「キャストの熱演の甲斐なく、サスペンスは人間に迫りきれなかった」盤上の向日葵 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
キャストの熱演の甲斐なく、サスペンスは人間に迫りきれなかった
演技陣の熱量が凄い。
坂口健太郎、渡辺謙、小日向文世、音尾琢真の4人が前面で牽引しているのだが、脇の俳優陣も総じて力演、怪演だ。ただ、佐々木蔵之介と高杉真宙はメインキャストだが坂口健太郎との絡みがないからか、ややトーンが低く感じた。
音楽がまた、良い。
鬼気迫る盤上の戦いや、主人公の数奇な運命が重厚なオーケストラによって迫力を増す。
音楽を担当した富貴晴美は劇伴ではベテランだと思っていたが、まだ40歳だったとは驚いた。大学卒業後間もなくTVドラマの劇伴を手がけたのか…。
TVドラマ、CM、アニメなどの音楽を担当しつつ映画音楽も精力的に手掛けていて、今年の公開作だけでも『ストロベリームーン 余命半年の恋』『火喰い鳥を、喰う』と本作の3本がある。これらが同時期に公開されているというのも、なんだか凄い。
一方、演出は人間を見せるより将棋の勝負場面に注力していたように思う。将棋がテーマなのだから当然かも知れないが、サスペンスの演出が淡白すぎた気がする。
広範囲でロケーションを展開したようで、ひまわり畑の絶景が本物かどうかは分からないが、いずれにしても映画らしいダイナミズムが見事だった。なのに、同じ映像を繰り返して見せるシーンが何回もあって、せっかくのスケール感が縮んでしまった印象だ。
脚本がさらに残念だ。
脚本も担当している監督の熊澤尚人は、映像のイメージが先行してしまったのではないか。
殺人死体遺棄事件を追うミステリーなので、犯人がなぜ犯行に及んだかがポイントとなる。その背景に犯人の生い立ちがあり、犯行のみならず彼が将棋に命を燃やす理由も併せて伝わるから読者が感情移入できるのだ。
だが、この映画ではその大事なところが中途半端だ。迫真の演技と重厚な音楽で胸に迫ってくるようでいて、冷静に観ていると、そうなった理由の筋道が成り立っていないことに気づいてしまう。
山梨の農場をエピソードとして追加する工夫をみせているが、その効果はどうなんだろうか。
『砂の器』路線で行くなら、刑事たちの捜査の描写に工夫が必要だっただろう。元奨励会員の若い刑事を解説者で終わらせてはもったいない。
棋士の勝負魂のようなものを描くのなら、思い切ってそっちに比重をおいてもよかった。
真剣師がプロ騎士にない勝負の恍惚感みたいなものを語るのは、もう使い古されたイメージだし、壬生名人を登場させているのに主人公が壬生打倒に執念を燃やすところがまるで描かれていないから、ラストシーンに悲愴感がなかった。
ということで、力作なのだが、色々と残念なところもある作品だった。
おっしゃる通り、振り返ると残念な点ばかり思い浮かんでしまいます。
別の小説で、枯れた向日葵は首を括ってぶら下がってる死体のように見える、というのがあって、ついつい想像してしまい…笑
将棋しかないとか言いながら大事な駒埋めるし、おかんと向日葵も意味不明だし、結局のところ東明がクズかつ厄病神ってだけのストーリーに開いた口が、、、(演技は抜群でしたけどね)
共感そしてコメントありがとうございます。
役者の演技の熱量は眼を見張るものが
ありましたけれど、なんかミステリーなのに
道明があまりに身勝手で、これで殺人はひどい・・・
そう思うと全て説得力が無くなりました。
原作を読まれてるんですね。凄いですね。
〉人間が描けていない・・・
音尾琢磨も渡辺謙も人格破綻者みたいで、
運命に翻弄される坂口健太郎も、もっと将棋と自分を
大事にしろよって思いました。
力作ではあるのですが、疑問が多すぎましたね。
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