「暮れゆく街のふたり」盤上の向日葵 ブレミンガーさんの映画レビュー(感想・評価)
暮れゆく街のふたり
将棋とミステリーがどう繋がるのかというところが気になり鑑賞。
荒削りなところはありつつも、しっかり将棋要素を疎かにせずストーリーに組み込んでおり、男たちの生き様をたくさん見せられる良い意味でヘビーな作品でした。
てっきり棋士としての現代パートで推理が進んでいくと思ったら、ガンガン過去に遡っていき、主人公・上条桂介の幼少期から青年期、そして大人と紡がれていく時間の中で将棋と事件が結びついていくという構成は中々面白かったと思います。
少年パートでは将棋にハマるきっかけをくれた近所のおじさんとの交流から奨励会へと進もうとするきっかけを作る道筋が描かれ、中々に重い話でありながら、嬉々として将棋を指す様子は年頃の男の子で良かったなと思いました。
青年パートでは苦労してアルバイトをしている中で、鬼殺しの異名を持つ東明と出会い、賭け将棋の世界での真剣を目の当たりにするという桂介の人生観を変えていくような話になっていたなと思いました。
大人になってから一度将棋に離れながらも、再び将棋の世界に戻ってきた桂介という邪道な快進撃はめっちゃ好みだったので、この大人パートで将棋の世界に舞い戻るスピンオフも見てみたいところです。
事件の原因でもある佳介のクズっぷりは中々なもので、幼少期から虐待をしており、借金まみれでダラダラしながら、大人になった桂介にもお金をせびりにいき、何度も何度も逃げようとするどうしようもないクズで、そのくせ不利になると泣きに逃げようとする様子は、側から見たらそんなもん知らんがなって感じですが、育てられた子からするとどこか情が湧いてしまうのかなとモヤモヤさせられました。
桂介の出生が中々に衝撃的なもので、そんな種明かしがあるのか!と驚かされ、邦画でこのテイストを使ってきた作品は見た事ないな〜と素直に感心してしまいました。
将棋をメインとして観にいくと指す様子が淡々としており、尚且つ決め手もはっきり見せられず、東明の奇襲戦法も観てる側からするとはて?となってしまうところも含めて微妙だったかなと思いました。
奨励会周りの設定もかなりおざなりでしたし、凄さが俳優陣の演技メインで、盤上での出来事は弱かったなと思いました。
役者陣の演技は超高水準で、特に画面に出てきた時の圧や迫力含め渡辺謙が圧巻すぎて、少々クズめいたキャラクターであるはずなのに、タバコを構え酒を飲む姿はいかついですし、だらけていても風格のある漢の中の漢のようで痺れました。
オチの余韻の残し方はかなり好みで、バッドエンドに突き進んではいってますが、覚悟を持って足を踏み出しているのでどこかスッキリしているなと思いました。
かなりクセはありますが嫌いではない作品でした。
にしても将棋をやる人の頭の回転力は異常だなと思いましたし、一回でいいから思考を読んでみたいです。
鑑賞日 11/11
鑑賞時間 14:20〜16:30
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