「勧善懲悪青春映画」新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! 健部伸明さんの映画レビュー(感想・評価)
勧善懲悪青春映画
今も終息したとは言い難い日大の不祥事を元に、在学中の学生だった宮川彰太郎が書き上げた原案を、小林啓一監督が映画化。
舞台は、文芸コンクール連覇の文芸部を有する名門私立櫻葉学園高校。文学オタクなのに文芸部への入部を断られた新入生の所結衣(藤吉夏鈴)は、仕方なく学園非公認の新聞部へ入部し、部長の杉原かさね(髙石あかり)、副部長の恩田春菜(中井友望)、顧問代理の山本(石倉三郎)に歓迎され、トロッ子と仇名をつけられる。
かさねのバイブルは、真実を求める探求心を謳った『前島勝美、我が記者人生』であり、そのモットーに従って学園に巣食う悪を次々と暴いていく。最初はその暴走する正義感に反発していたトロッ子も、徐々に共感を覚え、行動を共にしていくが、敵もさる者で逆に追い詰められていき……
理事長の沼原栄作(高嶋政宏)はじめ教師陣は、パワハラ/セクハラの被害者である山内(筧美和子)以外、滑稽なほど戯画的で胸くそ悪く、全員滅びてほしい。とはいえ、それを実現する勧善懲悪的なストーリー運びはけっこう強引。文芸部部長・西園寺茉莉(久間田琳加)と元文芸部の松山秋(綱啓永)の動向には、ご都合主義的な部分が目立つ。
ところが、そんな欠点があるにもかかわらず、新聞部3人の真っすぐで瑞々しい演技にはそれを上回る熱量があり、思わず応援したくなる青春映画に仕上がっている(高石と中井は人気シリーズ『ベイビーわるきゅーれ』からいい意味でタッグ感を引き継いでいる)。丁寧につくられたフィナーレからの落穂拾いも、映画体験としての満足度が高く清々しい。
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