。

実際の歌舞伎と比べた良し悪しは分からないが、おそらくインタビュー記事で読んだ中村鴈治郎氏の指導もあり、素人目にはすごいとしか思わず。

音も大変丁寧に作られていて、衣擦れ、摺り足、床を踏む音……
音響が生み出す最高の臨場感。
(できるだけ音のいい劇場環境で観たほうがいいと思いました)

さらに、普段絶対に見られない幕を閉じた裏側、早替わりの黒子の手技、大道具を操作する裏方の動きなどが見られたのは、映画本編と同じくらい興奮しました。

また、この作品が歌舞伎の実際の公演・運営を手掛ける松竹で作られていないことによって、「血筋」に拘り、身内の醜聞に甘く外様に厳しく、外から見る梨園の醜悪さが描けていること。
戦後すぐの芸能界は、興行の面で暴力団とも縁が深かったという事実も逃げずに触れていたこと。
制作・配給の主体が、アニメーション作品を推し進める「アニプレックス」「東宝」ユニットによる実写映画であることの意義へも思いを馳せると、邦画の今後の広がりに期待も持てました。

ちなみに私の場合、原作は未読、漫画版は雑誌でつまみ食い的に目を通している程度でした。
おそらく、原作小説の厚さ(文庫2冊約730ページ超)を考えればダイジェストなのであろうとも追われます。
漫画にあった、半次郎の妻・幸子が、続く不幸に新興宗教にのめり込むエピソードもなかったけれども。
それでも、映画として成り立つ重要な部分を選び、その様々な感情の行方を「歌舞伎の舞台」で表現する"映画としての完成度の高さ"に、比較は無意味だと思えましたし、鑑賞後に猛烈に原作小説が読みたくもなりました。
小説の実写化としては理想の形にも思えました。

演目に関し、書籍や映画で多少の知識はあるが、さほど歌舞伎座などに足を運んだこともない私にはわからない部分も多く、もっと深い理解があればより楽しめたはずと、やや悔しさも覚えました。

また上方歌舞伎界の事情なども知りませんし、ここ80年くらいの(おそらくモデルにしたであろう)実在の歌舞伎役者に関して、得意演目や優れた点、スキャンダルなどにも疎く。
下世話ですが、それらを知っていたら、さらに楽しめたはずです。
己の知の薄さに地団駄を踏みました。

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