「佳介を破滅に追いやる偶然が重なりすぎ」盤上の向日葵 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
佳介を破滅に追いやる偶然が重なりすぎ
桂介がかわいそうすぎる。
どれほど才能があろうが努力しようが、付きまとうクズどもに脅され食い物にされ、挙句の果てには犯罪者にまでさせられる。ようやく天職の棋士として世に出られたというのに。
クズ父には、金など出さずに唾でも吐いて都度叩き出せばよかったのに、「俺を殺して埋めてくれ」とかいうクソな元師匠のフザけた願いなど、いくらクズ父を殺してくれたとはいえ、「嫌だ」と断ればよいのに。佳介が頼んだわけじゃないんだから。それなのに頼みを聞いて、その上、恩人の形見の高価な駒セットを一緒に埋めるだなんて。遺体が発見されたらそこから足がつくのに。
傍から見ているともどかしいが、幼いころから虐待されてきた佳介は自分を大事にすることを知らなかったのだろうと思う。
自分を守るよりも、他人の思惑に沿う方を優先してしまう。
どれほど傷つけられようがひどい目に遭わされようが、そいつがほんの少しだけ、気まぐれに、優しくしてくれたり親切だったり、「自分のために」何かしてくれたことが、巨大な山のような恩になり記憶に残って、とにかくその恩に報いなければと思ってしまうのだろう。
恩というより負い目に近いよう。
自分がされてきたことの方がはるかに大きく重いのに、そっちは矮小化されている。
自分のことを大事にする発想がないからそうなってしまうんだと思う。
親の愛情に飢えている人にありがちな性質らしい。
こういう人は、世間に割と普通にいるようです。
眼光鋭く、余裕ありげな表情で、しかも結構なクズ。渡辺謙はこういう役にたいへんハマる。
命を懸けた真剣勝負に将棋人生を見出す東明、どん底まで落ちようが生きること=真剣勝負な将棋バカがとても良かった。
まじめ一方に見えた佳介が惹かれたのは、実はこの東明の棋風。
東明も佳介も、天から選ばれし将棋の魔力を持つもの、ありきたりの勝負では満足できない、命を懸けての真剣勝負にこそ人生を見出す鬼だったのでは。
東明のクズっぷり、佳介に将棋をつづけろ、生ききれ、と言ってる口で佳介に俺を殺して埋めろと。良くまあそんなことが言えるもんです。露見しなければ良いってもんじゃない。自業自得な人生の落とし前は自分でつけなさい、他人を巻き込むな。
佳介の人生に少しでも光がさすラストであって欲しかった。
佳介を破滅に追いやる偶然が重なりすぎ。
そこに向けてお膳立てされたような不自然なストーリーはいかがなものか。
不自然と言おうか、強引と言おうか、臭いと言おうか、それが原作のストーリーで、映画もそれを使ってます。
でも、映画になったら文字ではなくスクリーンで見るせいか、ほぼ原作のままなのに、小説の時よりストーリーに惹き込まれてしまいましたけど。
鬼ころしはストローチューチューが定番ですねw
かなり都合が良かったし、もうちょい隠して欲しいというかサスペンスフルにして欲しいというか…という感じでした。
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